山間部は高く、離島は低い 対策白書を閣議決定
山間部は自殺率が高く、離島は低い−−。政府が31日閣議決定した自殺対策白書で、こんな説が示された。山間部でも傾斜がきついほど自殺率が高まり、平野部より病院や自治体職員などの「社会的資源」が少ないことに加え、近所づきあいが少ないことが影響しているとみられる。離島も社会的資源は少ないものの、人間関係が濃密なため、問題を抱えたまま孤立しにくいと指摘した。
白書を作成した厚生労働省は、自治体に傾斜地がどの程度あるかを示す「傾斜度」を用いて分析した。すると傾斜度が高くなるにつれて、年齢構成の偏りを補正した自殺率も上昇し、傾斜度30度以上では自殺率は134.0(全国民平均が100)に達した。傾斜度が5度未満の平野部は104.4だった。傾斜度が高いと宅地が乏しく、隣人との接触も少ないとみられる。
一方、全国の自治体を自殺率の低い順に並べると、上位20自治体のうち10自治体が離島だった。多くの離島は過疎や高齢化が進み、山間部と同様に生活環境は厳しい。しかし、住民が密集して暮らし、都市部より住民の流動性が低く、「人とのつながりが自殺率の低さに寄与している可能性がある」とした。
離島の実地調査も実施し、白書は「住居は近接し、お裾分けなど古くからの地縁・血縁に基づくつながりがみられた。孤立化することがなく、(自殺に至る)問題が見えないままになることが少ない」と結論づけた。【熊谷豪】
自殺率の低い上位10自治体
自治体 自殺者数(人) 離島
新潟県粟島浦村 0 ○
東京都利島村 0 ○
沖縄県渡名喜村 3人以下 ○
鹿児島県十島村 5 ○
長崎県小値賀町 25 ○
奈良県黒滝村 12 ×
島根県海士町 31 ○
沖縄県与那国町 17 ○
北海道利尻町 31 ○
沖縄県座間味村 6 ○
※自殺者は1973〜2014年の累計