日本映画を取り巻くここ2、3日の大騒ぎに心底うんざりしているので、この5年で面白かった日本映画をあげてすっきりすることにする。順不同。
海街diary
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2015/12/16
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去年のマイベスト。微細な心理描写、響きあう群像劇、ドラマそのものではなく、ドラマが起きるかもしれないという予感で引っ張る高度なストーリーテリング。役者の輝きを引き出す是枝マジック。334分くらい見たいと思っていたところ128分で終わってしまった。生まれ変わったら広瀬すずになりたい。
百日紅
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2015/11/26
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去年のベストアニメ。こんな作品が劇場で公開されていることが、日本映画の芳醇さの証左であると思う。アンチカタルシス的なドラマ構成、キャッチーでない絵柄は好みが別れるところだと思うけども、でっかいスクリーンで見れて眼福眼福、ぼくの細胞が喜んでいた。
凶悪
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実際にあった「上申書殺人事件」という凶悪殺人事件を、リリー・フランキーとピエール瀧という傑物ふたりを並べて映画化するというすごい企画。凶悪殺人鬼ふたりに相対するのは、山田孝之! ものすごい大胆な三幕構成をとっていて、創作的な観点からも興味深い。
恋の渦
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2014/06/04
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『モテキ』『バクマン』の大根監督が、超低予算で作ったヤンキー群像劇。金などなくとも、アイデアとガッツでこれほど芳醇な映画を作れるのだということで、創作というのは面白い。大根監督はこういうものも作れるし、予算のついたプロジェクトも回せるしと走攻守揃ってる感ある。
渾身
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隠岐諸島に伝わる古典相撲を軸に、細密な人間ドラマが描かれていく。古典相撲の独特の世界、隠岐諸島の美しい自然、忘れがたい余韻を残す作品。この映画がなかったらこの世界のことは多分死ぬまで知らなかった。創作とは異世界への窓。
舟を編む
- 発売日: 2013/11/26
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石井裕也の名前を決定的なものにした一本。辞書を作るという地味な話を丹念に描いていく。主人公ふたりがかなり浮世離れしたキャラクターなのだが、松田龍平、宮崎あおいのふたりが素晴らしい演技で原作に答えている。脇の人間ドラマに至るまで作りこまれていて、実に様々な切り口で味わえる作品。
地獄でなぜ悪い
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- 発売日: 2014/03/12
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園子温の作品では、いまのところこれが一番好き。何もかもが過剰・過剰・過剰。にもかかわらずものすごく地に足の着いた作品でもあって、こんな作品が作れるのは世界にも園子温しかいないと思う。
かぐや姫の物語
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
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制作費50億を投入されて作ったジブリ渾身の一作。高畑勲のビジョンがようやく銀幕の上で結実したと言えるかもしれない。美しい人間賛歌であって、胸を締め付ける悲劇であって、見ている最中感情がぐわんぐわんと揺さぶられて数日立ち直れなかった。それ以来、未だに見返せていない。
へんげ
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- 発売日: 2012/07/11
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ある日起きたら身体の一部が……というカフカ『変身』の導入から、あれよあれよとエスカレートしていく実験的な傑作。話をとことんエスカレートさせていくと、ジャンルの枠を壊してしまうという好例。
サイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者
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サイタマノラッパーシリーズの完結編。脇役だったマイティを主人公に、地獄のような日々を描いていく。創作を志すものが味わう屈辱と地獄。そして、闇の奥で明滅する、あまりにも美しい光。
先生を流産させる会
- 出版社/メーカー: キングレコード
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なんか判らないが炎上していて、「観てから言えやボケが」とかTwitterで罵詈雑言を書いていたら変な人に特攻されて毎日ネットバトルをしていたという点でも思い出深い作品。観てから言うと、傑作でありましたな。
グスコーブドリの伝記
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宮沢賢治作品の映像化として、おそらく最も成功したであろう杉井ギサブロー監督の『銀河鉄道の夜』以来、宮沢・杉井タッグが取り組んだ第二作。『銀河鉄道の夜』のような幻想味が全編から溢れており、非常に印象深い。ラストの唐突さも原作を再現していて、この辺の思い切りのよさは凄い。
ツレがうつになりまして。
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うつ病の夫、それを支える妻を描いた人間ドラマ。いまや顔面相撲の大横綱として活躍している堺雅人さんですが、彼の演技の幅が本当に広いのだということを認識できる。いまでこそうつ病への認知も進んできたけども、これが公開された4年前には、うつ病への書きかたが非常に誠実だなあなどと思った。
桐島、部活やめるってよ
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おそらくは2010年代のベスト邦画でアンケートを取ったら、これが1位になるでしょうね。本命中の本命、大傑作。ローエグリンのシーンではたっぷり泣いた。あらゆる要素、あらゆるアンサンブルがガッチリと決まって、今後の学園群像劇を作るに際してはこれが当面の間のメルクマールになるはず。
アウトレイジ・ビヨンド
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仕事中にBGMとして映画を流していまして、これは冗談抜きで100回は見たと思う。冒頭からすべての台詞を嫁さんの前で詠唱するというプレイを行っていたら嫌がられた。作家性に依拠していた北野武が、その技術に依拠して作品を作るようになったという点でもエポックな作品。塩見三省が輝いている。
黄金を抱いて飛べ
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髙村薫 × 井筒和幸という、ぼく的には夢のようなコンビによる作品。銀行強盗のハウツーを徹底的にリアルに描いていて、ディティールの作りこみが非常に素晴らしい。世間を仰天させた傑作『ヒーローショー』と並んで、近年の井筒作品の代表作だと思う。
その街のこども
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これ見たの、震災の1ヶ月前なんだよな……。阪神大震災をめぐる、極めて小さなロードムービー。人間が抱えるにはあまりにも大きすぎる悲劇に、正面から向かい合う、あるいは向かい合おうとする小さな人間の物語。森山未來と佐藤江梨子のふたりがとてもいい。
さんかく
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駄目男、その彼女(若干メンヘラ気味)、彼女の妹(天然悪女)の三人をめぐる恋愛模様の物語。MVPは高岡蒼甫で、モテ期が到来してるじゃんと勘違いしながら痛い行動を取り続ける様は、なんだか自分の駄目なところをつきつけられている感じがした。
監督失格
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早逝したAV女優、林由美香の死を巡る物語。最愛のミューズの死に立ち会ってしまった作家の混乱、迷い、苦悩がすべて作品にぶち込まれている。それを振り払うには、ここまでしないといけないのかと慄然とするクライマックス。映画館で観てしばらく立てなかった。
まだたくさんありますがとりあえずこんなところで。今年も面白い映画に出会えますように!