「城福監督は、もしかするとラニエリになれるかもしれないのに」ACLベスト16第1レグ FC東京-上海上港
アジア・チャンピオンズリーグのベスト16、FC東京の対戦相手は、グループリーグでガンバ相手に連勝してグループ1位で突破してきた強敵上海上港。
当然ながら東京の苦戦が予想されたが、試合の前半は互角以上の内容を見せた。ACLのビンズオン戦からそれまで干していた高橋秀人をボランチに起用し、ようやく「アクションサッカー」というドリーマーから脱出しつつある東京は、この試合では高橋をアンカーにした4-1-4-1のフォーメーションで、2列目に配置した4人の面子は、東、米本、羽生、水沼という、オシムが見たらよだれを流しそうな走力自慢のメンバーを揃えて来た。
以前の東京であれば、人に食いつく米本やハデソン、守備の軽い梶山のダブルボランチで、DFも中盤と連動しないので彼らが動いたスペースがバイタルにポッカリ出来てしまい、そこからサイドやDFライン裏へとバスバスボールを通されていたのだが、高橋がアンカーとしてどっかりと構えることでバイタルを使われる事が無くなり、2列目の猟犬メンバーが好きなだけボールを追い回せるようになって、相手のボールの出しどころにプレッシャーをかける事でロングボールを蹴らせ、それをDF陣がきっちり跳ね返すリズムが出来ていた。
それでも東京はペースを握りながらも決定力に欠けてなかなか得点が出来なかったのだが、42分に相手が明らかにPA内でキックを手で防いでファールをするも、判定は何故か外と判定されてFK。しかし水沼が蹴ったグラウンダーのFKが、壁に入った高橋の足に当たってコースが変わりゴールイン、東京が先制点を決めて前半を折り返す。
後半は上海のエリクソン監督もさすがに修正して来て、球際の圧力を強めて東京のラインを押し下げ、高橋の両側に出来るスペースを使って橋本拳人が上がった裏のスペースを使うなど、狙いをしっかり絞って攻撃して来た。そして10分に、高橋がDFラインに吸収されたために出来たバイタルを使われ、森重がマークで飛び出すものの、中盤の選手が呂文君のマークを外してしまい、シュートはGK秋元が弾くものの、こぼれ球を武磊に決められ同点に。やはりこの点はゾーン・ディフェンスがきちんと指導されていない弱点が出てしまった。
しかし東京はすぐさま反発力を見せ、失点から10分後にショートカウンターから左サイドへ展開し、徳永がファーサイドへクロスを送ると、そこに飛び込んだ水沼がダイレクトボレー、コースはGKの正面だったが反応が間に合わず2点目が決まる。この場面、右SHに入った阿部が中へ入り込むことで徳永のスペースを開け、相手のDFを引き付けてファーの選手をフリーにさせる連動が非常に良かった。
そしてこの試合では何故か城福監督の采配が冴える。DFラインと中盤の間が間延びしてさらに守備が厳しくなって来たタイミングで田邊を投入、阿部を前線に上げてフォーメーションを4-4-2に変更。これで2ラインの間をコンパクトにすると同時に、2トップでDFラインにプレスをかけて上海の前線へのパス供給を遮断、その後の時間を乗り切ってアウェイゴールは与えたものの2-1でリードして第1レグを折り返した。
バイタルを守って攻撃を組み立てるアンカーと、ボールを追い回して攻撃にも絡む猟犬のボランチコンビ、前線と2列目にワーカーを並べ、カウンターからインサイドを多用しての攻撃は、実はレスター・シティとほぼ同じ構成だったりする。それはポゼッションからワイドに展開してゴール前に人数をかける”アクションサッカー”とは正反対の思想であり、同じ監督が率いているとは思えない変貌ぶりで、城福監督とFC東京の中で何が起こったのか興味深い(笑)。
高橋の上位互換になれるかもしれない橋本拳人がSBとか、選手起用にまだ?なところはあったりするが、メンバー的にどう考えてもこの方向性が合っていると思うので、たとえ第2レグで敗退してしまっても妙な”革命的思想”は捨てたままにしてもらって、同じ路線を進んでもらいたいところである。
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2016/05/18 | アジア・チャンピオンズリーグ
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