1年程前に購入し読んだ本。
内容は宇宙誕生の仮説から、今議論されている最新の宇宙論まで幅広く、丁寧に解説されています。
宇宙物理学って未知で複雑な世界すぎて、知ってもよくわからないだろうなぁと思っていました。
しかしこの本は宇宙論の基礎や観測方法、エネルギーの種類などを非常にわかりやすく、優しい言葉で丁寧に説明してくれます。
ゆっくりと読み進めれば、そうだったのか!と初めて知ることのできる興味深い知識が沢山あると思います。
ビックバンの謎、最新の観測方法、宇宙エネルギーの説明
前半はビックバンなど宇宙誕生の謎と観測方法について書かれています。その後、宇宙の仕組みやエネルギーの謎について説明されます。
ダークマター以外にもダークエネルギーという正体不明すぎるエネルギーが真空中に満ちているそうです。これらの質量エネルギーを活用できれば、エネルギー問題も一気に解決する可能性もあるとか。よくわからんけど(´Д`)ほげ~
私が一番興味があったのは後半の章、本のタイトルの通り、宇宙に外側はあるのか?という部分です。
マルチバース、量子論の解釈問題の謎
マルチバースや量子論について、研究者の間で今議論されている仮説や可能性についてとても詳しく書かれています。
特に量子論の解釈問題についての議論がすごく不思議で興味深い
量子論の結果は正しい。でもなんでそうなるの?が謎。
量子実験の答えは正しい、という事実はわかっているけれど、どうしてそうなるの?っていう部分が謎らしいんです。結果が観察されるタイミング、条件が明確に確立されていないのですね。
その謎を解くために立てられた仮説は4つあり、中でも、エヴェレット解釈という解釈方法が興味深いです。
エヴェレット解釈とは?
超適当にかみ砕いて言うと(よい子はちゃんと調べてね!間違っている可能性大だからね!)人間の意識によって認識できたものだけが結果となり、認識外のものはたとえ存在していたとしても結果として見えない、ということだそうです。
平行世界(多世界)パラレルワールドは存在する?
このエヴェレット解釈をすると今よく耳にする平行世界(マルチバース)の可能性も否定できなくなるのだそうです。つまり認識できないだけで、別の可能性の(認識した)世界が無数に存在する(多世界)という世界観になります。
つまり、その人の意識で認識できる範囲のことだけが真実で、認識できなかったものは見えない⇒存在しない。
だから結果が観測されるまでに謎の変化が起きても不思議ではないってことなのかと思いました。
そう考えると、幽霊が見える人とか、超くじ運のいい人がいることも少し納得できるような気がします。
つまり幽霊が見える人を認識できている時点で、たとえ自分は幽霊が見えなくても、幽霊が存在する可能性があると思っている、ということですよね。
意識の中にないもの、認識できないものは観測されないはずですから。
私達と全く違う方法で世界を認識している知的生命体のようなものがいれば、彼らの発見する物理法則を表す数式の内容も異なっているのかもしれません。
それどころか、私達が普遍的だと信じている数学の体系すら、異なる論理で構成されているかもしれません。
論理的思考は人間の脳の中で行われるものです。それが人間の脳の構造に依存したものではない、と断言できるものでしょうか。
引用:宇宙に外側はあるか
また人間の認識と物理学の真実との乖離という点で、時間の概念についても説明されています。
現在は次々と未来からやってきます。未来が過去へと押し流されている、その境目が現在というように感じます。
このような感覚は明らかに、私達が現在という時間しか認識できないことからきています。
過去から未来へと向かうすべての時間の中で、私達は現在という時間だけを切り取って認識しています。
そうすることでこそ、論理的な思考が可能になるとも考えられます。
論理というのは因果関係であり、因果関係に時間的順序は欠かせない要素です。
これをさらに進めて考えてみると、人間がこの世界を論理的に把握して生き抜いていくために、「時間の流れ」という物理的には存在しない概念を作り上げているのかもしれないという考え方もできます。
あのアインシュタインも、『過去、現在、未来の区別は、どんなに言い張っても単なる幻想である』という名言を残していますよね。
時間も空間も、科学的に裏付けされた絶対的な真実だと感じてしまうけれど、それらは私達の脳が論理的に把握できるような形に再解釈されているだけなのかもしれませんね。うーん(´Д`)よくわからない。
パラレルワールドが存在する可能性はある
マルチバースの場合無数の別の宇宙が存在することになるので、可能性の数だけ違う自分がいることになります。これもすごい仮説ですよね。SF。違う現実では私は超資産家に生まれて、セレブ人生まっしぐらなのかもしれない!?(゜∀゜*)←アホ
でもこの解釈も今の科学では否定できない仮説であり、可能性はゼロではないのだそう。前世や来世よりもロマンあるなぁ。
ただし、マルチバースの解釈をとると、自分の認識できる範囲のみの宇宙しか存在できない(つまり意識しか存在しない)、という概念と対立するらしい(別の次元の平行世界を認識することはできないから)
異なる解釈で世界を見る、というロマン
正直物理学の世界で、これ程まで色々な可能性が仮説として出ているのに驚きました。
もしかしたらガイア理論のように、地球全体、世界そのものが何らかの一つの大きな生命体で、私達一人一人はそれぞれの役割を持った細胞や抗体のようなものだった、という可能性もあり得なくもない。
身体が存在するように見えるのは、論理的に解釈したがる脳が意識して作りあげた、ただの電気信号なのかもしれない。
人の個性はさまざまで、攻撃的な人や、慎重な人、敏感な人や鈍感な人がいる。戦士として病原菌と戦う勇敢で快活な白血球がいたり、その白血球の暴走を止めさせるために慎重で疑り深い知識人細胞がいて・・。
そんな風に、この世界を俯瞰して見てみるのも楽しそうだな、と感じました(^ω^) やはり宇宙にはロマンがありますね。
この本の著者さんは科学者でありながらも、難しい事柄を教師ようにわかりやすく説明し、作家のように魅力的な文章で読者を導いてくれます。
こんなに優しく、詳しく書かれた宇宙論の本はなかなかないと思います。買ってよかった本です。また読み返そう(´・ω・)