小説はパズル、ガチャは戦。

2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビューしたSF作家の柴田勝家さん。明日24日に新作『クロニスタ 戦争人類学者』が発売するのを記念して、読者の皆様からの質問&柴田さんの回答を連載! あわせて4月1日に敢行し、皆様からエイプリルフールと誤解された書店訪問時の写真も掲載します。
(質問の募集は締め切らせていただきました)


柴田勝家(しばた・かついえ)
1987年東京都生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻所属。
外来の民間信仰の伝播と信仰の変容を研究している。戦国武将の柴田勝家を敬愛する。


Q.自身を動物に例えると何だと思いますか? 私は秋田犬だと思います。 (日浦さんからの質問)

A.秋田犬、いいですよね。ワシはイヌ派です。それはそれとして、自分を動物に例えるっていうのあんまりしたことなかったですね。まるでアイドルへの質問みたいです。ワクワクしますね! そして自分を動物に例えるなら、やっぱり猛獣がいいです。でも加藤清正がトラを倒したという伝説もあるし、トラはやめておこうと思います。クマ……、クマがいい。でも待ってくださいよ、ヒグマは強すぎていかんです。アイツは怖い。ツキノワグマ……、いや、まだ怖い。できることなら危険性が一番低いのが良い。そう、例えるならマレーグマ。ワシはマレーグマだ……! で、どんなものかと改めてグーグルで調べたら、「マレーグマ きもい」っていうサジェストが出てきました。

新刊を手に進軍する勝家殿


Q.「ガチャの向こうに真理がある」ともおっしゃっていた勝家殿にお尋ねします。 ガチャを引くとき、一回一回気を込め呼吸を整え、少しずつ課金しながら引きますか、それとも一気に課金力を投入し、迷いを捨て怒涛の勢いで力尽きるまで一気に引きますか。 ちなみに私は後者のやり方です。なお出なかったときのどうしようもない負け戦感はなかなかのものです…。 (閑野さんからの質問)

A.ガチャはまさしく戦場でありますれば、兵站(預金残高)を整え、戦略的、あるいは戦術的に臨むことと相成りましょう。モバマスの月末ガチャを例にすれば、まずは3000円程度の課金で前線を駆け上がりSR出現率10%(くらいの)チケットを確保します。これはガチャの要衝なれば、後の戦況を大きく左右するは必定。ここで目玉アイドルを引ければ撤退し、勝利の美酒を味わうこととなりましょう。されど戦場の動きは千変万化。その勝利すら、運営の掌の上である可能性もまたあり、深追いすれば忽ちに伏兵(通常レア)に包囲される……。ここは動きを潜め、各地の戦況他の人のSR報告)を確認した後、再び攻勢をかけることでしょう。よってワシは少しずつ課金派です。 ただし成宮由愛ちゃんがガチャで出た時は全力で引きました。総力戦です兵站も領内からかき集め、そりゃもう一揆が起こるレベルで引きました。


井の頭公園でスワンボートに乗りたかった勝家殿


Q.小説やそのプロットを書いていて、詰まった時はどうしていますか。紙とか食べるんですか。 (としんさんからの質問)

A.誰かと思えば、大学時代の文芸部の同期じゃないか。あの頃は一緒に紙食べてただろう。

 考え事をしていて詰まった時は、人と話すことが多いですね。何気ない会話の中にもヒントはあるもんで、後は単純にアドバイスを求めることもあります。そういった環境にない時は、書こうとしている題材に近い本(学術書や新書)を読むことが多いです。元々、ワシの小説は小ネタを積み重ねて書いている節があるので、新しい素材を見つけると、それをいかに組み込むか考えます。パズルやプラモデルを作るのに近くて、今まで見つからなかったパーツを発見することで、それまで詰まっていた部分を上手く繋げられることがあります。考えることに詰まったら、また別のことを考える、っていうと、なんだか解消できてないような気もしますがね。あと、この質問の答えもちょっと詰まったんで紙食いながら書いてます。

