歯舞群島訪問、露側「書類不備」で拒否
【モスクワ真野森作】16日に北海道根室市を出港した北方領土の元島民らによる今年度第1陣の歯舞群島・水晶島への自由訪問で、訪問団が必要書類にロシア側の呼び方で島名を記載しなかったことを理由に露当局が入域拒否していたことが17日、分かった。サハリン州にある露外務省代表部からの情報としてタス通信が報じた。
「四島はロシア領」との主張を強調する動きとみられ、今後の自由訪問や墓参でも同様のトラブルが続くおそれがある。
ロシア側は色丹島と歯舞群島を合わせて「小クリル列島」と呼び、歯舞の各島には日本名と全く異なるロシア名を付けている。水晶島は「タンフィーリエフ島」と呼ばれる。
報道によると、露当局は今回の入域手続きで挿入紙という書類にこの露側の島名で記載するよう迫り、訪問団が拒否したため「ロシアの法律に適合しない」と入域を拒んだ。
今月の日露首脳会談で、安倍晋三首相は北方領土について、プーチン大統領に「静かな交渉環境を維持するため、互いに相手の国民感情を傷つけるような行動や発言を控えるべきだ」と指摘していた。
露側の報道否定
外務省ロシア課は自由訪問の中止について「天候不良で入域できなかったと聞いている。露当局が拒否したという事実はないと認識している」とロシア側の報道を否定した。
同省によると、4月15日の日露外相会談で、自由訪問など北方四島の交流事業について、人道的な見地から円滑な実施が重要であることを確認している。【野原寛史】