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キドクアリ-マンガ感想ブログ

漫画の感想を書いていきます。

ディスコミュニケーション漫画としての「トクサツガガガ」

マンガ感想 トクサツガガガ

トクサツガガガは、隠れ特撮オタクである主人公、仲村叶(かの。26歳女性)の日常を描くコメディ。f:id:kidoku_ari:20160416110021j:plain
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トクサツガガガ/丹羽庭 第1巻
↑特撮(特に戦隊ヒーローもの)オタクの主人公



特撮オタクをテーマにしているので、特撮に詳しくないと楽しめないかというと、そうでもありません。
前提知識は全く必要なく、小さいころに戦隊ヒーローを見ていた記憶がうっすらあるだけの人でも十分楽しめます。


その要因の1つは、あるあるネタ
特撮オタあるある、隠れオタクあるある、非リア充あるある、ずぼらあるある、など色々な角度からのエピソードがあり、どこかしらの点で共感するところがあるはずです。

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同第1巻
隠れオタク、非リア充あるある:カラオケで困る



また、特撮から学んだ教訓を日常に生かすエピソードやオタク仲間とのエピソードなど笑えたり、共感できたりする話が盛り沢山です。



それらもそれぞれ十分面白いんですが、中でも印象深いのは、周囲の人間とのコミュニケーションや主人公の母親との関係を巡るエピソード。

隠れオタクとオープンなオタク、非リア充リア充、大人と子ども。
この漫画では、様々なグループ間のコミュニケーションの断絶・行き違い・困難さを描いている部分があります。
そういったことを主人公や周りの人間たちが乗り越えていく。
その中では、歩み寄ることの大切さを描くとともに、それでも分かりあえない部分、妥協する部分をきっちりと描いています。
きれいごとばかりではなく、現実的な妥協点を提示している点が素敵なところだと思います。



中でも印象的なのは、主人公とその母のエピソード。
主人公の母親は、娘に女の子らしく育って欲しいと強く願っており、その対極にある特撮を認めません。
子どものものを勝手に燃やしたりするあたり、「毒親」的なところがあります。
(母親とのエピソードで象徴的に出てくるアイテムが「毒濁刀」という名称なのも偶然ではないかもしれません。)

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↑主人公にトラウマを植え付けた「『てれびくん』焼きイモ事件」
同第1巻、第2巻


そんな母親と主人公の関係は、主人公が成人してからも続いており、主人公は母親への対応に四苦八苦します。
こういった展開だと、母親が一方的な悪者に描かれたりだとか、ご都合主義で母親が改心したりしがちです。
しかし、このマンガでは、そんなことはありません。
悪い人ではないながらも考え方が違う母親と、どのように渡り合っていくかが描かれていきます。
それは、妥協であったり、その場しのぎであったりするけど、主人公なりの精一杯であり、現実的な解決策だったりするのです。

いまだ母親とのエピソード群は決着がついていませんが、この先どうなるかもたのしみです。