2016年4月16日21時47分
熊本県を中心に続く一連の地震は、「経験したことがない」(気象庁)と関係者を驚かせている。震度7を記録した地震の後に、約16倍ものエネルギーを持つ「本震」が起きたほか、東隣の大分県でも地震が活発化したからだ。一体何が起きているのか。さらに東にある活断層への影響はあるのか。
■回数急増、建物の耐力低下
熊本県益城町で14日に震度7を観測したマグニチュード(M)6・5の地震に続き、16日未明には阪神大震災と同じM7・3の「本震」が発生。さらに東の阿蘇地方や大分県へとM5を超える地震の震源の分布が広がった。16日朝の気象庁の会見で、過去の例を聞かれた青木元・地震津波監視課長は「思い浮かぶようなものがない」と答えた。
M7・3の本震以降、地震の回数も急増した。気象庁によると、16日午前1時までの約30時間に観測した震度1以上の揺れは153回。その後、16日午後3時までの14時間で134回に及んだ。
地震の回数が増えれば、建物が倒壊する恐れも高まる。柱や壁に強い力が加わり、変形して戻ることを繰り返すと、ひび割れや隙間ができる。その結果、建物の外からの力に耐える力が落ちてくるからだ。
現地で調査を続ける福岡大の古賀一八教授(建築防災学)によると、14日の地震で傷んだ建物に16日の地震でさらに力が加わったことで傾いたり倒れたりしていたという。「前日まで柱が1本崩れていたという鉄筋コンクリートの店舗では3本の柱が大破して、倒壊寸前になっていた」
一方、16日の地震では阿蘇山周辺で起きた土砂崩れが住宅を巻き込んだ被害をもたらした。付近は溶岩でできた岩盤の上に、マグマのしぶきが冷えて固まった「スコリア」と呼ばれる数ミリから数センチの黒い軽石が積もった一帯。もともと土砂崩れが起きやすい。
伊藤英之・岩手県立大教授(自然災害科学)は現地の状況について「スコリアの層が崩れる『表層崩壊』の可能性がある」と指摘。スコリアや火山灰が積もった場所が雨で崩れると、土砂と水が混ざり、土石流を起こす恐れもあるという。
M7・3の本震を起こした断層の分析も進む。
国土地理院の観測で、震源に近い熊本市の基準点が東北東方向に約75センチ移動し、その東にある南阿蘇村の基準点は南西方向に約97センチ移動していた。最初の地震を起こした日奈久(ひなぐ)断層帯の北にある布田川(ふたがわ)断層帯が3・5メートルすべったと推定された。担当者は「内陸直下地震では近年にない大きさだ」と説明する。
■北東・南の活断層に「影響も」
今後懸念されるのは、さらに別の活断層が動き、大きな地震を起こす可能性だ。震源域の北東側には、四国を横断し紀伊半島に延びる長大な活断層、中央構造線断層帯が連なる。南西側にも、日奈久断層帯の残りの部分がある。
林愛明(りんあいめい)・京都大教授(地震地質学)は「今回ずれた断層の延長線上にひずみがたまり、大分県側でM7級の地震が起きることも否定できない。四国側の中央構造線が動く可能性もある」と話す。
地震が起こると、震源になった断層にたまっていたひずみは解消されるが、逆にその周囲や延長線上にある断層のひずみが増えることがある。その影響は、離れた地域にも及ぶ。
東日本大震災の直後には、長野県や静岡県でM6級の地震が起きた。活断層による内陸の地震でも、1992年の米ランダース地震(M7・3)の3時間後に、40キロ離れた地点でM6・4の地震が発生した例が知られている。
今回、地震が起きている領域と重なる大分県の別府―万年山断層帯でも、この断層が動いた慶長豊後地震(1596年)で、前後数日に愛媛と京都で大きな地震が起きた記録がある。中央構造線断層帯などの活断層の調査で、これらに対応するとみられる地層のずれも見つかっている。
ただ、四国の中央構造線断層帯の平均活動間隔は千年以上とされる。岡田篤正・京都大名誉教授(変動地形学)は「前回の愛媛の地震から約400年しかたっておらず、ひずみがたまっていないとみられる。四国の中央構造線断層帯の活動が誘発される可能性は低い」とみている。
加藤照之・東京大地震研究所教授は、ほかの断層への影響について「何ともいえない」としつつも「気持ちは悪い。影響もあるかもしれない」。震源が広がる北東方向だけでなく「南にも破壊が延びていく可能性はある」と警告する。
■南海トラフ地震「誘発低い」
今回の地震が、九州から東海地方の沖合で想定されている南海トラフの巨大地震の発生に影響することはあるのか。
今回起きたような内陸の「活断層型地震」は、陸側のプレート内部で起こる。震源が浅いため、小さい規模でも局所的に大きな被害を出すことがある。
これに対し、南海トラフ地震は「海溝型」で、海側のプレートが陸側のプレートの下に沈みこむ場所で起こる。規模が大きく、広い範囲で大きな揺れや津波被害につながる。
西村卓也・京都大防災研究所准教授(地震学)は「今回の地震が南海トラフ地震を誘発する可能性はあまり考えられない。距離が離れているうえ、今回の地震はM7級と相対的に規模が小さく、影響は非常に小さいとみられる」と話す。
ただし、南海トラフ地震は約100年周期で繰り返されている。南海トラフ地震の前後数十年は、内陸の地震活動が活発化することが知られている。数十年単位でみれば発生は近づいており、備えを進める必要性に変わりはない。
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