Special Interview Vol.1
BiSH・BiSの仕掛け人渡辺 淳之介
“良いという確信”まで持たせないといけないと思っています。
渡辺 淳之介 プロフィール
1984年生まれ。東京都出身。音楽プロデューサー、実業家。過激なプロモーションと、松隈ケンタによる高い音楽性でカリスマ的な人気を誇ったアイドルグループ・BiSの仕掛人として知られる。2014年7月の横浜アリーナでのライブをもってBiSが解散した後、つばさレコーズから独立し株式会社WACKを設立。2015年、新たなアイドルグループとしてBiSHを始動した。
ウェブ原体験はエロだった
―音楽に限らず、今プロモーションと言えばインターネットと切り離すことはできません。渡辺さんにとって「インターネットってこういうもんだ」というのはありますか?
ネットイコール、エロですね、僕にとって。20年くらい前に、自分でウェブサイトを作れる人がちょっとずつ増えたとき、ネットアイドルみたいなのが流行ったんです。そういう人たちの中には、サイトに鍵をつけてちょっとエッチな写真を見られるようにする人もいた。そこから僕はウェブの大海原に航海に出て、ずっと戻ってこれてないですね(笑)。
僕の中でウェブは何か情報を得るというよりは、エロだけを追い求めるものでした。大学入ってからくらいじゃないですか?ウィキペディアとかちゃんと見るようになったのは。
―渡辺さんがBiSで仕掛けたアイドルらしからぬプロモーションもエロいですよね。
確かに、今までやってきたプロモーションで、すごく引っかかりがいいと思ったのはエロに関するものでしたね。それがビジネスも結びつくかはまた別なんですけど。
―渡辺さんが面白いと思うことがたまたまネットと親和性が高かったのか、ネットでバズらせるためにエロを選んだのか、どっちなんでしょう?
実はたまたまなんですよね。BiSというアイドルをやっていたときに一番最初にバズったのが、厳密には全裸ではないんだけど野外で全裸みたいな格好で撮ったMVでした。それがものすごいバズり方をして。エロ系のまとめサイトに載った瞬間に、ものすごくアクセス数がハネたんですよ。
それはまったく戦略ではなかったんだけど、あれでBiSを知る人が増えて、「見たことある子たち」という状況になったんです。そこからですね。
ただ、その後、じゃあグロいのはどうなんだろうとかいろいろ試してみたんですけど、思ったほどでもなかった。やっぱり最終的にはエロだったな、という結論には今のところなってます。
やり過ぎて困ったことも
―今は「もう一度新たなBiSを」と言って始めたBiSHをプロデュースされています。BiSとBiSHでプロモーションの方向や方法は変えているんですか?
変えてます。BiSでは、前述の全裸PVを筆頭に、のどちんこのアップばっかり撮ったり、スク水ライブやったりとやり過ぎちゃったので、なんというか、嫌われやすかった。あいつら下品じゃん、とかあいつら嫌い、売れりゃ何やってもいいってもんじゃないんだよということをすごく言いやすい状況だったんです。
ただ、それだとどうしても活動する上でのいろいろな制約が生まれてしまう。日本武道館でライブしたかったのに使わせてもらえなかったなんてその最たるものです。
だから、BiSHに関してはその下品さを極力なくしていこうとしています。あ、でもメンバーにうんこみたいなものをかけるMVは作っちゃいました(笑)。
僕がどうしても下品なんであれなんですけど(笑)、なるべく敵を作らないようにやっています。それこそ女の子のファンも入ってきやすいように。実際、現場を見てもファン層はBiSよりも広いと思います。
BiS時代から一緒にやってきたチームの人たちなんかは、ちょっと物足りなさを感じているかもしれないですね。もっとエクストリームにやったらいいのに、なんてことは言われたりするんですけど、今はそこよりはもっとわかりやすいものを作りたいという気持ちのほうが大きい。
一昨年独立したんですけど、独立する前は何も考えてなかったですね。会社勤めという強みもあるし、後先考えずに思いついたことは即実行していました。
本当なら今のほうが絶対いろいろできるはずなんですけど、当時のほうがエクストリームなことをやりたい欲が強かったのかもしれないですね。
購買意欲は良いと確信したときのほうが促進される
―メジャーレーベルの多くがMVをフルコーラスで公開することすらしていない状況で、BiSHは楽曲発売前に1曲まるまる無料配信したり、最終的にアルバム全曲が無料ダウンロードできてしまったりというプロモーションをしています。そこに対する躊躇というか、CDが売れなくなるんじゃないかといった危惧はありませんでしたか?
まったくないですね。売上が伸びたっていう実感しかないです。これって、『おしん』の世界なんですよ。貧しかったおしんが大人になって商売をやるんですけど、魚屋を始めたときに全然売れなかった。でも魚なんで腐りますよね。だからおしんは全部配っちゃうんです。腐らせるくらいならあげるって。そこから商売が始まるんですよ。ああ、そうだ。だからやっぱり僕のベースは『おしん』かな。“インターネット”じゃねえな(笑)。
最近の飲食店でも、最初にタダで商品を配ったりしますよね。1回試さないと、お客さんは買ってくれない。だから、とりあえずまずはタダで聴いてもらって、いいと思った人たちにお金を使ってもらおうと思っています。
昔はそれこそ“ジャケ買い”があって、とりあえず買ってみて、買ってみてから失敗するみたいなことがあった。今、それはほとんどない気がするんです。今のお客さんの動向的に、良いと確信しないと買ってくれない。
購買意欲は、良いと確信したときのほうが促進されるんです。逆に、良いと確信さえしてくれたら結構お金を使ってくれる気がしてるので、そこが先だなという感じですね。“興味をもってもらう”の先、“良いという確信”まで持たせないといけないと思っています。
無料ダウンロードと言えば、通常は配信専用サーバを借りて配信してるんですけど、1回だけ準備が間に合わなくて、オンラインストレージの「ギガファイル」を使って無料配信したことがあるんですよ。周りには「絶対『ギガファイル』側のサーバがもたないからやめとけ」って言われたんですけど、1万ダウンロードくらいに達しても余裕で。「ギガファイル」超サーバ強えなって思いました。でも、新曲を「ギガファイル」で配るってありえねー、すげーなって結構みんな衝撃を受けてましたね。「友達かよ」って(笑)。
●BiSHメジャーデビューシングル「DEADMAN」5月4日発売!
● 6月4日より全国ツアー開始!神奈川・Yokohama Bay Hallを皮切りに24公演を実施、ツアーファイナルは10月8日東京・日比谷野外大音楽堂
● 渡辺淳之介自伝『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(河出書房新社)発売中
(取材・文/大木信景@HEW(リンク:http://hewinc.co.jp/))