まいど!
皆さんはヨーグルト食べてますかー!?
僕はヨーグルトも好きですけど、乳酸菌飲料も大好きです。
ん?違い?それも今日話しますよ!
昔はカルピスジャンキーでしたが、今はヤクルト!
カルピスは飲み過ぎて飽きた…。
ところで、
ヤクルトとピルクル…
どちらも飲んだことあります?
同じような容器に入って、同じような味で、同じような効果?
でもヤクルトの方が単価が高いような…
この2つの差って何なんでしょう?
ググってみると色んな情報が載ってますが…
今回は、食品メーカーの中の人として、『ヤクルトとピルクルの違い』を風味、健康効果、企業体質とマーケティングの面から解説していきます!
【目次】
- はじめに:乳酸菌飲料とは
- ヤクルトとピルクルの【成分解析】
- ヤクルトとピルクルの【風味評価】
- ヤクルトとピルクルの【健康効果】
- 【企業体質】で見るヤクルトとピルクル
- 【マーケティング】で見るヤクルトとピルクル/なぜヤクルトは高いのか
- おわりに
はじめに:乳酸菌飲料とは
このテーマは下の記事にもちょこっと書いてあるけど、悲しいほど読まれなかった!
もう1回簡単に解説しますね!(白目)
乳製品は、乳脂肪と無脂乳固形分(水と脂肪以外の乳成分)の割合、そして乳酸菌の有無でカテゴライズされます!
2つ合わせて乳固形分と言ったりする。
ちなみに牛乳から乳脂肪を回収したのが生クリーム、乳脂肪を除いて乾燥粉末にしたのが脱脂粉乳だ!メーカーはこの2つで乳製品を成分調整します。
で、ヨーグルト(カテゴリ的には発酵乳)と乳酸菌飲料の違いですが、ヤクルトやピルクルは正式には『乳製品乳酸菌飲料』というジャンルです。
詳しくは以下の表!
※菌種は乳酸菌または酵母なら可、菌数は1mLあたりの数
こんな感じ!
ちなみに、普通の牛乳は無脂乳固形分8.3%、脂肪3.5%程度。牛乳をそのまま乳酸菌で発酵させれば発酵乳(≒ヨーグルト)の規格になります。これをミキサーで液状にしたのが飲むヨーグルトです*1。
表の赤字部分の通り、ヤクルトとピルクルは飲むヨーグルトより乳成分が薄いです。
薄いと言っても、牛乳を薄めて作るのではなく、水に脱脂粉乳と糖分を加えて乳酸菌で発酵させて作ります。
成分が薄い分、サラサラでジュースに近い口触りになりますね。
ちなみに乳製品乳酸菌飲料(殺菌)にあたるのがカルピス。常温保存できるのは殺菌済みだから。
乳酸菌量を確保しつつ、さらに乳成分が低いのが『乳酸菌飲料』ですな。代わりに別の成分が濃かったりする。
ヤクルトとピルクルの【成分解析】
さーて、僕も食品研究者のハシクレ。
成分解析すれば両者の違いなんて簡単に解説できますよ!
表に直すと…
ヤクルトは『Newヤクルト』 を選択
あんま変わんねぇ!
専門家ピーンチ!
とは言いますが、成分で唯一差があるのが炭水化物。
これは、牛乳(脱脂粉乳)由来の乳糖と添加する糖分の合計です。ヤクルトの方が値が高いので、甘味度を高く調整していることがわかります。カロリーの差はココ!
未記載の乳成分に差はありません(無脂乳固形分3.1%で乳脂肪0.1%)。
また、どちらも原料はブドウ糖果糖液糖、砂糖、脱脂粉乳、香料の4つです。
これはヤクルトの並びですが、ピルクルではブドウ糖果糖液糖より砂糖が先に書かれていますね。
ピルクルはブドウ糖果糖液糖より砂糖の割合が高いためです*2。
糖の種類は甘さと味に影響します*3。
あとは乳酸菌の数と菌株が違いますね。
この点については詳しく後述します。
ヤクルトとピルクルの【風味評価】
成分的にはほぼ同じなので、食レポっていうか、ガチで風味評価(業界的には官能評価という)してみました。
評価者1人の統計的に無意味なデータだけど、僕の評価はこんな感じ。
グラフにすると…
成分の項目で推測したように、ヤクルトの方が少し甘く、酸味も強いように感じました。発酵時間を長めに調整してるのかな?
