ここ最近の検索順位変動のただ中で、ふと思ったこと。
囚われ
ブログなんて本来、始めたばかりの頃はアクセス数など微々たるもので、日々コツコツとコンテンツを積み重ねて大成してゆくのが普通。初日や開始して1週間そこらで異常なまでの耳目を集めることは不可能なことである。
しかしながら、はてなブログではこの異常事態を意図的に引き起こすことが可能。ブックマーク数を50以上得れば多くの人目につくページに掲載され、多大なフォロワー数を要するTwitterアカウントに 拡散される。いわゆるホットエントリーというやつだ。
開始初期ではありえない注目を浴びた初心者は歓喜し、その興奮を忘れられずにブックマーク数にこだわるようになる。これは僕も実際に体験したので気持ちがよくわかる。麻薬に近い感覚。
いつしか有益な情報を発信したり楽しく更新するという原則から逸れ、ブックマークに囚われて言葉に棘を含ませたり煽りを繰り返す人もいる。このような状態に陥ったユーザーに対して「サービスの特性に溺れ自制心を失ったPVの奴隷」と揶揄するベテランもいるが、通常ではありえないほどの注目を集めるというのはネット初心者には刺激が強すぎる。さもありなんという感じは否めない。
これにより誤情報を発信したり羊頭狗肉なコンテンツを積み上げることに正当性を帯びるかといえばそんなことはなく、多くの批判を浴びて炎上するサイトもあるし、辛辣な言葉で心が折れて潰えていくユーザーも後を絶たない。咎の報いというか、これは仕方のないことなのであろうね。
検索順位を上げる
ホットエントリーの魅力はこれだけに留まらない。サイト全体を底上げするかどうかについては未だ答えが出ていないが、記事単位でいうとホットエントリーしたコンテンツは検索順位が上がるのだ。これは実体験に基づくもの。
どんなに有益で内容の濃い記事を作成しても、ふつうは老舗ドメインサイトに敵わない場合がほとんど。しかし、この力を利用すれば半年足らずのサイトでもそれらベテランをぶち抜いて上位表示させることが可能。
一過性の耳目を集めるに留まらず、検索エンジンの評価をも上げてしまう仕組み。これを巧みに利用してアフィリエイト等で収益をあげるユーザーも少なくない。一過性の大量PVとインデックス上位表示という1粒で2度美味しいホットエントリーに耽溺するユーザーを増やしている大きな要因であろう。
変化の兆し
ここ最近のことであるが、ブックマーク数で検索順位を上げていた記事が凋落し始めたという。
現象を確認してまだ数日目のことであるから、中長期的な展開は予想できない。だが、もしこれが「ブックマーク被リンクによる検索順位の押し上げ力が急落し、以後も継続する」場合、脱ホットエントリーが起きるのではないかと考える。
初心者は一時的なPV増でも欲しがちだが、ブログを運営して半年~1年ともなると、検索エンジンを意識するユーザーが増える。ここに先ほどの影響が加味されると、ますますホットエントリーによる一過性効果を考慮しないユーザーが増えるのではなかろうか。
この流れが確定するのであれば、僕としては喜ばしい限り。ブックマーク数を稼ぐため「だけ」に作られた斜めのコンテンツがインデックス上位を汚さないという利点もあるし、囚われるユーザーが少しでも減るかもしれない。また、自分自身がホットエントリーに対して今以上に執着をなくすことができるかもしれない。
脱ホットエントリー
一過性の注目に関しては依存から脱却しつつあるけど、ブックマーク被リンクによるインデックス上位表示に関しては大きな魅力を感じる。正直な気持ち。だけど、現在はそのような力でアフィリエイトを成功させているわけではないのは大きな救いだ。
もし、今後もそのような力で検索順位を上げることが王道になってしまうと、どうしてもブックマークを集めるための斜めの力を記事に入れてしまうかもしれない。収益についても少なからず欲していては、よこしまな心が首をもたげないとも限らない。
はてな被リンクによるインデックスへのアドバンテージが見直され、あくまでも一過性の注目効果しか上がらないような状態になってくれれば、このような気持ちも起きないのであろうと淡い期待を寄せているのである。
理想は検索エンジンの方向だけを向いて、有益なコンテンツ作りに注力すること。現時点でもそうあるべきなのは承知しているし、いつか辿りつきたいと考えている。だけど、ある分には活用したいという気持ちはどうしても抑えきれず、それに対して期待してしまう弱い自分も間違いなく心の中にいる。そんな中で、今回の変動に対しては理想に向かう自分の背中を後押ししてくれる力強い変革であってほしいと願うのである。
はてなブックマークはより良いキュレーションへ
「脱ホットエントリー」と銘打ったが、このシステム事体を悪者に仕立て上げる意図はまったくない。むしろより良い方向へ進んでほしいと思っている。だが、検索エンジンの上位表示アドバンテージになるような仕組みは、不埒で不正な手段を用いてシステムを悪用する輩につけ入れられる隙になるのではないかと考える。
もしこの力が失われれば、ホットエントリーに囚われている多くのユーザーが目を覚まし、良質なコンテンツ制作に向けて注力を始めるかもしれない。また、悪用していたユーザーも大きな利点が失われたとなれば、その手段を見直さざるを得なくなるのではないか。
面白い記事が一時的に拡散され、多くの注目を浴びるのは結構なことだろう。ただ、それが長期的に検索エンジンに好まれるかどうかは別なのかなと。
ブックマークされずとも多くのユーザーが訪れる記事は当サイトにも多数あるし、今ではPV数の5割以上を占めている。このような記事を積み上げて、サイトは大成していくのが王道。
はてなブログも、WPなど他のブログサービスと同様に、コツコツとコンテンツを積み上げて育てていった運営者の地道な努力が報われるサービスに変革すべきだし、今がその時なのかもしれない。
本物の互助会が淘汰され、嫌疑をかけられた精錬潔白なユーザーが報われる変化であってほしいな。