「無事を祈る」…学生向け下宿屋が被害 南阿蘇
16日午前1時25分ごろ、熊本県熊本地方で発生した最大震度6強の地震は、14日以降に続く地震の「本震」と気象庁から発表された。学生向けのアパートが倒壊し、土砂崩れが発生するなど大きな被害があった南阿蘇村。近くにある東海大学阿蘇キャンパスに通う学生が多く住む河陽地区のアパート「グリーンハイツ」は、1階部分がつぶされ、建物の中から救助を求める声がする中、消防隊員らが救出活動を続けた。
東海大農学部4年、鷲頭(わしず)朋之さん(22)はアパートの下敷きになったが、無事救出された。父勇人さん(62)=福岡県久留米市=は不安で現場に駆けつけたが、既に救出後で、病院から「無事です」と連絡を受け、胸をなでおろした。
阿蘇キャンパスには農学部と大学院があり、大学のサイトによると、2016年4月現在で約990人の学生が在籍している。83%が自宅外から通学し、キャンパスの南側に56棟のアパートと下宿が集中。大半が木造2階建てという。
下宿経営の女性(65)は「この辺りの下宿屋はほとんど被害を受けた。我が家も倒壊したが、預かっている学生さんたちが心配して来てくれたから何とか家から出られた」と振り返った。多くの学生は近くにある小学校のグラウンドに避難しているという。
東海大は被害の一報を受けて16日朝、対策本部を設置し、学生の安否と被害状況の確認を急いでいる。大学職員の一人は「とにかく学生の無事を祈るばかりです」と話した。
学生アパートと同じ河陽地区に住む会社員女性(51)は「近くの阿蘇大橋が全くなくなっていた。土砂で下に落ちてしまったのだと思う。生き埋めになっている人がいるという情報もあるので、なんとか助かってくれれば」と声を震わせた。
「『ミシミシ』、『ギシギシ』と音をたてながら30秒ぐらい揺れた」。同じく河陽地区で、妻と2人で暮らす村田稔さん(63)は地震の状況をそう語る。
自宅や納屋は横に傾き、いつ倒壊してもおかしくない状況。自宅内は棚や冷蔵庫などが倒れ中身が散乱し、すぐさま、自宅外に逃げ出したという。
その後も、「バリバリ」と大きな音が耳に響いた。「土砂崩れか」と警戒したが、周囲は真っ暗で確認はできない。懐中電灯の明かりを頼りに、道に倒れた木々やブロック塀をよけながら「命からがら」近くの公民館に避難した。だが、公民館も損壊していたため、外で体を震わせ皆で肩を寄せ合いながら不安な一夜を過ごし、早朝、近くの山を見上げると土砂崩れの痕があった。
村内で住宅の下敷きになった女性(61)の救出活動を見守った母親(80)は「親より先に亡くなってしまわないで」と祈った。【野呂賢治、宗岡敬介、志村一也】