ただし、冷蔵保存でも乳酸菌は生きてる=酸を出すから、時間が経つにつれ、生きた乳酸菌を含む乳製品はどんどん酸っぱくなるんですよね*4。だから作りたてで評価すべきかも。
ピルクルの方がすっきりしていて飲みやすい印象。悪く言えば少し薄いかな。量を飲めるのはピルクルですね。
ちなみに、ガチの開発現場では、20個以上の指標で評価したりします…。
【食品メーカーで商品開発をしている僕に起こった変化10選!】の記事もよろしくね!
乳酸菌は同じ種類でも株の違いによって、発酵後の風味や酸味が大きく変わるんだ!
だから開発の時は色んな乳酸菌でヨーグルトを試作するのです。
ヤクルトとピルクルの【健康効果】
超エリート乳酸菌シロタ株の圧倒的研究データ
【参考】論文発表 | ヤクルト中央研究所、プロバイオティクス製品搭乗の歴史的背景と期待される今後の展開(2011)、その他学術論文など
ヤクルトは(故)代田稔博士がラクトバチラス・カゼイ・シロタ株という乳酸菌の育種に成功したのが起源です。
以来、派生商品はあれど、この1株に注力して商品開発をしてきた故のブランド力ですね。
この株は、正式には、Lactobacillus casei という種類の乳酸菌から、最もエリートの1株を純粋培養し、育て上げたものです。
ちなみに、ピルクルの菌もLactobacillus casei のNY1301株という乳酸菌。同じ種類で違う株ですね。
同じ種類で違う株…
人間もHomo sapiensという種類の生物ですが、頭脳や運動能力に大きな幅があります。
微生物の『株』にはこれ以上の差があるのです。同じ種類でも、食べるものが全然違ったりします。
人間で例えるなら、
『おれは酸素で呼吸するけど、お前は無酸素でも土を食えば生きていけるよね』
くらいの差があったりします。
『株』のバリエーションはハンパないのです。
話を戻します。ヤクルトのシロタ株で現在解明されている主な健康効果ですね。
まず、機能性ヨーグルトでメジャーな効果は網羅しています。
プロバイオティクス、免疫向上、便秘解消、悪玉菌減少、ビフィズス菌増加…
このあたりはヒト試験で豊富なデータが発表されています。
加えて…
- (マウス)免疫細胞の活性化によるインフルエンザウイルス感染の耐性向上
- (マウス)ピロリ菌の増殖抑制
- (細胞)免疫細胞(NK細胞)の活性化によるガン化抑制
- (細胞)抗腫瘍、腫瘍転移の抑制作用
- (細胞)シグナル伝達制御による腸管炎症の改善
などが動物実験、細胞レベルでは解明されているのです…。
まぁ、元乳酸菌の最前線で研究していた身で言えば、
ヤクルトの乳酸菌はガチ
ってことです。
ステマじゃないですよ。僕は新卒でヤクルト落ちたので(滝涙)
ちなみに、カゼイ・シロタ株の関連論文は『医学系』分野が多いのです。この点は後述。
ピルクルの乳酸菌は『未知数』?
