架空世界の建築学──SF映画デザイナーたちによるセミナー:画像ギャラリー

建築とSF映画は相互に影響しあっている──SF映画のデザイナーたちを迎えてパサデナのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで開催されたイベントを、豊富な画像とともにレポートする。

TEXT BY ANNALEE NEWITZ
TRANSLATION BY CHINATSU ETO, HIROKO GOHARA/GALILEO

WIRED(US)

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    1/15架空の都市
    『スター・ウォーズ』シリーズで多くのデザインを手がけたRyan Church氏の作品。ILLUSTRATION BY RYAN CHURCH

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    2/15会場も、SF的な建物
    イヴェント会場となったアートセンター・カレッジ・オブ・デザインのギャラリーは、それ自体が明らかにSFからの影響を受けている美しい建物だ。もともとは第2次世界大戦時に軍用機を試験する目的でつくられた、約1500平方メートルのコンクリート製の風洞だったが、2004年にギャラリーとして改装された。天窓は地球のものではない技術かと思わせるつくりで、外壁に取り付けられた階段はエッシャー風だ。写真は、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインの屋上部分。来場者は未来的な風景を目にする。ユニークなデザインの天窓ごしに夕日が沈んでいくのが見える。天窓は建物に3つあり、ビーチボールの素材になる分厚いゴムが使われている。PHOTOGRAPH BY ANNALEE NEWITZ

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    3/15建築のインスピレーションとしてのSF
    Geoff Manaugh氏は、会場を埋めた聴衆にこう語りかけた。「影響を受けたものとして映画を挙げる建築家は必ずしも多くない。Frank Gehry氏[建築家]には触れても、『宇宙戦争』に登場する『トライポッド』[3本足の殺人兵器]のことは語りたがらない。建築家の多くは『マイノリティ・リポート』や『スター・ウォーズ』を夢中になって見ているのに、そのことを論じようとしない。それでも建築史をひもとけば、これらの映画は実在の建築物と同様に、インスピレーションの源となっている」Manaugh氏は、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインのギャラリーで開催された一連のイベントに、同大学とともに取り組み、この2週間後には、建築に関係のある短編映画をまとめて上映する約2時間のイベントも実施した。PHOTOGRAPH BY NICOLA TWILLEY

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    4/15動画で見ることが前提のアート
    Manaugh氏のほか、SF映画のコンセプト・デザイン担当者4人(写真左から、Ben Procter氏Ryan Church氏Mark Goerner氏James Clyne氏)も演壇に上がった。パネリストたちは、空想世界のインダストリアル・デザインの実例として、映画スタジオの外ではまずお目にかかれないアート作品を多数見せてくれた。ここで紹介された作品の多くは、別世界の未来的な都市を描いたもので、特殊効果チームやCGI専門家が、宇宙での戦争や異星人の世界、ドラゴンのいる城などの背景を作成する際の叩き台として用いられる。

    この写真は、Procter氏が、映画『マトリックス・リローデッド』に出てくる地下都市の構造をデザインしたときのことを説明しているところだ。Procter氏はこの構造を「メカネデリック」[「メカニカル」と「サイケデリック」を合わせた造語]だと形容した。背後のスクリーンには、映画の中で主人公たちがホバークラフトに乗って通り抜けるトンネルのアニメーション・クリップが映し出されている。Procter氏の説明によると、コンセプト・デザイン担当者はたいてい、自分の作品を3Dアニメーションで提示したがるそうだ。それは、こうしたアート作品が、もともと動画作品の中で見られることを前提としているからだという(Procter氏自身は、加Softimage社の『XSI』ソフトウェア・パッケージを用いて動きをつけるのが好きだとのこと)。PHOTOGRAPH BY ANNALEE NEWITZ

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    5/15「メカネデリック」な風景
    Procter氏が『Photoshop』で作成した、地下トンネルのデザイン。観客の目にはわずか数秒しか触れることのない背景を、コンセプト・デザイン担当者がどれほど詳細に作り込んでいるか確認できる。怪しく光る空間にワイヤーが垂れ下がる風景が、メカニカルでサイケデリックな、際立った感覚を生み出している。ILLUSTRATION COURTESY OF BEN PROCTER/WARNER BROS. STUDIOS

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    6/15お菓子の国をデザインする
    コンセプト・デザイン担当者の仕事をひとことで言うと、ありえないものを表出することだ。Procter氏は『チャーリーとチョコレート工場』の工場内部のデザインも手がけたが、この時は多くの時間を、「ホワイトチョコの草木ってどんな感じだろう?」と自問自答しながら過ごしたという。ILLUSTRATION COURTESY OF BEN PROCTER/WARNER BROS. STUDIOS

