“アジアの次世代”と評価22歳でTOJのコミッセールを務める山田里奈さん 将来はUCIチーフコミッセールへ
サイクルロードレースには選手の他にチームカーや関係車両、先導バイクなど、多くの車両や隊列を成している。これらレース全体の統括を行っているのが「コミッセール」と呼ばれる審判団で、スムーズに競技が行われるよう常に気を配っている。今回は22歳という若さで数々の国際レースのコミッセール経験を持ち、ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)でも活躍している山田里奈さんに業務の実態や、将来の目標を取材した。
知識と経験が必須
「まさか私がこの場にいることができるとは」と山田さんはTOJ美濃ステージのコミッセールの仕事を終え、一息つきながら話す。
「知人が実業団で自転車競技を行っていたことがきっかけ」という山田さんは、コミッセールの活動を始めて4年目。現在は日本自転車連盟(JCF)が定める2級審判資格を保有している。ここ2年ほどは海外のレースで経験を積み、コミッセールを務めたレースはツール・ド・ランカウイが2回、香港ワールドカップトラック、ジャラジャ・マレーシア、その他アジアツアーなど数多い。
山田さんはコミッセールの中でも「パネル」メンバーに入っている。パネルとはレースの決定権を持つ役職で、最終的なリザルトの確定作業を行うなど、責任と幅広い知識が求められる。山田さんはレース中、審判車の4号車(コミッセールカー4、通称コム4)に乗車し、チームカーの隊列中ほどで、各チームカーや関係車両に走るべき位置や指示を無線で行う。
「選手の動きを把握し、チームカーの動きを先読みすることが求められます」と経験が為す“勘”が必要とされることを山田さんは強調。また、選手の違反行為にも車から顔を覗かせ厳しく目を光らせていた。
「ぜひ若い人に入ってきてほしい」
コミッセールの先輩でもあり、国際自転車競技連合(UCI)チーフコミッセールの資格を持つ菊池津根徳さんは「彼女がコム4から顔を覗かせると、乱れていたチームカーの隊列が瞬時に揃う。海外のチームからも一目置かれ、信頼が厚く、尊敬されているからだ」と山田さんの仕事ぶりについて太鼓判を押す。「コミッセールは机上の勉強だけでは務まりません。彼女のように知識に加え豊富な経験があってこそ」と評価し、「アジアの次世代の人材です」と続けた。
また、TOJの栗村修大会ディレクターは「山田さんや菊池さんらの活躍で、一般的に表に出にくい部分のクオリティがとても上がっています。国際基準でレースを運営するうえでなくてはならない存在です」とTOJにおけるコミッセールの重要性について語った。
「ぜひ若い人にコミッセールの世界へ入ってきてほしい」と話す山田さん。今後は8月に行われるUCIエリートナショナルコミッセール試験に挑むという。また、2年間必要とされるトレーニングを積み、将来的にスイスのジュネーブにあるUCI本部で行われるUCIチーフコミッセール本試験に挑戦したいと意気込んだ。