【参考】日清ヨークのカゼイ菌(NY1301株)のひみつ、日本食品化学工学,vol.48,No.9 (2001)など
ピルクルの乳酸菌カゼイ・NY1301株も、ヤクルト同様、特定保健用食品(トクホ)を満たす機能を発揮します。
トクホについては以下で詳しく解説しています。
ただ、カゼイ・シロタ株と比較すると、圧倒的に健康効果に関するデータが少ないというのが現状です。
健康効果が十分期待できる乳酸菌ですが、シロタ株同等かは、良く言って『未知数』ですかね。
研究に要した時間(歴史)と、企業体質が違うので仕方ないですが…。
【企業体質】で見るヤクルトとピルクル
実は『超研究系』メーカーのヤクルト
参考までに、研究費と売り上げのデータを見てください。
私はゆとりずむの記事みたいに原価・財務厨ではないので、これ以上深入りはしません。
参考:各企業の2015年度決算短信、有価証券報告書など
表のようにヤクルトの研究開発費は同規模の食品メーカーの中では群を抜いています。
売上に対する比で見れば、味の素や大手ビールメーカーすら凌ぐのです。
また、ヤクルトが一線を画すのが、研究開発費の多くをシロタ株を初めとする『乳酸菌』に投入できることです。
ヤクルトも医薬品や化粧品に進出していますが、医薬品であれば整腸薬や便秘薬、化粧品であれば乳酸菌の発酵液を用いた保湿剤など、乳酸菌という軸から派生しているのです。
この点は、ヤクルト、及び乳酸菌カゼイ・シロタ株のブランド構築に大きく寄与しています。
日清食品ホールディングスと日清ヨーク
対して、ピルクルの製造元である日清ヨークですが、日清グループ(日清シスコとか)の研究開発は基本的に親会社の日清食品HDが担っています。
グラフの通り、日清食品HDの研究開発費は約64億円(対売上1.5%)です。
食品メーカーでは十分高い方ですが、ヤクルトや他の大手メーカーと比較すると物足りない部分がありますね*5。
加えて、日清HDでは即席麺、冷凍食品、シリアル、そして発酵乳と扱うジャンルが多岐にわたり、ピルクル関連に投入する研究費は決して多くありません。
ヤクルトに研究データで大きく劣るのは必然なのです。
【マーケティング】で見るヤクルトとピルクル/なぜヤクルトは高いのか
【参考】セグメント情報 | 財務・業績 | IR情報 | ヤクルト本社、ヤクルトは、なぜ新興国市場で強いのか|ダイヤモンド・オンライン
ヤクルトは元々『医薬品』だった!?
代田博士は元々『予防医学』に役立つ健康効果に特化した乳酸菌としてシロタ株を見出しました。1930年代の話です。
今でこそ嗜好品の要素が強いですが、当時は栄養面や衛生環境が劣悪でした。
そこに役立つ乳酸菌飲料がヤクルトのルーツです。
ヤクルトはこの歴史を海外、特に発展途上国で繰り返そうとしています
【リンク:ヤクルトは、なぜ新興国市場で強いのか|ダイヤモンド・オンライン】
国内市場はシュリンクしつつありますが、ヤクルトの売上の約37%、営業利益の約65%(!?)を海外事業が担っています。
海外では完全に『健康食品』としてのブランドを確立しており、物流・販売網が未熟な途上国では『ヤクルトレディ』という制度は非常に効率的な売り方なのです。
ピルクルのコンセプトは安くてゴクゴク飲める『味』
対して、ピルクルの歴史は1993年から。1935年発売開始のヤクルトと比較するとかなりの新人です。
成分や菌種からヤクルトを意識していることは間違いないですが、根本的にコンセプトが違うのです。
『甘さを抑えてゴクゴク飲めるコクのある乳酸菌飲料』
これがピルクル発売のコンセプトであって、『医薬品』ベースのヤクルトとは向く方向が違います。一番の売りは『味』なのです。
同じ乳酸菌飲料でも、ヤクルトは健康特化です。
対して、ピルクルは量を飲む乳酸菌飲料ヘビーユーザー向けの嗜好品と言ってよいでしょう。 もちろん健康効果はありますが。
両者の価格差もこのコンセプトの差によるものでしょう。
ピルクルは健康効果で勝ちにいかず、安さと味でヤクルトとの差別化を狙ったのです。
おわりに
ヤクルトとピルクルの違いを徹底的に解析してみました。
ちなみに、文章の組み立て方でバレるかと思いますが、僕は完全にヤクルト派です笑
というより、僕は整腸のためにヤクルトを飲んでるので。
記述の通り、目的が違うんですよ。そもそも味もヤクルト派だし。
でもピルクルも好きですよ!
皆さんはどっち派ですか?
迷った時は是非この記事を参考に!
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みるおか