2007年を境にアメリカの西海岸を中心に音楽Webサービスが大量に現れたことで、英語圏(=Webサイトの対応言語圏)外に情報を発信しなくなったアーティストが急増。
この連載では、そんなアーティストやレーベルたちがつくり上げた、日本語圏には知られていない怪しげな「ムーンサイド」の音楽シーンを紹介して参りました。
これまでの連載を振り返ってみよう
これまで、沢山の音楽シーンや音楽サービスを紹介してきましたが、まず最初に振り返るべき重要音楽サービスといえば音楽ストリーミングサービス「thesixtyone」でしょう。全く日本にはなじみのない音楽投稿サイトではありましたが、現在の海外音楽シーンの重要な基礎を築いたサウンドがてんこもり。中には、今ではシーンの重鎮となったアーティストも多数おりました。
後のシンセポップ復古と、インディーゲームBGMとの間を取った、まさに当時のお手本のようなサウンドですね。
これらの流れにメジャーアーティストも影響をされ始めるほか、クラブミュージックのアーティストなども合流して「チルウェイブ」に代表される新たなジャンルも誕生するなど、音楽シーン全体に大きな影響を与えました。これぞ2010年代の「インディー」なサウンドの原型です。ちょうどドリームポップが再燃したころのことで、このような音楽を指す言葉は複数ありましたが、後に「シンセポップ」という懐かしい呼び名に落ち着きました。
この映像表現は、最近まさにインディゲームの世界でよく見るやつじゃないか!
そして、「ムーンサイド」なアーティストの巣窟となった楽曲販売サービス「Bandcamp」が登場します。このサービス上で、インディーゲームのサウンドトラックの音楽シーンと、「シンセウェイブ」と呼ばれる“本連載を通じて最も奇妙な”音楽シーンが、それぞれ花開きます。チルウェイブ・・・なんですが、このジャンルも最近はひとくくりに「シンセポップ」とだけ呼ばれている気がします。こと英語圏では。
インディーゲームのサウンドトラック。ゲーム音楽の世界も、ついに“新時代を追う”のではなく、“新時代をつくる”サウンドが多数現れるようになりました。
さて、ここまでが前回のあらすじでした。そして、ついに登場した「ムーンサイド」の深遠ジャンル、シンセウェイブ。この音楽ジャンルを初めて知った時は、誰もが「ファッ!?」となることウケアイです。
「thesixtyone」と「Bandcamp」がそれぞれ“明らかに”新しい音楽シーンを生み出している様子を感じ取っていただけたかと思います。
が・・・特にシンセウェイブ、お前は一体なんなんだ!!
目を見開いて知るがよい、シンセウェイブのその先を
問題のシンセウェイブ。まずはあらためて数曲をPVで聴きなおしてみましょう。お時間のない方は4:30からご覧ください。脳の裏の方が化学薬品によってケロイド状に溶かされる気分を味わえます。
シンセウェイブで宇宙を表現させたら、Dynatronの右に出るアーティストはいません。ドラムとギターそれぞれの入り方が本当に格好よすぎて、格好よすぎて。
これだけ新しい(古くない! 新しい!!)表現の音楽ジャンルが産まれたわけですから、当然ここに才能が集まって発展の道に進まないはずがありません。事実、シンセウェイブはすぐさま様々な音楽ジャンルや映像、イラストレーションなどに影響を与え、更に新たな音楽ジャンルも生み出しました。日本人・・・だと!!??
まずは“シンセウェイブ自身”がこの後どんなサウンドに進化していったのか、ご紹介しましょう。
なおKristineは、シンセウェイブシーンの2大ボーカリストの一人で、最近のシンセウェイブはボーカル曲が格段に増えたことも特徴です。(そういえば日本の同人音楽も、初期はインスト中心だったのが、発展とともにボーカル曲が増えていったんですよね)
なお、Dana Jean Phoenixもまた、シンセウェイブシーンの2大ボーカリストの一人。スネアの音がスゴい! そしてこれは、すでにただのレトロサウンドではない、全く新しいサウンドの世界に入門している!
まさにこの連載で紹介してきた音楽シーンの流れを、たった1曲に凝縮しています。アルバム『Wilderness』は、惜しむらくはシンセウェイブ界隈でしか知られていないことですが、発表直後はその音楽性の高さに、シーンをザワつかせた問題作でした。これぞインディー!! しかしてまた、これぞシンセウェイブ!!
シンセウェイブが音楽ジャンルをまたいで進化をしている様子が伝わりましたでしょうか。ミックスでこそ、多くの楽曲が80年代を意識してはいますが、もはやサウンド面では「単なる80年代の音楽のパロディ」や「最近のダンスミュージックとの融合」に終始しない、全く独自の地点に到達しています。
そして新たな音楽ジャンルの誕生へ
ムーンサイドなシンセウェイブシーンが立ち上がっていく中で、前述のLazerhawkなどのPVにみられるような「ガイコクジンによる間違った日本のアニメの解釈」ブームに強烈な影響を受けつつ、ひっそりと立ち上がったもう一つの音楽ジャンルがありました。きもちわる~~~~い
その名もズバリ「べイパーウェイブ」。このVaporとはモヤのことで、とにかくモヤ~~ッとした音楽が特徴。シンセウェイブのサブジャンルながら、日本ではなぜかシンセウェイブよりもずっと有名(本当になぜだろう・・・)な、成長途中の新興ジャンルです。
実はエレクトロニカのアーティストであるOneohtrix Point Neverがつくった「Chuck Person's Eccojams Vol. 1」というアルバムがサウンドの原点になっているのですが、やはりシンセウェイブの影響を受けて発展したからには・・・もちろんここから先は、全くもってろくでもない進化を遂げることになります。
はい、来ました。おまわりさん、こいつが元凶です。
「SAILORWAVE」って何ですか。あなた、どこから脱走してきた方ですか。しかも彼は時々「私は日本人アーティストです」だとか言うんですが、ここははっきりさせておくべき所ですよね、こんな妙な日本人はいません。
しっかしクッッッソお洒落なサウンドですね。 ところどころに山下達郎がサンプリングされていますね。 いやあ、音楽って本当に素晴らしいですね。(この手のサウンドは、最近はヴェイパーウェイヴの中でも特に「フューチャーファンク」という呼び名で言われています)
一時は消えかかっていたヴェイパーウェイヴ界隈でしたが、彼の登場(と、「Artzie Music」というYouTubeアカウント)によって見事にシーンは盛り返します。
結果として、PVは全て古今の萌えアニメループ動画に毒され、音楽性はクッソおしゃれになり、日本の歌が激しくサンプリングされるようになったのでした。めでたしめでたし。
最近のマクロスMACROSS 82-99はホントスゴい曲をつくるアーティストになりました。最新アルバムの「Jutsu EP」は現時点で無料でも頒布中なので、是非ともダウンロードを!
この文字列は決して誤植ではありません。
ちなみに初期のヴェイパーウェイヴは、別名「シーパンク」などと呼ばれていた(厳密には微妙に別のジャンル)のですが、日本のスペースシャワーTVがある種の誤まった解釈を加えた結果すばらしい方向に化学反応し、とてつもなく独創的かつミュータントな奇跡の映像を生み出しました。コンシャスTHOUGHTSも、SAILORWAVE以後のこの界隈ではトップアーティスト。サンプリング元は『きまぐれオレンジロード』のエンディングテーマ「dance in the memories」。なのにPVがあえて『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイなのがまた、頭がどうかしていて素晴らしい。
大変ムーンサイドな進化なのでぜひご覧いただきたい。
どこまでこの界隈はカオスなんだ。
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