入園拒否 阪神・岩田投手「社会の理解不十分」
1型糖尿病の子供たちが幼稚園などに入園を拒否されている問題で、1型糖尿病を抱えながらプロ野球で活躍する阪神タイガースの岩田稔投手(32)が毎日新聞の取材に答えた。岩田投手は高校時代、1型糖尿病を理由に社会人野球のチーム入りを取り消された経験がある。「社会の理解はまだ不十分。血糖値を管理すれば日常生活に支障はないことを、プレーを通じて伝えたい」と語った。
1型糖尿病は生活習慣とは関係なく、血糖値を下げるインスリンが分泌されなくなる疾患で、幼少期の発症が多い。
岩田投手は大阪桐蔭高校2年の冬に発症した。病気を理由に社会人野球のチーム入りを取り消された。同じ病を抱えながら巨人などで活躍したビル・ガリクソン投手の存在に励まされたという。
関西大に進学後も野球を続け、2005年の大学・社会人ドラフト希望枠で阪神に入団。1日に4、5回、インスリンを体内に注射しながらプレーを続ける。「1型糖尿病は、自分にとってハンディキャップではなく個性。普段の生活にも野球にも全く制約はない」と語る。
毎日新聞が患者団体「大阪杉の子会」(大阪市)を通じてアンケートした結果、1型糖尿病の患者児童の16%が、幼稚園や保育園に入園を拒否された経験があると回答している。入園に難色を示された人も合わせると4人に1人に上った。岩田投手は「入園拒否は、これから人生を歩もうとしている時に『あかん』と言われるようなもの。僕が野球で活躍することで理解が広まり、こうした壁がなくなってほしい」と話す。
岩田投手は09年シーズン以降、登板した試合の1勝につき10万円を1型糖尿病の患者団体「日本IDDMネットワーク」(佐賀市)を通じて研究機関に寄付。この病気の子供や保護者を、阪神甲子園球場での試合に招待している。金本知憲監督が就任した今季、阪神は11年ぶりのリーグ優勝を目指す。岩田投手は「病気のために将来を悩んでいる子供たちに、道案内をしてあげられるような存在でありたい」と考えている。【柳楽未来】