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    7/15生ゴミ処理機の中での生誕
    Ryan Church氏は、『スター・ウォーズ』シリーズの『エピソード3/シスの復讐』で、ダース・ベイダーが誕生する部屋の初期デザインを手がけた。この強大な敵役は生ゴミ処理機の中で生まれたのだ、と観客に印象づけることが、Church氏のデザインの狙いだったという。その言葉通り、Church氏がスクリーンに投影した画像を見ると、ダース・ベイダーの誕生した場所は、どこの家庭の流しにも付いているディスポーザーの内側に似ていた。天井から下に向かって、何本もの刃が下りているところまでそっくりだ。ILLUSTRATION COURTESY OF RYAN CHURCH/LUCASFILM LTD.

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    8/15「安っぽい」首都惑星
    Ryan Church氏は、『エピソード3/シスの復讐』に登場する「首都惑星」コルサントの最初のアイデアを出した人物だ。怪しく光る尖塔の並ぶあの景色を考案し、『Photoshop』でレンダリングしたChurch氏は、この惑星の「安っぽさ」(本人談)について、ちょっとした釈明をした。「首都惑星の安っぽさは意図したものだ」と、Church氏は肩をすくめた。「われわれはこの星の文化が、ある意味で安っぽい段階にまで到達したことを示そうとしたのだ」ILLUSTRATION COURTESY OF RYAN CHURCH/LUCASFILM LTD.

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    9/15逆さまの都市
    Church氏は、上下逆さまの街というイメージに昔から取り憑かれてきたと語った。このイラストも、逆さまの街を描いたものの1つだ。建物が上下逆になり、「屋根」の下をかすめて飛行船が飛んでいる。

    Church氏は『スター・ウォーズ』シリーズ向けにも、上下逆さまの街をデザインしていた。建物が橋梁から吊り下がるという構造だ。

    しかし、George Lucas氏はこの街をさらに引っくり返すことに決め、その結果、Church氏が冗談交じりに「ハンモックの街」と呼ぶ景色が誕生することとなった。どうやら、一部の建物のアイデアは、Lucas氏の目にも突飛に映るらしい。ILLUSTRATION BY RYAN CHURCH

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    10/15「トライポッド」の攻撃
    Clyne氏は、『宇宙戦争』に出てくる殺人兵器「トライポッド」のデザインに関わった中心人物の1人でもある。ほかのコンセプト・デザイン担当者にもよくあることだが、Clyne氏は現実の自動車のデザインからインスピレーションを得た。トライポッドが街を攻撃するこの場面で、宇宙人の攻撃用兵器は、塔のてっぺんに変わった形の未来的な車が載っているように見える。これは、建築デザインと車両デザインを統合した例と言えるだろう。ILLUSTRATION COURTESY OF MARK GOERNER/DREAMWORKS,FOX STUDIOS

  • sfarchitecture11

    11/15Iron Maidenの影響
    Clyne氏は、少年期に芸術上の多大なインスピレーションを受けたものの1つは、ヘビーメタル・バンド『Iron Maiden』のアルバムジャケットだったと打ち明けた。「レコード店で何時間も見つめていたのを覚えている。あんなに火が燃えていて、手前にミュージシャンの姿があるのを、突飛だ、ナンセンスだと思いながらも、あのチープなアート作品に、すっかり心を動かされてしまった」とClyne氏は言う。若い頃に受けたこのインスピレーションがそれとなく感じられるのが、『X-MENファイナル ディシジョン』に登場する巨人ロボットのデザイン画だ。ILLUSTRATION COURTESY OF JAMES CLYNE

  • sfarchitecture12

    12/15「トライポッド」の攻撃
    Clyne氏は、『宇宙戦争』に出てくる殺人兵器「トライポッド」のデザインに関わった中心人物の1人でもある。ほかのコンセプト・デザイン担当者にもよくあることだが、Clyne氏は現実の自動車のデザインからインスピレーションを得た。

    トライポッドが街を攻撃するこの場面で、宇宙人の攻撃用兵器は、塔のてっぺんに変わった形の未来的な車が載っているように見える。これは、建築デザインと車両デザインを統合した例と言えるだろう。ILLUSTRATION COURTESY OF JAMES CLYNE/DREAMWORKS, PARAMOUNT STUDIOS

