Amazonオンデマンド本のコンビニ売りは第二次電子書籍出版ブームを起こすかもしれない

「インスタグラム・マーケティング入門」の事例にみる売れる電子書籍の作り方

Amazon.co.jpの売れ筋電子書籍が、全国のコンビニエンスストア(ローソン)の店頭に並ぶことになった。

実は私がプロデュースした「ビジュアルマーケ三姉妹」というユニットの”長女”が書いた「インスタグラム・マーケティング入門(著者:山田智恵/企画監修:江藤美帆/発売元:金風舎)」がこのテスト販売の対象に選ばれており、数ヶ月前に北関東のローソンに配本されたという知らせを聞いていた。

初めてこの話を聞いたときは、ただただ驚いた。

書籍のコンビニ売りというのは、紙の本であってもかなりハードルが高いのだ。それが、一人の素人女性が書いた電子書籍が選ばれるなんて。

実際に店頭に並んでいるこの写真を見るまでは、にわかに信じられなかった。

出典:kinpusha.com

ボーンデジタルの逆襲

インスタグラム・マーケティング入門は、紙の書籍が存在しない「ボーンデジタル」である。なぜ紙の本で出さなかったか。それは単純にどこの出版社も相手にしてくれなかったからだ。

本が売れないこのご時世、なかなかこうした数字が読みづらいタイトルを二つ返事で出そうという出版社はない。

だったら電子書籍でもいいから形にできないだろうかと思い、相談しに行ったのが株式会社デジカル(金風舎)の香月社長だった。知る人ぞ知る、ボーンデジタル出版業界のトップランナーである。

結果としてこの金風舎から出した電子書籍は、非常に良く売れた。電子書籍だけでなくPOD(プリントオンデマンド)にも展開して、冒頭で紹介したようにコンビニの店頭に並ぶまでになった。

なぜこんなにも売れたのか?ひとえにこの本が「電子書籍のプロ」が作った本だからにほかならない。

電子書籍にもプロの手は必要

電子書籍というと手軽に自作できるイメージがあるかもしれないが、今回の件で確信した。本気でたくさんの人に読まれたいのであれば、プロの手を借りるべきだ。プロが作ったものは、同じコンテンツでもぜんぜん見え方が違うし、デジタルであっても「質感」が違う。

とくに差が現れるのは「表紙」だろう。正直なところ、今回の本が売れたりコンビニ選書に選ばれたりしたのは、表紙の威力が大きかったと思う。

「人は見た目が9割」というが「電子書籍も見た目が9割」だ。

ちなみにインスタ本の表紙をデザインしたのは「もしドラ」や「ビリギャル」の表紙の装丁を担当した萩原弦一郎さん。こちらも知る人ぞ知る一流ブックデザイナーだ(余談だが萩原さんのブックデザイナーデビューは私の著作で、この本はシリーズ3冊合計で22万部売れた)。

今回出した3冊の表紙はこんな感じだ。どれも言われなければ「ボーンデジタル」だとはわからないのではないだろうか。

ボーンデジタルの制作には独自のノウハウがある

とはいえ、2016年春現在、電子書籍はまだまだ一般的な紙の本ほどは売れない。このため、紙の書籍ほどの制作費はかけられないという現実がある。

デジカル(金風舎)ではこのコストを削減するために、従来の紙の書籍とは大きく異る編集スタイルをとっている。詳しくは企業秘密だと思うので割愛するが、今回初めてこの方式で編集をお願いして「なるほどなぁ、紙の出版にはムダが多いんだな」と思った。

ボーンデジタル出版にはこのような独自のノウハウが必要なので、プロにお願いするとしたら、一般的な編集プロダクションや紙の書籍を電子化する制作会社ではなく、ボーンデジタル専門(または取り扱い案件数の多い)出版社や編集プロダクションを選ぶべきではないかと思う。

結論

…で、このエントリーの結論はなにかというと、「売れる電子書籍を出したかったら制作は信頼のおけるプロに丸投げしましょう」という身も蓋もない話だ。

まあ、事実だからしょうがない。どう考えても今回出したシリーズが売れているのはデジカルさんのおかげだ。

そして今日、冒頭のAmazonオンデマンド本のコンビニ売りが全国展開したというニュースを見て、これはデジカルさん忙しくなるかもなぁ…と思った。

上場企業なら株買ってるんだけどな(笑)。