今回の「ミニ経済分析」では、産業集積の活動の「見える化」にチャレンジしているところですが、トヨタ自動車の企業城下町に代表される愛知県の産業集積の活動を、天気予報の雲の流れの画像のように、上空から眺めるように見てみましたのでご紹介します。ここでいう愛知県の産業集積とは、トヨタ自動車本社を中心とする半径50km以内地域に所在する工場群を指しています。
産業集積の活動を上空から眺めるというのはどういうことかと言いますと、生産活動が活発な地域を地図上に表示することで特徴をみるものになりますが、具体的には、寒暖の差を表すヒートマップを使って、生産活動が活発な地域ほど明るく光り、生産活動が活発ではない地域は青い色になるような画像で特徴を確認していきます。
まず、地域全体の生産の状況について、生産が好調だった平成26年第1四半期と低調だった平成27年第3四半期で比べてみると、生産が最も活発化していた地域(ヒートマップでは、黄色から濃い赤色となっている部分)の面積が、低調な時期には好調な時期に比べて小さくなっているのが分かります。
も し、ある大規模工場が周囲から独立した形で大量生産を行っていて、地域の生産がこの工場の生産に大きく左右されているような地域だったとしたら、このよう な傾向は見られなかったかもしれません。
愛知県の産業集積を上空から眺めてみると、この地域では、「個々の工場として」ではなく「集積として」生産が活発化している様子がうかがえます。
以上では業種全体で生産の状況を見てきましたが、いくつかの業種をピックアップして生産の状況を見ていきたいと思います。
まずは、自動車及び自動車部品の生産の状況です。こちらも全体で見てきたのと同様、生産が最も活発化していた地域の面積が、低調な時期には好調な時期に比べて小さくなっているのが分かります。
また、非鉄金属製品で見ても同様の傾向にあることが分かります。
他方、プラスチック製品工業を見ると、広範囲で生産が活発化してはいますが、全体や上の二つの業種で見たような傾向にはないことが分かります。
このように、業種ごとに見てみると、生産の活性化のパターンが必ずしも一様でないことが分かりました。 このことは、この地域の生産がある特定の種類の財 (ここでは自動車)の生産工程を中心として形成された産業集積のみに規定されているわけではなく、多様な産業集積同士の連関で成り立っている可能性がある ことを示唆しているといえます。
以上で見てきたように、愛知県の産業集積を上空から眺めて見てみると、「個々の工場として」ではなく「集積として」生産が活発化している様子がうかがえました。
また、業種ごとの生産の活性化パターンが必ずしも一様ではないことから、この地域の生産が、自動車を 中心とした産業集積だけでなく、多様な産業集積同士の連関で成り立っている可能性があることが分かりました。
この分析のコンセプトについては、こちらの記事を
keizaikaisekiroom.hatenablog.com
もう一つの「見える化」である「数値で捉える」については、こちらの記事を
keizaikaisekiroom.hatenablog.com
ご覧ください。
◎スライド資料
◎ミニ経済分析のページ
産業集積の活動を可視化する ~愛知県西三河周辺を例として~ ―地域別生産指数から地理空間別生産指数へ―|その他の研究・分析レポート|経済産業省
◎ミニ経済分析の一覧表