  • sfarchitecture13

    13/15未来都市と車
    Mark Goerner氏も、『マイノリティ・リポート』の都市景観をデザインする際に、自動車と建物を統合させた。Goerner氏は、作業を始める段階ではたいていフリーハンドでデッサンをし、決定稿を作成する段になって初めて『Photoshop』を使うと語った。「この手の作品を、商業デザインにすぎないと切り捨てる人も多い。しかし商業デザインだって、芸術作品と同じように、美しい流れや形を備えていることもある」と、Goerner氏は語った。ILLUSTRATION COURTESY OF MARK GOERNER/DREAMWORKS,FOX STUDIOS

  • sfarchitecture14

    14/15もう1つの古代ローマ
    Mark Goerner氏は、個人的に取り組んでいるプロジェクトの中で、こんな問いを立てている。「古代ローマに鉄があったらどうなっていたか? どんな建築ができていただろう?」その問いへの答えがこの作品だ。古典様式の建築に混じって鉄でできた建物の立ち並ぶ、ちょっと変わったもう1つのローマの姿が描かれている。材料工学の歴史がちょっと違っていれば、こうした景観もあり得たかもしれない。ILLUSTRATION COURTESY OF MARK GOERNER/FOX STUDIOS

  • sfarchitecture15

    15/15自宅もSF
    『X-MEN 2』に登場するハイテク刑務所や、倫理に背いた実験室の多くをデザインしたMark Goerner氏は、すべてのインスピレーションを現実社会から得ていると語る。「古い建物に入って樽を引っくり返しては、底がどうなっているかを確認する」と語るGoerner氏は、このところ、現実の建築物にも関わろうとしている。ここに掲げたのは、同氏が自宅として建てている家の初期段階でのデザインだ。山の中腹に宇宙船を停めてあるように見える。ILLUSTRATION COURTESY OF MARK GOERNER/FOX STUDIOS

  • sfarchitecture01

架空の都市
『スター・ウォーズ』シリーズで多くのデザインを手がけたRyan Church氏の作品。ILLUSTRATION BY RYAN CHURCH

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会場も、SF的な建物
イヴェント会場となったアートセンター・カレッジ・オブ・デザインのギャラリーは、それ自体が明らかにSFからの影響を受けている美しい建物だ。もともとは第2次世界大戦時に軍用機を試験する目的でつくられた、約1500平方メートルのコンクリート製の風洞だったが、2004年にギャラリーとして改装された。天窓は地球のものではない技術かと思わせるつくりで、外壁に取り付けられた階段はエッシャー風だ。写真は、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインの屋上部分。来場者は未来的な風景を目にする。ユニークなデザインの天窓ごしに夕日が沈んでいくのが見える。天窓は建物に3つあり、ビーチボールの素材になる分厚いゴムが使われている。PHOTOGRAPH BY ANNALEE NEWITZ

  • sfarchitecture03

建築のインスピレーションとしてのSF
Geoff Manaugh氏は、会場を埋めた聴衆にこう語りかけた。「影響を受けたものとして映画を挙げる建築家は必ずしも多くない。Frank Gehry氏[建築家]には触れても、『宇宙戦争』に登場する『トライポッド』[3本足の殺人兵器]のことは語りたがらない。建築家の多くは『マイノリティ・リポート』や『スター・ウォーズ』を夢中になって見ているのに、そのことを論じようとしない。それでも建築史をひもとけば、これらの映画は実在の建築物と同様に、インスピレーションの源となっている」Manaugh氏は、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインのギャラリーで開催された一連のイベントに、同大学とともに取り組み、この2週間後には、建築に関係のある短編映画をまとめて上映する約2時間のイベントも実施した。PHOTOGRAPH BY NICOLA TWILLEY

  • sfarchitecture04

動画で見ることが前提のアート
Manaugh氏のほか、SF映画のコンセプト・デザイン担当者4人(写真左から、Ben Procter氏Ryan Church氏Mark Goerner氏James Clyne氏)も演壇に上がった。パネリストたちは、空想世界のインダストリアル・デザインの実例として、映画スタジオの外ではまずお目にかかれないアート作品を多数見せてくれた。ここで紹介された作品の多くは、別世界の未来的な都市を描いたもので、特殊効果チームやCGI専門家が、宇宙での戦争や異星人の世界、ドラゴンのいる城などの背景を作成する際の叩き台として用いられる。

