前回の続きです。
Bach's experience in writing lute music must have stimulated the composition of the solo string works.
リュート音楽をかいた経験が無伴奏作品を生み出した、というわけです。
ただし、リュートの場合は無伴奏とはいいません。通常単旋律を扱う楽器が伴奏無しで頑張るから無伴奏なのであって、リュート、ギター、鍵盤楽器など和音を出すのが得意な楽器は論外です。
では無伴奏作品以前のリュート作品を確認してみます。
と、その前にリュートってなんなの?という人のために
リュートを探せ!
以下の絵には共通の楽器が描かれています。探してみてください。
どうでしょうか。楽器なんかが色々と出てきましたから、なかなか難しかったかと思われます。
では正解発表です。
はい、まあというわけで、わかりましたか、この洋ナシを縦に切ったような楽器がリュートです。
琵琶の仲間ですね。
それで、またニューグローブのリュートのところを見てみます。
The earlist work is the Suite in E minor BWV996, which dates from the middle of the Weimar period; it already shows a surprisinly balanced construction.
ほう、そうですか。
Suiteは英語読みでスウィート、組曲のこと
996が初めで、それはワイマール時代というわけです。
バッハがワイマールにいたのは1708年から1717年ケーテンに行くまでです。
その後の記述によると
999が、ケーテンか、ケーテンの去った後訪れるライプツィヒの初めに作られたのを除けば後は全てライプツィヒで作られたらしい。
というわけでとりあえず"996"をちょっとみてみましょうか。
その前に・・・
組曲とは?
バロック時代の組曲というのは、
同一の調でかかれた舞曲(的性格をもった楽曲)が組み合わされたもので、
バッハの場合は
- アルマンド
- クーラント
- サラバンド
- ジーグ
というのが基礎になります。
バッハはさらにこれを拡大します。
- アルマンドの前に特定の舞曲のリズムによらない自由な形式の楽曲を前奏曲として附加
- サラバンドとジーグの間に、当時流行っていた新しい舞曲、ブーレの他メヌエット、ガボット、パスピエ、ポロネーズ等(フランスのバレエ発祥のものが多い)を挿入
アルマンドなんかは古いもので、すでに様式化して舞曲の性格を失っているのに対して、随意に挿入されるものは、当時実際に踊られていたものですから、踊りの性格が強いので、その対比もききどころでしょうか。
組曲というのは字をみるとどうもフランス発祥のようですが、面白いのはアルマンドで、
というのもアルマンドというのはフランス語で”ドイツの”という意味なのです。
辞書にも(une) Allmande でアルマンド、ドイツ舞曲と載っています。
バッハはドイツ人ですから、つまり、日本人がJapaneseなどという曲を作っているようなもの
リュート組曲 ホ短調 BWV996
僕の手元にあるリュートのCDはユングへ―ネルという人のもの。
それに従って構成を見てみます。
構成
- Praeludio (Passaggio-Presto) 前奏曲
- Allemande アルマンド
- Courante クーラント
- Sarabande サラバンド
- Bourree ブーレ
- Gigue ジーグ
上に書いた通り、アルマンドの前に前奏曲が置かれ、サラバンドとジーグの間にブーレがはさまっていますね。
僕ブーレはピアノで弾いたことがあるので、一番有名なのではないかと目星をつけました。
とりあえずそれを聴いてみましょう。
Bach, Bourrée (BWV 996), Andreas Martin, Lute, HD
一目では数えられない位弦の数が多いですね・・・これは本当に調弦が大変そう。
この演奏は僕の持っているCDと調弦が違うようです。(かなり低い)
別のものも聴いてみると、それもまた別の調で弾いている。
どうもリュート演奏にはこういうことがよくあるらしい。
確かユングへ―ネルのCDの解説にも移調をしてある(曲がある)ということが書いてありました。
組曲はバッハの音楽のなかでは親しみやすいほうなのですが、曲数が多いし、踊りの名前が一度にでてくるので、わかりにくいといえばわかりにくい。
実際に踊りを踊ったり、見たりした経験があればよいのですが、なかなかそうはいきません。
というわけで次は舞曲をもう少し詳しくみるとともに、いよいよバッハの無伴奏作品の構成をみてみようと思います。
参考文献