スラムで人を雇ってたら、政治家とコネができた
—— 金城さんはアフリカに会社を約50社お持ちだとおっしゃいましたが、どんな会社があるんですか?
金城拓真(以下、金城) 東アフリカは基本的に中古車から派生した仕事が多くて、タクシー会社を作って、そのタクシーの客がバイクタクシーに取られたら、じゃあうちもバイクタクシーを始めて、そのバイクタクシーのドライバーはほとんどスラムの子たちにやってもらったんですね。それで学校を作るために建設会社を作ったり。
堀江貴文(以下、堀江) へえー。
—— いやいや、そんな成り行きで学校作ったりするもんですか?
金城 ええとですね。まず、スラムといっても、行政区としてひとつの村のようになってるんですけど、あるスラムで人をたくさん雇ったら、その村の若い子たちの6~7割がうちの会社の従業員になったんです。そしたら選挙があって、「選挙協力をお願いします」と言ってくる政治家がいたから協力して、その人が当選したら、今度は悩み相談を持ちかけられて。
堀江 どんな?
金城 「学校を建て替えたいんだけど、スラムで治安が悪いから建設会社が来てくれないんだ」と。そこで僕が「じゃあ建設会社を作るから、入札案件を用意してください」と頼んで、結局僕しか入札しないから僕が落札して、学校を作ったり。で、学校を作るには建設資材が必要なんですけど、なかなか手に入らなくて、しょうがないから建材を調達する会社も作りました。
堀江 いま全部の会社合わせて従業員はどれくらいいるんですか?
金城 工場をやってるんで、多いときで4000人ぐらい、少ないときで3000……。
堀江 そこ、多い少ないって何ですか? 季節労働みたいな?
金城 プラスチックの工場を持ってるんですけど、プラスチックの原価って1年を通してきれいな波になるんですよ。だから基本的に、高いときは仕入れないで、安いときに仕入れて商品を作ってるので。
堀江 洗面器とか作ってるんですか?
金城 ムスリムの人がお祈りに使うゴザとかを作っています。あとはペッドボトルとか。ペットボトルの製造工程って面白くて、ポップコーンみたいにポンポンポンポンできていくんです! 見てて飽きないですよ。
堀江 いや、飽きると思うよ(笑)。資本はどうしてるんですか?
金城 中古車を売ってできた現金がそこそこあったので、基本的には全部自分のお金で回してます。
堀江 なんかもうすごいっすね。アフリカ股にかけて。さっき中古車は儲からなくなったって言ってたけど、いまはもうやってないんですか?
金城 ほとんどやってないです。ただ、日本からアフリカに中古車が持ち込まれるときって、輸出前検査っていうのを受けないといけないんですね。その検査をアフリカ各国に導入させる活動みたいなのを僕の会社がやっていて、中古車が輸出されるたびに検査料の一部がその会社に入るようになってるんです。なので、直接売るのではなくて、貿易量が増えたら勝手に儲かる仕組み。
堀江 検査利権か。やっぱあれだね、日本の戦後のどさくさにも金城さんみたいな人がいっぱいいたんだろうね。
金城 人聞きの悪い(笑)!
英語なんか、しゃべれなくても問題ない
堀江 でも、この人見てると、『君はどこにでも行ける』って思いませんか?
—— そうですね(笑)。
堀江 だってさ、沖縄で生まれて、米軍基地で楽して働こうと思って韓国の大学になんとか入れたような人が、今じゃアフリカでは大実業家になってるっていう。結局、夕方の4時半に家に帰れてます?
金城 ぜんぜん帰れてない! もっと楽をしたかったのに。ここ11年で、まるまる24時間の休みってとったことないです。最近は飛行機に乗っててもWi-Fiつながるじゃないですか。
堀江 Wi-Fi使っちゃう?