この写真は、Procter氏が、映画『マトリックス・リローデッド』に出てくる地下都市の構造をデザインしたときのことを説明しているところだ。Procter氏はこの構造を「メカネデリック」[「メカニカル」と「サイケデリック」を合わせた造語]だと形容した。背後のスクリーンには、映画の中で主人公たちがホバークラフトに乗って通り抜けるトンネルのアニメーション・クリップが映し出されている。Procter氏の説明によると、コンセプト・デザイン担当者はたいてい、自分の作品を3Dアニメーションで提示したがるそうだ。それは、こうしたアート作品が、もともと動画作品の中で見られることを前提としているからだという(Procter氏自身は、加Softimage社の『XSI』ソフトウェア・パッケージを用いて動きをつけるのが好きだとのこと)。PHOTOGRAPH BY ANNALEE NEWITZ

  • sfarchitecture05

「メカネデリック」な風景
Procter氏が『Photoshop』で作成した、地下トンネルのデザイン。観客の目にはわずか数秒しか触れることのない背景を、コンセプト・デザイン担当者がどれほど詳細に作り込んでいるか確認できる。怪しく光る空間にワイヤーが垂れ下がる風景が、メカニカルでサイケデリックな、際立った感覚を生み出している。ILLUSTRATION COURTESY OF BEN PROCTER/WARNER BROS. STUDIOS

  • sfarchitecture06

お菓子の国をデザインする
コンセプト・デザイン担当者の仕事をひとことで言うと、ありえないものを表出することだ。Procter氏は『チャーリーとチョコレート工場』の工場内部のデザインも手がけたが、この時は多くの時間を、「ホワイトチョコの草木ってどんな感じだろう?」と自問自答しながら過ごしたという。ILLUSTRATION COURTESY OF BEN PROCTER/WARNER BROS. STUDIOS

  • sfarchitecture07

生ゴミ処理機の中での生誕
Ryan Church氏は、『スター・ウォーズ』シリーズの『エピソード3/シスの復讐』で、ダース・ベイダーが誕生する部屋の初期デザインを手がけた。この強大な敵役は生ゴミ処理機の中で生まれたのだ、と観客に印象づけることが、Church氏のデザインの狙いだったという。その言葉通り、Church氏がスクリーンに投影した画像を見ると、ダース・ベイダーの誕生した場所は、どこの家庭の流しにも付いているディスポーザーの内側に似ていた。天井から下に向かって、何本もの刃が下りているところまでそっくりだ。ILLUSTRATION COURTESY OF RYAN CHURCH/LUCASFILM LTD.

  • sfarchitecture08

「安っぽい」首都惑星
Ryan Church氏は、『エピソード3/シスの復讐』に登場する「首都惑星」コルサントの最初のアイデアを出した人物だ。怪しく光る尖塔の並ぶあの景色を考案し、『Photoshop』でレンダリングしたChurch氏は、この惑星の「安っぽさ」(本人談)について、ちょっとした釈明をした。「首都惑星の安っぽさは意図したものだ」と、Church氏は肩をすくめた。「われわれはこの星の文化が、ある意味で安っぽい段階にまで到達したことを示そうとしたのだ」ILLUSTRATION COURTESY OF RYAN CHURCH/LUCASFILM LTD.

  • sfarchitecture09

逆さまの都市
Church氏は、上下逆さまの街というイメージに昔から取り憑かれてきたと語った。このイラストも、逆さまの街を描いたものの1つだ。建物が上下逆になり、「屋根」の下をかすめて飛行船が飛んでいる。

Church氏は『スター・ウォーズ』シリーズ向けにも、上下逆さまの街をデザインしていた。建物が橋梁から吊り下がるという構造だ。

しかし、George Lucas氏はこの街をさらに引っくり返すことに決め、その結果、Church氏が冗談交じりに「ハンモックの街」と呼ぶ景色が誕生することとなった。どうやら、一部の建物のアイデアは、Lucas氏の目にも突飛に映るらしい。ILLUSTRATION BY RYAN CHURCH

  • sfarchitecture10

「トライポッド」の攻撃
Clyne氏は、『宇宙戦争』に出てくる殺人兵器「トライポッド」のデザインに関わった中心人物の1人でもある。ほかのコンセプト・デザイン担当者にもよくあることだが、Clyne氏は現実の自動車のデザインからインスピレーションを得た。トライポッドが街を攻撃するこの場面で、宇宙人の攻撃用兵器は、塔のてっぺんに変わった形の未来的な車が載っているように見える。これは、建築デザインと車両デザインを統合した例と言えるだろう。ILLUSTRATION COURTESY OF MARK GOERNER/DREAMWORKS,FOX STUDIOS

