来年4月に予定通り消費税率を引き上げるかどうかが焦点になっているので、財政再建について振り返ってみます。
橋本内閣の「6つの改革」の一つが財政構造改革で、その5原則は*1
財政構造改革の当面の目標は、2003年とする。
などで構成されていました。これが大失敗に終わったのは誰もが知るところです。
1990年代後半と同様、1970年代末にも財政再建が重要課題とされていました。どちらも経済成長率急低下→国債残高急増を受けたものです。
財政面の逆噴射にもかかわらず、1980年代に景気が失速しなかったのは、前半は輸出、後半は民間投資が大きく伸びたためです。
レーガノミクスのアメリカがドル高で輸入を急増させたことが、日本の輸出にプラスに働きました。
ドル高は1985年9月のプラザ合意で修正され、急激な円高に転じましたが、日本銀行が公定歩合を2.5%に引き下げる低金利政策で応じたため、企業設備や住宅投資が刺激され、バブル経済に突入しました。しかし、1990年代に入るとバブルは崩壊し、国債残高も急増します。
2000年代は「構造改革」で公共投資が半減されたものの、大幅な円安と海外経済のバブル的成長のために輸出が急増しました。特に中国経済の爆発的成長が、直接・間接的に大きく寄与しています。
しかし、輸出主導の景気拡大は2008年9月のリーマンショックで強制終了となり、国債残高は急増に転じます。
2012年12月に発足した安倍内閣はアベノミクスを掲げ、日銀も2013年4月から異次元の金融緩和に踏み切りましたが、2012→2015年度の3年間で実質GDPは+1.8%、実質民間需要は+0.9%に過ぎません。企業収益の改善が賃上げを通じて家計に波及し、内需を拡大させる経済の好循環メカニズムが、新自由主義的な「構造改革」によって破壊されてしまったことが大きいと考えられます。
このように振り返ってみると、1970年代後半から続く財政再建と消費税の連続的引き上げは、経済活動の核の家計消費を抑圧するとともに、経済を外需と金融緩和(→バブル)依存に変質させることで、次の国債残高急増の準備をしていたようにも見えます。財政再建のために経済構造を脆弱化させては本末転倒なのですが。*3
リフレ派の「日銀が国債を大量に買い入れれば“期待”の効果で民間需要が増加する」を疑ったほうがよいように、財政再建についても根本的なところから疑ったほうがよさそうです。
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