農家さんが耕作放棄地でも簡単に畑を貸したがらないのにはちゃんと理由がある
2014/05/14
いろんなところで話し聞くんですよ、
「農業始めたいけど農地がなかなか借りられない」
っていう話し。
その半面で
「農業者の高齢化に伴って耕作放棄地が全国の中山間地域で年々増加している」
っていう話しもよく聞きます。
どちらの話しも10年以上前から言われていることなんですが、このギャップが見事に埋まらない。
2つの意見をまとめると、「耕作放棄地を新規就農者に使わせてあげれば解決するじゃん?」ってことになりそうですよね。
でも実際はそれがうまくいかない。なんでか…。
もちろん農地法だのなんだのと堅苦しい問題もあるっちゃあるんですけど、ぼくが直面している実際はそんなことばかりでもない。
実際問題、地域でやる気のある農家さんのところには「うちの畑を使ってくれ、管理してくれ」っていう話しは引く手あまたに飛び込んできてます。
耕作放棄地の管理者は農地を貸したいけど、◯◯には貸したくない
貸したいけど貸したくない。
貸したい理由はものすごく簡単。
- 賃料が入る
- 畑を使ってもらうことで、管理をしなくてもすむ。
メリットありますよね、ちゃんとぼくが地主で空いてる農地があったら喜んで貸してあげたい。
ただ…、よく聞くのが「どこの馬の骨かもわからんやつに農地は貸さん」という話し。
ようするに信用が無い人に貸したくないわけです。
でもそれじゃ「ただよそ者を受け入れたくないという偏屈な人」になってしまうんですが、そうじゃなくてやっぱり貸したくない理由はそれなりにちゃんとあるんです。
いろいろ話しを聞いてると、貸したくないという気持ちも分からなくもない。
農地って不動産なので簡単に動かしたりできません、あたりまえですね。
ABCDとあるのは、農地だと思ってください。
農業をする上で「水」というのは必須で、みずが無いと作物が育たないと言っても過言ではありません。
じゃあその水はどこから持ってくるのかといえば、川や溜池などの水源から引っ張ってきます。(個人で井戸を掘ったりするケースもありますが、今回は話しを分かりやすくするために簡潔にお話します。)
つまり単純に不動産であるけれども、住宅用地と違って共用性が非常に高いんです。
農地の貸し借りに話しを戻します。
例えば耕作放棄地となっていた農地Aを、新しく農業を始めたいという太郎さんが使い始めたとします。
BCDの農地では地元の人達がキャベツを作っているところに、太郎さんはAの農地でとうもろこしを作り始めました、周りの人に相談もせずに…。
するとどういうことが起こるかというと…
水の問題
先ほども少し話しをしましたが、水というのは作物を育てるのに非常に重要なものです。でも水というのは自然の恵みなので、農家さんそれぞれに独自の水源が確保されているケースは少ないです。
太郎さんが「ちょっと畑が乾燥気味だから多めに川から水を引こう」と思い、自分のところだけに重点的に水を引いていたら、BCDの農地には全く水がいかなくなる可能性があります。まぁそれくらいだったら、せき止めていたものをまた元通りにすれば解決することなので、そこまで大事にはなりません。
水を通してもっと怖い問題は、例えばAの畑に病原菌などが繁殖していたことに気づかずに、水を通じて他の畑までも感染してしまうことです。他の畑から病原菌が流れこむことで対応が遅れてしまう可能性が高まります。
農薬の問題
とうもろこしは非常に虫が来やすいので、一般的には予防のために農薬を使います。その農薬をもし風が吹いている日に使ってしまったら、BCDのキャベツ畑にもかかってしまう可能性があります。法律によって、とうもろこしに使っていい農薬だけどキャベツに使っちゃいけない農薬というのはあります。もしそんな農薬がキャベツにかかってしまったら、そのキャベツは出荷できなくなってしまいます。収穫時期も全く違うので、キャベツの収穫時期にとうもろこしに農薬を使ったりする可能性もあるので、ひょっとしたら残留農薬として残る可能性もあります。
獣害の問題
とうもろこしだと獣害の被害に非常に合いやすいです。そう、イノシシとかに食べられちゃうんですよね。イノシシはキャベツなんかあまり目にもくれませんが、とうもろこしなんかはかなりの確立で被害にあいます。そして猪突猛進というくらいですから、キャベツ畑をよけてトウモロコシだけを狙うなんていうお上品なことはしてくれません。
イノシシに踏み荒らされたキャベツはもちろん商品になりません。
どうでしょうか?農業に携わって無い方にも分かってもらえるように書いてみたんですが…。
要するに「地域に馴染んだ農業をしないといけない」というのはこういう理由もあるんです。
賃貸マンションなどの不動産であれば、引っ越せば問題解決ということもできます。
でも農地の場合はもともと先祖代々の土地で所有しているケースも少なくないので、やはり「近隣の農家がどんな人か」というのは非常に重要な問題になってきます。
そうすると農地の貸主も、また近隣の農家さんにとっても
たとえ耕作放棄地であったとしても信用できない人に農地を使ってほしくない
ということになるわけです。
農地の流動性の問題は、法律だけじゃなくそういった良くも悪くも地元の人とのつながりが影響しており、そういったこともあって耕作放棄地のように見えるところも表向きには貸し出されていないケースも非常に多いです。
これから農業を始めたい、という人はまずは農地のことについて考えてみるのもいいんじゃないでしょうか?どんなに優れた技術があっても、良い農地に恵まれずに苦労されてる方も意外と少なくないので…。
ではでは(^ ^)
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