2016-05-10
■山田玲司が新人漫画家に送ったアドバイスが身に沁みすぎる 
「絶望に効くクスリ」などでお馴染みの漫画家、山田玲司が「Amazonでひどいレビューを書かれてショックでペンがとれない」という新人漫画家に対してYoutubeでアドバイスしている。
このアドバイスが実にいい。
いや、ネタバレしちゃうと単に「レビューは見ない!エゴサーチしない!できればネットもしない!」というものすげー逃避なんだけど、もう完璧すぎて清々しい。
僕はけっこう、「絶望に効くクスリ」が好きで連載を読んでいたのだが、最近Kindle版も出たらしい
絶望に効く薬?ONE ON ONE?セレクション(1) (小学館文庫)
- 作者: 山田玲司
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/09/11
- メディア: Kindle版
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とりあえず買った。
絶望に効くクスリはいわゆるエッセイ漫画なのだが、日常のエッセイを書くんじゃなくて、徹底的にいろんな人に取材してその一部始終を書く。
しかも、その動機が「こんなに自殺者が多い国で、どうすれば絶望せずに生きることができるのか」というもの。
そういう軸でものごとを見てるから、スタイルとしては小林よしのりのゴーマニズム宣言と同じ感じなんだけど、山田玲司の軸がブレてないので読みやすい。ゴーマニズム宣言の小林よしのりは同じ人物相手でも、あとで仲が悪くなると突然すごい悪人顔で書かれるが山田玲司の場合はあくまで冷静。サブカル的視点というか、いろんな人のものの見方を吸収したいという謙虚な姿勢なので読んでいて混乱しない。
そしてレビューで低評価をつけられるだけならまだしも、名指しで作品を批判されるということになったとき、作家はどう対応すべきか、というのがこの動画のテーマなのだが、これははてブやTwitterで日常的にマサカリを投げつけられるブロガーにとっても他人事ではないだろう。
で、動画によれば山田玲司はもう「見ない」という選択をすることによって自分を守っているのだという。
これはこれでひとつの正解で、山田玲司くらい評価が確立された作家なら別に何の問題もない。
ただ、問題は新人の頃に叩かれた人よりも新人の頃に褒められた人だと思う。
モノというのはある程度の知名度がないと、わざわざ批判する人は現れない。
それどころか、ちょっとでも光るものがあればそこをとりだしてむしろ過大な評価を与える傾向がある。
通常の出版物というのは、編集者や営業、書店などによってある程度スクリーニングされているので本屋に並んでいる本がどこからどう読んでも完全に無価値ということは「ほぼ」あり得ない(もちろん例外もあるがここでは触れない)。
で、マイナーであるが故に「この作家は伸びる」とか「この本は良かった」というポジティブな感想をレビューする傾向が強い。
僕の本もそうだが、売れてない本の方が売れている本よりも低評価が低いのは、要するに発見されていないからだ。
するとどうなるかというと、むしろその新人作家は、チョーシに乗る。「オレ(私)って天才かも?♪」と自らの価値を過大評価するようになる。これは危険で、こうして幾人もの新人作家がこの快感に溺れて潰れていく。
むしろ賞賛が8で批判が2くらいがちょうどいい。
僕が食べログの点数が4点以上の店を警戒するのも、それが実際に不自然な数字であり、なんらかの力学が働いた結果である可能性が高いためだ。
僕は食べログの評価は3.4〜3.8くらいがベストだと思っていて、いい店は客を選ぶし、選ばれなかった客は選ばれた客の何倍も、悪い評価を書きたがるからだ。
その証拠に、これだけグルメネタをブログに書く僕は一度も食べログに投稿したことがない。お気に入りの店もそうでない店も、一度もだ。つまり、賞賛とは無言であることが最大級の賛辞なのである。この無言の賞賛を送る多数派をサイレントマジョリティと動画の中では呼んでいる。そして強い言葉で批判をなげつけるのはノイジーマイノリティなんだと。
ところが勘違いしてはいけないのは、無言の賞賛と無関心は、反応そのものは一緒だが現象としては全く違うということだ。無言であるから賞賛しているとはもちろんかぎらず、関心を持たなかったか、そもそもその商品の存在を認知していないかのどちらかである。
この事実がどちらに振れるかを確かめるには、顧客がリピーターになるかを見るしかない。漫画であれば一巻を読んだ読者が二巻を買うのかがひとつのベンチマークになるだろう。
そして山田玲司は、まさしくそのような方法によって、自分にとって最も確実で切実な方法によって、振り込まれる印税の額によって実際の賞賛を感じているからこそ、ノイジーマイノリティに耳を貸さなくて済むのだと思う。
