様相がらり、議員奔走…1人区、与野党対決
いざ地元へ−−。国会が閉会した1日、夏の参院選が事実上スタートした。定数削減や合区によってがらりと様相が変わる選挙区を中心に、改選を迎え慌ただしく選挙区入りする現職参院議員らの表情を追った。
今回の最大の注目点の一つは全国32の1人区だ。全てで野党候補の一本化が実現し、与党候補との戦いの行方が参院選全体の行方を決めるとみられる。
全国の1人区で唯一、共産候補者に野党が一本化した香川選挙区。再選を目指す自民現職の磯崎仁彦(よしひこ)氏(58)は1日、参院本会議を前に「まさに与野党一騎打ちの選挙。政策で明確な対立点があり、我々の主張をしていけば(有権者の)選択は非常に明確だ」と語り、国会閉会後に慌ただしく地元入りした。
自民は相手の“共産色”を強調し、党香川県連の集会では党幹部が「革新勢力」と名指ししている。磯崎氏は「責任ある政治をできるのは与党か野党か」と訴えていく構えだ。
一方、共産新人の田辺健一氏(34)も1日夕、共産幹部や民進、社民県議とともに高松市内で街頭演説し、共闘をアピールした。田辺氏は選挙戦に向け、「大役を果たさなければならない。香川で政治が動いた、そういう戦いにしたい」と意気込んでいる。
4選を目指す青森選挙区の自民現職、山崎力(つとむ)氏(69)は国会閉会前日の5月31日、国会内で取材に「本当に厳しい選挙になる」と表情を引き締めた。
共産、社民が支援する民進新人の田名部匡代(たなぶ・まさよ)氏(46)は元民主党衆院議員で、父は農相を務めた匡省(まさみ)氏だ。青森市に次ぐ人口約23万人の八戸市が地盤で、親子とも自民の大島理森衆院議長と衆院選で争い、地元で「八戸戦争」と呼ばれる激戦を演じてきた。6年前の改選時、当時の野党票の合計は山崎氏を上回る。「野党は安倍政権を非難するだけで、理念も政策も違う」。山崎氏は「野合」批判のトーンを強め、切り崩しを図る考えだ。
1998年から自民と旧民主が議席を分け合ってきた長野選挙区は、定数削減で今回から1人区となった。
再選を目指す自民現職、若林健太氏(52)の相手は、民進新人で共産、社民も支援する兵庫県出身の杉尾秀哉(ひでや)氏(58)。引退する北沢俊美氏の後継で地元に縁のない「落下傘」だが、元TBSキャスターで知名度がある。
若林氏は1日、国会閉会後に慌ただしく地元の長野市へ戻り、観光団体の会合で経済政策への理解を求めた。戻る直前、国会内で取材に応じ、「政権与党として一人一人に政策を訴えていく」と語った。【深尾昭寛、宮城裕也、稲垣衆史】