一人優雅な気分で朝食を食べていると、寝起きの妻が突然語りかけてきた。
お小遣い制のぼくには家計の内情はわからないが、そういえば今年は子供の進学だとかでお金がかかるというようなことを言っていた。
しかし、その言葉に妻が何を期待しているのか、ぼくには今ひとつ理解できなかった。
里帰り先は妻の実家で、海沿いの片田舎にある。
家が小さいために毎年近くの民宿を利用するのだが、目の前が海水浴場ということもあり昼はレジャーに夜は新鮮な魚介を堪能するという我が家にとっての一大イベントでもあった。
「そうか。そりゃお義父さんも寂しがるな。」
妻の真意もわからぬまま、当り障りのない言葉を返す。
「そうなのよ。一年に数回の、せっかくの孫に会える機会だからね。」
それに続く次の言葉を待ってみるが、妻からは一向に口を開こうとはしなかった。
妻はたまにこうして、自分自身に結論を持っていながらこちらがそこに辿り着くまで口を閉ざしてしまうことがある。
もちろん話は結論に辿り着くまで終わらない。
幾度なく同じ話題を切りだされては、ぼくは何をしていいかわからずお互いに苛立ちを募らせていくのだ。
今回は何を言って欲しいのだろう。
ぼくにどこかから借金をしてこいとでもいいたいのだろうか。それともぼくの大切なカメラコレクションを売りに出せということか。まさかへそくりの存在が?
黙々と朝食の残りを口に運びながら必死に脳を働かせて考える。
妻からそれ以上のヒントをもらえないまま、朝食の時間は過ぎていった。
予算が厳しいのなら中止しかない。
それなのに、妻はこどもたちを親に合わせたがっている。
当然ぼくが出せるお金もない。(コレクションを手放せば別だが)
歯を磨きながら更に考えた。
そうしてぼくはある一つの仮説にたどり着いた。
「まさか。これをぼくの口からいわせようというのか。」
ぼくは愕然とした。
妻よ。汚すぎる。少なくともそれはあなたの口から言うべきだ。
それをあえてぼくに言わせることで、自分の手を汚さないだなんてあまりにも卑怯だ。
果たしてぼくの辿り着いた結論を妻に告げると、つまは仕方なさそうにこういった。
「本当はみんなで一緒がいいんだけどね。パパがそういうなら仕方ないわ。」
今回は奇跡的に結論へと辿り着くことができたが、辿り着いた先に希望などというものがあるはずもなかった。
久しぶりのウミガメのスープ