金城 フランス語や英語で指示が飛んでくるんですけど、僕は日本語しかできないから、日本語の用件だけ返事します。
—— 日本語しかできないって、驚きですね。
堀江 僕はぜんぜん驚かない。そういう知り合いが多いから。たとえば、九州で寿司虎っていう寿司チェーンを展開してる中村正剛さんって人がいるんだけど、彼も英語ができないのに、いきなりカナダのバンクーバーに日本食レストランを出店して、バンクーバーで人気ナンバーワンのお店になっちゃった。
—— 海外に行こうと思うと、まずは英語を勉強してからって普通思うじゃないですか。
堀江 そういう人が多いですよね。でもね、僕が知る限りでは、海外で商売やって成功してる日本人の“英語しゃべれる”率は、めちゃくちゃ低い。
金城 そうかもしれないですね。結局、商売って数字のやり取りなので、アフリカでも地面に棒で数字書いたりとか。
—— そんなもんなんですか(笑)。
堀江 ヘタに英語とかしゃべれないほうがいいですよ。中学で習う程度の英語でも、とりあえず通じるんで。
金城 そう。しゃべれないと向こうも一所懸命話を聞こうとしてくれるし。僕は恵まれているほうで、一緒に行動してたコートジボワール出身の日本人が、8カ国語ぐらいしゃべれたんですよ。
堀江 自分以外にしゃべれる人がいるんですよね。よく「堀江さん英語しゃべれるの?」っていわれるけど、ややこしい話になったら通訳なり弁護士なり連れて行けばいいだけだから。資格の話と一緒で、僕はよく「資格不要論」みたいなので炎上するんですけど、弁護士なんて法科大学院制度になってから余ってるんだから。
—— そうですね。
堀江 「不動産業を始めるので宅建の資格を取ります」とかいう人もいるけど、宅建なんてバブルのときにみんな取ってたから。本当ですよ。うちの母親だって取ろうとしたくらい一般的な資格なんです。だからそういう資格を持ってる人が山ほどいるんだから、その人たちを雇えばいいんですよ。
—— とにかくやりたいことがあったら、いきなりやっちゃえばいいと。
堀江 そう。アメリカで商売したいけど自分は英語がしゃべれないっていうなら、しゃべれる人をアウトソーシングすればいい。
金城 語学に関しては、もちろんできた方がプラスにはなるんですけど、できないからといってマイナスにはならないなと。だいたいピンチになったら、相手が何を言ってるかなんとなくわかるんですよ。僕はアフリカで刑務所に入ってるんですけど、囚人たちの会話はほぼ理解できたので。
収監初日に雑居房のトップに
—— なんで刑務所に入ったのか、聞いてもいいですか?
金城 冤罪だったので、4泊5日で出てきたんですけど、四畳一間の雑居房に9人押し込められて……。
堀江 アフリカの刑務所は、入りたくねえなぁ……。
—— 堀江さんが言うと重みがありますね(笑)。
金城 僕と堀江さんはムショ仲間ですね(笑)。
堀江 どうですか、待遇は?
金城 幸運なことに、僕が収監されて3~4時間後には房のトップに立てたので……。
堀江 は? どうやって?
金城 僕がその四畳一間に9人目の囚人として入ってから、30分後くらいに看守に呼ばれて面会室に行ったら、うちのスタッフが段ボールいっぱいの食べ物を差し入れに持ってきてくれてたんです。僕がそれを抱えて房に戻ったら、みんなが「くれ」って言うからあげたんですよ。そういうことを何回かやったら「おまえ、すっげえいい奴だな」って。
—— 図らずも食べ物で懐柔できてしまった。
金城 あとで知ったんですけど、その刑務所は腐敗してて、食事が横流しされて僕らの房まで届かなかったんです。だから食べ物がほしかったら、外から差し入れしてもらうか、ほかの囚人から奪い取るしかなかった。そういう世界に、食べ物をみんなに分け与える人間が入ってきたので、もう聖人扱い。みんなから「ここが一番風通しいいから、どうぞ座ってください」みたいな。
堀江 でも、四畳に9人て、キツいねそれ。
金城 寝るときがキツかったですね。9人全員が横になれるスペースがないので、みんなで重なり合って寝るんです。
堀江 さっき冤罪って言ってたけど、いきなり逮捕されるんですか?
金城 いきなり警察が来て「証言はすべて揃ってる」って言われて。おそらくこれは「賄賂をよこせ」ってことだったと思うんですけど、僕はかなり抵抗したんですよ。よくわからない書類にサインしろって言われるのを一所懸命拒否したり。それが癇に障ったらしく「逮捕だ!」ってなって。
堀江 怖いですよね。
金城 でも、あとで弁護士に褒められたんですよ。もしそのよくわからない書類にサインしてたら、全部の罪を認めたことになって、完全に20年コースだったって。
次回『キャッシュで40億円の金鉱山を買いましたけど、なにか?』は4月25(月)更新予定
金城 拓真(きんじょう・たくま)
1981年沖縄県北谷町生まれ。海外(アフリカ)起業家。2003年よりアフリカビジネスを開始。現在ではアフリカ9か国(タンザニア・ザンビア・マダガスカル・ベナン・ニジェール・ブルキナファソ・コートジボワール・トーゴ・カメルーン)で50以上の企業経営(各種貿易取引、農場経営、不動産、タクシー、運送業、金鉱山、ホテル、中国製品の卸売、土地開発、広告代理など)に携わる。2012年には内閣国家戦略担当大臣から表彰されるなど、アフリカンビジネス第一人者の一人。
司会:加藤貞顕 構成:須藤輝 撮影:武田敏将 会場:ゲンロンカフェ
激変する世界、激安になる日本。世界中を巡ってホリエモンが考えた仕事論、人生論、国家論。
はじめに 世界は変わる、日本も変わる、君はどうする
1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか
2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉
3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉
4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文
[対談]ブラック労働で辛い日本人も、無職でお気楽なイタリア人も、みんなどこにでも行ける件
おわりに