MSが進めるインテリジェントなクラウドプラットフォームが狙うもの

阿久津良和 2016年05月18日 16時05分

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 「(クラウドビジネスの踊り場感を)感じない。2016年第3四半期(1~3月)もMicrosoft Azureは120%も成長している」

 日本マイクロソフトは5月17日、同社のクラウドサービスがユーザー企業のビジネス支援を説明するため、自社のビジョンと最新の国内事例を紹介するプレスラウンドテーブルを開催。米本社でクラウドとエンタープライズ事業のマーケティングを担うコーポレートバイスプレジデント(CVP)の沼本健氏は、こう語ってAzureの拡充に自信を見せていた。

 デジタル技術がわれわれの生活基盤を変える「デジタル革新(デジタルトランスフォーメーション)」は、皆が身のまわりで人々の体験を再定義し、生活や仕事、娯楽、人間関係の在り方に変革をもたらすという。その骨子となるデジタル技術は金融でのFinTechやコネクテッドカー(自動車)、モノのインターネット(IoT)と枚挙に暇がないが、その中核をなすのがクラウドサービスである。

 Microsoftは3つの野心として、「プロダクティビティとビジネスプロセスの改革」「インテリジェントなクラウドプラットフォームの構築」「パーソナルコンピューティング」の3つを掲げてきた。この3本柱の1本を担うのが沼本氏だ。

Microsoft クラウドエンタープライズマーケティング担当コーポレートバイスプレジデント 沼本健氏
Microsoft クラウドエンタープライズマーケティング担当コーポレートバイスプレジデント 沼本健氏

 沼本氏はデジタル革新について一般的な定義と前置きしながら、「顧客と自社のビジネスの架け橋を上手に築いて、ビジネスにつなげていくかが課題」と説明した。一般的にビジネス革新は、顧客エンゲージメントと最適化が重要視される。

 オムニチャネル化した現状下で、消費者が商品やサービスを購入する前にリーチする方法とデジタル技術を使ったオペレーション最適化の両者を掛け合わせると、「ビジネスや製品の定義が変革する」(沼本氏)。この課程で企業がクラウドを活用し、デジタル革新を進めるアプローチとして3つのパターンを取り上げた。

 1つめはビジネスに直結するSaaSの導入。2つめは自社のITインフラの中でクラウドを活用し、ワークフローをクラウド化していく。この両者が基本的なパターンに留まるものの、実際は成熟度が高まるにつれ機械学習やデータ分析といったアドバンスドワークロードに至るとしている。

 この流れがユーザー企業の利益につながるというMicrosoftの姿勢を説明。その上で「クラウドベンダーは企業が必要する3つのニーズを満たさなければならない」と自社のAzureを強調した。

 Microsoftはクラウド基盤としてAzureのほかに「Microsoft Azure Stack」「Operations Management Suite」を用意し、アドバンスドワークロードには、リアルタイムにデータ分析する「Azure Stream Analytics」、IoTの仕組みを手軽に実現する「Azure IoT」など多岐にわたる。さらに「Office 365」や「Power BI」といったサービスを網羅している。

 売れ行きが好調という「Microsoft Enterprise Mobility Suite」には、Adallom買収で取得した技術を活用したSaaSセキュリティの「Microsoft Cloud App Security」も加わる。Microsoftはクラウドビジネスにおける対応性の幅広さを「三位一体。Microsoftが持つトータルベンダーとして立ち位置」と自信を見せた。

 Microsoftは三位一体のインテリジェントなクラウドプラットフォーム構築に強い手応えを感じている。すでにFortune 500企業の85%がAzureを利用しているが、「約7割の企業が複数のサービスを使っている。深い意味でユーザーが(Azureを)使いこなしている」(沼本氏)点が興味深いと説明した。Azureの利用状況も今回改めてアップデートされたので、以下に箇条書きで紹介する。

  • 新規Azure顧客の月間サブスクリプション数は12万件
  • Azure上のSQLデータベース数は1600万件
  • Azure IoTで処理するイベントメッセージ数は1週間あたり2兆件
  • Azure Active Directoryのユーザー数は6億人
  • Visual Studio Team Servicesに登録している開発者数は400万人
  • スタートアップや独立系ソフトウェアベンダー(ISV)からの売り上げは40%を占める

 急成長するAzureだが、その理由として自社がWindows NTの時代から長年にわたり、エンタープライズ企業として顧客ニーズに対応してきたことを理由に挙げた。ISVやスタートアップ企業も大事だが、エンタープライズ企業同士の関係性や相互理解によって、自社のインテリジェンスクラウドを選択してもらっているという。

 法令遵守や認証といった長年積み重ねてきた結果もさることながら、提供するクラウド基盤は自社でも同時に運用しているため、ビジネスの連続性にも良い影響を与えると沼本氏は述べた。

 他方で先頃買収を終え、無償提供を開始した「Xamarin for Visual Studio」についても言及した。Visual Studio Enterprise、Visual Studio Professional、無償提供されたVisual Studio Community Editionで使用できるクロスプラットフォームだが、Microsoftにとっては「モバイルファースト」開発を実現する重要な存在となる。

 企業の中にはiOS版とAndroid版アプリに対して同じ機能を常に担保し続けるのが難しく、「頭を抱えている」(沼本氏)という。Xamarinはコードベースを共通化しつつ、デバイスの機能を確実に使えるため、開発工数を大幅に削減できる。また、iOS/Android版アプリの実機検証を大幅に軽減できるという「Xamarin Test Cloud」もあわせてアピールした。

 すでに三井住友銀行はXamarinを活用してiOS/Windows両対応アプリを開発。渉外担当や提携不動産店舗のタブレットで住宅ローン事前審査の申し込みを最適化することで、従来は数日を要した回答を15分に短縮したという。

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