新宿コクーンタワーと勝家殿


Q.勝家先生は民俗学をご研究中とのことですが、昔でいえば折口信夫も小説をものし、現在でも上橋菜穂子さんなど、民俗学(人類学)を研究しながら小説を発表している方がおられますよね。そこで、学んだことを活かすという点で、「小説(特にSF)だからできること」について何かお考えがあればお聞かせください。 (あと、こっそりお聞きしますが、柳田・折口をパロった某ア○ガミSSレビューをご存じでしょうか) (じぇいさんからの質問)

A.民俗学・文化人類学と小説というのは、相性はいいのかもしれませんね。ただ一応、小説に使うネタ的な民俗学的知識と学問上での民俗学は分けて扱っていて、多分、ワシの研究内容の方は地味でつまらないかもしれません(笑)。しかしながら、学んだことを大いに描けるというのは小説の強みでもあります。

 たとえば、今回の『クロニスタ』では従軍する文化人類学者という題材で、アメリカ陸軍の「HTS(Human Terrain System)」を取り上げました。これも文化人類学を学んでいる中で知ったことで、まだまだ日本国内では実情などが把握できない題材だったと思います。ワシとしても、今作では未来のものとして少し変えて描きましたが、現代におけるHTSを詳細に調べて、改めて別の形で取り組みたい題材であります。

 ところでワシは人文科学の立場からSFを書いているのですが、人間の物語(例え主人公が人間でないとしても)を描く時に、これまで学んできた色々なものが有機的に繋がっているように感じています。SFは人間という存在を問い直す機会を多くくれます。それは民俗学や文化人類学で現れる問いかけとも一致しています。ワシにとっては小説と学問を通じて、常に人間とは何かという問いに答えようとしているのかもしれません。(こっそり答えますけど、某アマ○ミSSレビューは知らなかったのでチェックしました。柳田翁自由すぎる!)


勝家殿のサイン


Q.気が早いかもしれませんが、今後の執筆活動の展望などを教えてください。個人的には、吉上先生のようなノベライズ作品も読んでみたいです。例えば、アイマスを題材にしたSF小説とか……。 (ゐづみさんからの質問)

A.今後の展望についてですね! 実は今までの二作が文化人類学的なものだったので、今度こそ民俗学的なものを書ければいいな、と思っております。ようやく日本を舞台にできるかもしれません。あとは『クロニスタ』でも一作では書ききれなかった題材があったので、それを活かせる形の何かを出せればと。

 あとは作品は関係ないのですが、とにかくアイドルを書きたいですね。アーニャみたいな子、書きたいですね! ノベライズ作品については、精一杯頑張りますが、ワシの書き方でどうなってしまうのか不安でもあります……。ワシの一番好きなノベライズが野崎まど先生の『ファンタジスタドール・イヴ』なので、もう何が起こるか自分でも想像がつきません。でも正直、ごちうさのノベライズだったらいつでもバッチコイですよ! あとアイマスを題材にしたSF小説ですか……。すごいやりたい……、むしろどっかで勝手に……。げふんげふん。早川さん、問題あったら早めに言ってくださいね!

戦国メイド喫茶に帰城する勝家殿



『クロニスタ 戦争人類学者』(ハヤカワ文庫JA)

生体通信によって個々人の認知や感情を人類全体で共有できる技術「自己相」が普及した未来社会。共和制アメリカ軍はその管理を逃れる者を「難民」と呼んで弾圧していた。軍と難民の間で揺れる軍属の人類学者シズマ・サイモンは、訪れたアンデスで謎の少女と巡り合う。黄金郷から来たという彼女の出自に隠された、人類史を鮮血に染める自己相の真実とは? クラウド時代の民族学が想像力を更新する、2010年代SFの最前線!


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コメント

prisonerofroad "でも正直、ごちうさのノベライズだったらいつでもバッチコイですよ! あとアイマスを題材にしたSF小説ですか……。すごいやりたい……、" / #SF #book 約1時間前 replyretweetfavorite

qattuie 今回も刊行記念の質問企画が更新されましたぞ!課金とアイドルについてしか答えてない気がしてきたぞ! https://t.co/ydstLMqsBo 約5時間前 replyretweetfavorite

Hayakawashobo ガチャやアイドル、民俗学や新作のことを話します。紙も食べます 約8時間前 replyretweetfavorite