2016.06.02 09:00
アメリカ西海岸サンフランシスコ、スタートアップとデザイン会社が多く集うソーマ地区にオフィスを構えるbtrax。彼らが2年間サンフランシスコで実施してきたデザインワークショップを体感できるセミナーにデザイナー深津貴之氏とマーケター彌野泰弘氏らが参加。btraxが行うワークショップからデザイナー、マーケターが何を学ぶのか?次世代型問題解決、ソリューションの導き方を探る。
サンフランシスコで実施してきたデザインワークショップを日本初開催するbtrax。開会の挨拶はbtrax社CEOブランドン氏から。
SENSORSでも度々追ってきた『デザイン思考』。デザイナーが課題解決する際のアプローチで製品やサービスの開発手法やプロセス、さらには戦略すら変えることが出来ると説くもので、変化が激しく様々なテクノロジーやサービスが勃興する時代に必要なアプローチとして世界中のビジネスマンが注目している。
デザイナー出身であり経営者であるbtraxブランドン氏はスタンフォード大学のd.schoolなどを参考にサンフランシスコのスタートアップが取り入れるデザイン思考アプローチを、日本企業の課題に沿った形で提供できるワークショップに変更し、既に数十社の日本企業が受講をし成果を上げているという。
通常であれば最低3日間はかかるワークショップのマインドセットだけでも日本のデザイナーおよびビジネスに携わる方々に伝えたいとのことで開催されたのが、今回紹介する「DESIGN for Innovation 2016」である。開会宣言でブランドン氏はスター・ウォーズのジェダイの【Do, or do not. There is no "try."】を引用し、これからフォースのごとくビジネスで成功する上で必要なのが「デザイン」であると主張した。
さて、『デザイン思考』がビジネス上で注目され始めたのはいつからだろうか?
IDEOのTIM BROWNが2008年発行のビジネス誌HARVARD BUSINESS REVIEWで記事を書いたのが発端であったと、ワークショップファシリテーターのbtraxマーク氏は述べる。
『デザイン思考』がビジネス界で注目されはじめたキッカケは
HARVARD BUSINESS REVIEW 2008年6月号のTIM BROWNの記事であるとbtraxマーク氏は述べる。
20世紀から現在へのシフト:「技術起点から社会価値起点へ」「機能的価値から意味的価値へ」
ワークショップのファシリテーターを務めたbtraxのマーク氏(右)と山田氏(左)。マーク氏はUI/UXデザインを中心にプロジェクトマネージャーとして多くの日本企業のデザイン思考ワークショップをリードする。
デザイン思考とは「デザイナーの感性と手法」をビジネスに応用することである。マーク氏がApple iPodの例など成功事例を紹介した後、『デザイン思考は実践が大事である』とIDEO Tim Brown氏の言葉を引用し講義からお待ちかねのワークショップタイムに突入した。
ワークショップは実際に自分たちの企業の課題に沿った形で進めるのが最適だが、今回は誰もが経験したことがある『プレゼントを贈る』ことをテーマに新しい体験を作り出すワークショップが90分間実施された。
ワークショップテーマ
「『プレゼントを贈る体験』をリデザインしてみよう」
二人一組でチームを作り、お互いを深く知るための自己紹介から始まり過去のプレゼントにまつわる体験まで短時間で聴き込む。そこから相手がプレゼントを贈る際に大切にしていることをストーリーボードとして書き出す。
全10ステップを踏んで「プレゼントを贈る体験」をリデザイン。90分の間にプロトタイプ作りやフィードバックの時間なども設けられる。BGMも心地よく、アイディアを出すのに相応しい環境でワークショップはテンポよく進んでいく。
「アイディアを出し切るために、ポストイットは思いっきり使って良い」とファシリテーターが盛り上げる度に「ポストイットのおかわり」チームが続出した。
初対面の相手との自己紹介から始まり、90分間のワークショップを終えた後では会場全体が同じ課題を解決する仲間のような一致団結した熱気に包まれた。筆者もいままでいくつかのワークショップに参加しているが、btraxならではのポジティブでフレンドリーなファシリテートがなせる技だと考える。
実際にワークショップに参加した深津貴之氏と彌野泰弘氏に感想を伺った。
深津氏はUI/UXデザイナーとして活躍し自身でデザイン思考ワークショップを行っているという視点で、彌野氏にはKDDI ∞ Labなどでスタートアップ向けの要件定義を行う事が多いメンターとしての立場から意見を伺った。
自身もデザイン思考ワークショップを行うTHE GUILD深津貴之氏
デザイン思考は非常に合理的なアプローチであると同時にチーム構成により成否が大きく左右されると彌野氏は言う
今回は通常3日間で行うコースのマインドセットを体験するための90分間デザイン思考ワークショップだったが、時間内に参加者のアイディアを出し切るためのファシリテーターの進め方はとても参考になった。
「ポストイットはおかわり自由!」「無駄話もとても大事。急がばまわれ。パッとアイディアが出る人よりも急がばまわれ、ワークショップのステップを踏んで徐々にアイディアを盛り上げていくのが大事である。」と言い切ってくれるファシリテーターの存在は非常に大きい。
デザイン思考ワークショップはこれからますます増えてくると思うが、経験を積んだチームのワークショップに参加することによりアイディアのジャンプは大きく変わりそうである。
SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/