指定のない「事実上の避難所」に2万人超が避難

指定のない「事実上の避難所」に2万人超が避難
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今回の地震の避難所の状況について、NHKが調べたところ、自治体が地域防災計画で指定していないのに、事実上、避難所となっている場所が、少なくとも170か所あり、2万人を超える人が避難していることが分かりました。この中にはスーパーの駐車場など、自治体が把握できていない場所もあり、どう支援を行き渡らせるかが課題となっています。
今回の地震では、19日午後の時点で熊本県内でおよそ9万5000人が避難しており、NHKは避難者が多い5つの市と町で避難所の状況を調べました。
その結果、地震が起きる前に地域防災計画で指定されていた避難所は合わせておよそ250か所だったのに対し、地震のあと、住民が避難してくるなどして、事実上避難所となっている場所が、熊本市で113か所、益城町で4か所、阿蘇市で9か所、御船町で27か所、大津町で19か所と、少なくとも172か所に上り、こうした場所に避難している人は合わせて2万人を超えることが分かりました。
地域防災計画外の避難所が多くなっていることについて、自治体や避難所で理由を取材したところ、収容しきれないほど多くの人が避難してきたことや、一部の避難所が地震で被害を受けて使えなくなったといった理由のほか、幼い子どもがいて、指定された避難所では周りに迷惑をかけるとか、ペットとともに過ごしたいなどといった、被災者側の事情もあるということです。
なかには、スーパーやパチンコ店の駐車場など、自治体が把握できていない場所もあり、エコノミークラス症候群になりやすい車の中で寝泊りしている人などの健康状態のチェックや、必要な生活物資の配給など、どのように支援を行き渡らせるかが課題となっています。

商業施設の駐車場や刑務所に

熊本市西区にある大型商業施設の駐車場では、多い日にはおよそ150台の車でほぼいっぱいになるほど、被災した人たちが避難してきています。
近くに住む内山和泉さん(28)は、今月14日から家族4人で駐車場での避難生活を続けています。
今回の地震では自宅のアパートの壁にひびが入るなどの被害が出たため、余震が続くなかで、不安を感じて避難を続けているということです。
指定されている避難所への避難も検討しましたが、家族の仕事が深夜まである日もあり、周りに迷惑をかけたくないなどとして、食料や飲料水などが入手しやすい大型商業施設の駐車場に避難したということです。
しかし、この駐車場は避難所に指定されていないため、市からの食事の配給や医師の見回りなどの支援はなく、避難生活が長引くなかで、内山さんは76歳の祖母の体調管理を心配しています。
内山さんは「商業施設の営業が再開して買い物もできますが、自治体からの支援が受けられないなかでの避難生活には不安を感じます」と話していました。

熊本市中央区にある熊本刑務所は、市から避難所の指定を受けていませんが、地震の後に近隣の住民たちが集まったことから、道場を避難所として開放しました。
刑務所には最も多いときでおよそ240人の被災者が集まり、今もおよそ110人が避難生活を送っています。
刑務所では、敷地内の井戸水を浄化して水を飲めるようにしているほか、食事は倉庫に備蓄してあった職員用の非常食などを1日3回提供しています。
また、大阪や京都など、他県の刑務所から派遣された刑務官など15人が専属で被災者の要望を聞いたり、ゴミの片づけをしたりしているということです。
熊本刑務所では、施設を災害時に避難所として提供するための協定を結ぼうと熊本市と調整していたということです。
夫と2人で避難した80歳の女性は「夫が足が不自由なので、近くの刑務所が避難所になり、すぐに来ることができて助かりました。これだけの災害のなかで水や食事もいただけていて、とても恵まれています」と話していました。
熊本刑務所の松原明彦総務部長は「想定外ではありましたが、多くの人が避難をして来られて、少しでも不安を和らげられればと、道場を開放しました。生活が落ち着くまで、引き続き力になれればと思います」と話していました。