  • sfarchitecture11

Iron Maidenの影響
Clyne氏は、少年期に芸術上の多大なインスピレーションを受けたものの1つは、ヘビーメタル・バンド『Iron Maiden』のアルバムジャケットだったと打ち明けた。「レコード店で何時間も見つめていたのを覚えている。あんなに火が燃えていて、手前にミュージシャンの姿があるのを、突飛だ、ナンセンスだと思いながらも、あのチープなアート作品に、すっかり心を動かされてしまった」とClyne氏は言う。若い頃に受けたこのインスピレーションがそれとなく感じられるのが、『X-MENファイナル ディシジョン』に登場する巨人ロボットのデザイン画だ。ILLUSTRATION COURTESY OF JAMES CLYNE

  • sfarchitecture12

「トライポッド」の攻撃
Clyne氏は、『宇宙戦争』に出てくる殺人兵器「トライポッド」のデザインに関わった中心人物の1人でもある。ほかのコンセプト・デザイン担当者にもよくあることだが、Clyne氏は現実の自動車のデザインからインスピレーションを得た。

トライポッドが街を攻撃するこの場面で、宇宙人の攻撃用兵器は、塔のてっぺんに変わった形の未来的な車が載っているように見える。これは、建築デザインと車両デザインを統合した例と言えるだろう。ILLUSTRATION COURTESY OF JAMES CLYNE/DREAMWORKS, PARAMOUNT STUDIOS

  • sfarchitecture13

未来都市と車
Mark Goerner氏も、『マイノリティ・リポート』の都市景観をデザインする際に、自動車と建物を統合させた。Goerner氏は、作業を始める段階ではたいていフリーハンドでデッサンをし、決定稿を作成する段になって初めて『Photoshop』を使うと語った。「この手の作品を、商業デザインにすぎないと切り捨てる人も多い。しかし商業デザインだって、芸術作品と同じように、美しい流れや形を備えていることもある」と、Goerner氏は語った。ILLUSTRATION COURTESY OF MARK GOERNER/DREAMWORKS,FOX STUDIOS

  • sfarchitecture14

もう1つの古代ローマ
Mark Goerner氏は、個人的に取り組んでいるプロジェクトの中で、こんな問いを立てている。「古代ローマに鉄があったらどうなっていたか? どんな建築ができていただろう?」その問いへの答えがこの作品だ。古典様式の建築に混じって鉄でできた建物の立ち並ぶ、ちょっと変わったもう1つのローマの姿が描かれている。材料工学の歴史がちょっと違っていれば、こうした景観もあり得たかもしれない。ILLUSTRATION COURTESY OF MARK GOERNER/FOX STUDIOS

  • sfarchitecture15

自宅もSF
『X-MEN 2』に登場するハイテク刑務所や、倫理に背いた実験室の多くをデザインしたMark Goerner氏は、すべてのインスピレーションを現実社会から得ていると語る。「古い建物に入って樽を引っくり返しては、底がどうなっているかを確認する」と語るGoerner氏は、このところ、現実の建築物にも関わろうとしている。ここに掲げたのは、同氏が自宅として建てている家の初期段階でのデザインだ。山の中腹に宇宙船を停めてあるように見える。ILLUSTRATION COURTESY OF MARK GOERNER/FOX STUDIOS

建築家Frank Gehry氏が設計した、シアトルのロックンロール博物館『Experience Music Project』の建物は、金属製の外壁が渦を巻いて屹立するデザインで、どこか異星の風景を思わせる。クリーブランドにある、やはりロック博物館の『Rock and Roll Hall of Fame』の建物は、I. M. Pei(貝聿銘)氏の設計したものだが、これを見て宇宙船を連想しない人などいるだろうか?

まるでDarren Aronofsky監督のSF映画に登場しそうな建造物をデザインした、こうした著名な建築家たちのインスピレーションの源は何だったのだろう?

ブログ『BLDGBLOG』の運営者で、建築の未来を考察しているGeoff Manaugh氏によると、現代の建築家に影響を与えていることが広く認識されていて、必ずしも分かりにくいわけではないのに、めったに論じられないものがあるという。それは、ファンタジーとSF映画だ。

それゆえ、Manaugh氏は昨年5月、カリフォルニア州パサデナにあるアートセンター・カレッジ・オブ・デザインでイヴェントを企画した。

『スター・ウォーズ』『マトリックス』『マイノリティ・リポート』などの映画に登場する架空の都市のコンセプト・デザインを手がけた担当者たちが、現実の都市の未来を担っていく建築デザイン専攻の学生向けに講演を行なうというものだ。