『八月の六日間:北村薫』は、大人な女性におすすめしたい1冊
今回は、ちょっと珍しい、山登りをテーマに据えた作品です。
5つの短編集からなる小説ですが、連作になっているので主人公は1人。
それぞれの物語の題名は、「九月の五日間」「二月の三日間」など、山登りに費やした日にちになっています。
著者は北村薫さん。
ミステリ作家としてよく知られる、ベテランの作家さんですね。
とても静かで、それでいて力強い。
そんな作品のご紹介です。
以下、amazon商品説明より一部引用
40歳目前、文芸誌の副編集長をしているわたし。仕事は充実しているが忙しさに心擦り減る事も多く、私生活も不調気味。そんな時に出逢った山の魅力にわたしの心は救われていき……。じんわりと心ほぐれる連作長編。
あらすじ:九月の五日間
第1話の、「九月の五日間」のあらすじを少しだけご紹介します。
三年前、わたしは、仕事とプライベートでの不調が続いていた。
「助けて」というサインが顔に出ていたのだろう。
同僚の「藤原ちゃん」が、声を掛けてくれた。
「明日、山、行きませんか」
とてもしんどかった初めての山歩きは、だけど、わたしの心を開いてくれた。
すっかり山に魅了されてしまったわたしは、連休が取れると、どの山に登るかを考えてしまう。
それから三年、9月の連休。
わたしは、山登り好き憧れの地、槍ヶ岳の一人歩きに挑む。
出会う人々との一期一会の交流。
山歩き特有のトラブル。
山小屋で飲むビール。
人間界とは別に、山が独自にはぐくむ絶景の数々。
今回の山歩きも、楽しい経験になりそうだ。
感想:目に浮かぶ山の情景
とても静かで、落ち着いた雰囲気の小説です。
大きく分けて、日常のシーンと、山歩きのシーンがあります。
主人公の「わたし」が、40歳前後の大人で落ち着いた女性ということもあるのか、
日常パートでは、変に騒ぐことはありませんし、山のシーンでは、山の壮大で静かな雰囲気が伝わってきます。
例外は、山の景色の描写。
ここが作者の筆力の見せどころ!!
と、言わんばかりに、美しい情景と激しい自然を文章にしています。
読むときはぜひ、頭の中で景色を妄想してみてください。
自分がその場に立っているかのように、臨場感をたっぷりと楽しめますよ。
読む前の話ですが、
私自身は、山歩きの経験に乏しく、ちょっとイメージしずらい部分があるのかな。
などと考えていました。
結果的に、経験の有る無しは関係なかったです。
というより、無いなら無いで、今から山登りを始めたくなってしまいました。
一緒に登ってくれる初心者の方や、こんな初心者にいろいろご指導してくれる優しい先輩を募集中です。(笑)
まとめ
山登りが好きな方、もしくは興味のある方。
キャリアを積んだ大人な女性。
上2つの条件に、どちらかでも当てはまるのであれば、読んでいただきたいです。
静かな場所で、もし可能なら音楽などもつけずに読むと、より没入できます。
忙しい日常を生きていると、だんだんと心が擦り減っていくのを感じることがありますよね。
そんなとき、主人公のわたしは、山に登ります。
山に心を開き、涙を流し、うまいビールを飲む。
きっと、「わたし」にとって山歩きは、ストレス発散以上の、もっと素敵なものなのでしょうね。
みなさんにも、大好きで、自分の心を開いてくれる素敵なナニカが見つかりますように。
最後に
最後まで読んでくださりありがとうございます。
今日のオススメ本、いかがでしたか?
こんな時に読む本をお勧めしてほしい。などあれば、コメント等でお知らせください。私、とても喜びます。
読んだ感想などお聞かせいただければ、これもまた、とてもうれしいです。
ぜひ私と、読書体験を共有しましょう。
目的別おすすめ度
泣ける本:★★★☆☆ 3
*泣ける本としては、このくらいの評価になってしまいますが、静かで、厳かな雰囲気という意味では、もっと好評価になります。
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