一方、同じ動画の中で、名前はわからないが他の作家が、「自分はむしろ批判を沢山読むようにしている。それは自分の欠点を指摘してくれるありがたいことだから」と言っていて、これもまた興味深い。これは僕のブログ戦略と同じだったからだ。
作家の場合、現実として印税や原稿料が入ってこなければ生活が立ち行かない。作家に限って言えば、生活レベルの高さが作家としての評価と比例している。
だから、修正できる点があれば直した方がいいし、読んだ人が感じた欠点は次の作品で修正すべきだろう。
ただ、中には全く的外れのように思える批判もある。
そうすると、批判を読むこと自体があまり意味を成さないということになる。
批判してる人の心理状態というのは、基本的にあまり冷静ではない。冷静だったら批判なんか面倒くさくてできないからだ。
その冷静さを書いた心理状態で枝葉末節を指摘したとしても、それはひとつの真実だろうが、本質的に作品の質を上げる事にはならない。
たとえば動画にも出てくる実写映画版「スペースバトルシップヤマト」に対して「キムタクすぎる!」という批判は監督にとってなんの助けにもならない。それを決めるのは監督じゃないんだから。プロデューサーなんだから。そして結局、興行収入41億円を叩き出すためには、旧来のヤマトおたくだけではなく、ジャニヲタも巻き込む必要があったから、キムタクだったのであって、キムタクがイキイキとキムタクらしく演技するのを嘆いても仕方ない。
そしてキムタク砲によって、制作費20億円に対して41億円の興行成績という戦果を上げたのは立派な実績であろう。いや、わかるよ。でも僕は映画館に行っちゃったし、気に入らないところは多々あれど黒木メイサが可愛かったからDVD/BD買っちゃったしね。結局、口ではなんと言おうがお客さんになっちゃってるのよ。
ただ、作品として面白いかって言われたらやっぱりたぶんつまんない。あれだけ期待した007のSpectreもラストで駄作になってると思ってる。けどDVD/BDが出たら買うだろうし新しいボンドコレクションも買うだろう。作品的評価と興行収入は別で、そして興行収入を上げることこそがプロデューサーと監督の仕事(監督には印税が入る)だとしたら、彼らはプロとして立派に仕事を成し遂げたことになる。
芸術家じゃないんだから。
翻って見るに、ブログを書く人とプロとしての作家(漫画家、映画監督)とを単純に比較することはできないかもしれないけど、僕はブログを書く人は、どんなに批判されようが、読ませたら勝ちだと思っている。その意味では高知県でトマトを作ってる人のブログは、読んでる人がどれだけ居るかは知らないし、僕も全く読んでないが、少しは読まれてるんだろうから、やっぱりそれは勝ちは勝ち。美しくはないかもしれないけど文章を書いて無料で公開する目的の究極のところが、他人に読んでもらうことであって褒めてもらうことではない以上、勝ちは勝ちなんだよなあ、これが。
そして褒められる文章であったとしても、沢山の人が褒めると批判も同時に集まる。まるで磁石のように集まる。それは人間の持っている悲しい性質のひとつで、嫉妬だったり、焦りだったり、その他本文と全く関係ないムシャクシャしたことがあって文章の表現のどこかにカチンときて嫌味を言いたくなったり・・・進化心理学でいえば、きっと他者を批判するということ重要な機能なのだろう。
そういうわけで、批判をありがたいと思えるうちは読むのもいいけど、批判そのものに意味のある批判は少ない(少ないが、存在はする)ので、意味のある批判をしてもらいたかったら自分の信頼できる友人や識者にお願いするとかして、あとは見ない、というのが精神衛生上たいへんよろしいという山田玲司の結論は納得できるものがある。
まあだからといってデタラメな熟成肉の作り方とか解説したしたらダメだよ。別次元の問題で。
だから僕はたまに炎上っぽくなると、むかしはTwitterでは全部いちいち答えていたんだけど時間をあまりにも使ってしまうので、炎上のサマリーというか、「結局みんなどこが気に入らないと思ってるのかな」という結論を仲の良い友人に間接的に聞くに留めて、原文は酔っ払った時にしか読まないようにしている。酔っ払っているとそういうちょっとした自傷行為にも似た行動が、酒を美味くしてくれることもあるし。
家入一真氏とかはあれだけ炎上しててもTwitterをぜんぶ見ててある意味で凄いと思う。その精神力だけでも凄い。発言内容は個人的にどうかと思うけど。
というわけで、もしかしたら動画を見るより僕の感想を読むほうが長くなってしまったかもしれませんが、書き手として作り手としていろいろ考えさられたのでぜひ時間のあるときにこの動画を御覧ください
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