磨き上げられたレベルデザイン
一言で言うなら、「すごいゲーム」と言う他ない。
もはや、「マゾゲー」だとか「ダークファンタジー」だとか、私が『Bloodborne』で言及した「アクション寄りの~~で、~~だから」なんて言葉は、あまりに陳腐という他ないだろう。
フロム・ソフトウェアのベテランスタッフと、それぞれが独自の挑戦を試みた3本に及ぶ『Souls』シリーズ、『Kings Field』から『Bloodborne』のような精神的類似作、その全てが、この作品を傑作たらしめている。
本作は中世ファンタジーを舞台としたアクションRPGだ。プレイヤーは主に剣と盾を持ち、場合によっては呪術、魔術、奇跡のような各種スペル、そしてアイテムを使い分けていく。
本作はあくまでアクションRPGなので、序盤の主人公は脆弱であり、武器を振るう筋力もなければ、スタミナも体力もない。しかしステータスを伸ばしたところで、熾烈な敵の攻撃の前には、考えなしにゴリ押せる程の余裕はない。
この、「アクション」としても、「RPG」としても難しい点が、本作を「マゾゲー」と感じさせる根拠であろう。
最も、実際にプレイする上では、「ちゃんと考えれば」一度も死ぬことなく進行できるようにデザインされており、とりわけ、敵(脅威)の配置とアイテムや篝火(機会)の配置のバランス、即ちレベルデザインは、そこらのゲームにおける適当で甘々なレベルデザインとは比較にならない、極めて優れたものになっている。
つまり、本作はしっかり頭を捻り、持てるアイテムや手段を有効活用できるなら、何の問題もなく進める塩梅に仕上がっている。むしろ、プレイヤーの持ちうる手段、例えば先述した、武器や防具、各種スペルにアイテムから、何を選び、何を使うかは、全く自分の好みでも問題なく進行出来る程には、余裕を持って作られている。
この点こそ、本作の真の美点であろう。現代のゲームは、その選択肢やユニークなコンセプトの多様性(一般に”自由度”とか言われる)を重視する余り、肝心のゲーム内におけるレベルそのものは杜撰で、早い話「何をどう使おうが攻略できる」レベルに簡単か、「選択肢は豊富だが、一部のものしか使い物にならない」レベルに難しいものになりがちだ。(昨今では『MGSV』等も思い当たる)
しかし、本作はプレイヤーによる様々なプレイスタイルを尊重する寛容性を維持していながらも、常に緊張感と挑戦意欲を維持するような、美しいレベルデザインを完成させているのである。
過去作に対する徹底的な反省
では具体的に、本作のトータルなデザインが、如何に優れているか見ていきたい。
まず、本作は過去作に対して徹底的な反省を行い、それに応じて本作に何が求められ、何を改善すべきかを考慮したように思える。
そもそも、従来作のいずれも高い評価を得ているが、反省すべき点がなかったかといえば、そうではない。
まず、(1)『Demon's Souls』ならば、「全体的なバランスは優れているが、ボリュームが少ない」と言えるし、
(2)『Dark souls』なら「ボリュームと物語への掘り下げは良いが、レベルデザインが終始いびつ」、
(3)『Dark souls 2』なら「RPG面は拡張されたが、物語とスリルが低減」、
(4)『Bloodborne』なら「局地的にバランスは良いが、選択肢が少なく窮屈」といった具合だろうか。
(1)~(4)まで、全ての内容を改善するなど、実際不可能に近い話だろう。だが、本作はとうとうそれをやってのけた。
(1)に対しては、膨大なボリュームとマップの作りこみで対応し、
(2)に対しては、ショートカットと篝火を「プレイヤーに舐められない程度」に配置し、更にNPC、アイテム、スペルも拡充。
(3)に対しては、「王に玉座なし」から始まるシリーズを巻き込んだストーリーと、シリーズ内の凶悪ボスを片っ端から誘致したかのようなボス陣でスリルも増大。
(4)に対しては、『Souls』シリーズで蘇った各種スペルと盾、防具でRPGらしい戦術的選択肢を倍増させ、景観やシチュエーションも豊かになったことで、飽きのこないマップを実現した。
昨今のAAA級ゲームでは、その多くが「前作+DLC」程度の消極的な作品であり、また前作の魅力をそのまま引き延ばすか、或いは新作の魅力のために潰すかといった、両極端な続編ばかりの中、本作の「過去作」を徹底して配慮しつつ、意欲的なデザインを次々に取り入れる姿勢は尊重されるべきだろう。
個性豊かなボス戦と課題点
全体的に極めて高水準でまとまった本作『Dark souls 3』だが、本作ならではの美点、従来のシリーズからみた大きな進歩という点なら、「ボス戦」がとても練り上げられた点を評価したい。
従来、『Souls』シリーズにおいては、レベルが主に「道中」とその最後に待ち受ける「ボス戦」に分けられていた。
しかしながら、従来のシリーズでは「道中」はスリルと戦術面の多様性が多く楽しめるものの、「ボス戦」は少しゴリ押し気味で、かつ考える余地もあまりない割に、「道中」より明らかに難易度が高いというケースが多かった。
『DarkSouls』の「山羊頭のデーモン」は最たる例で、道中の「不死街下層」は敵の配置からアイテム、ショートカットに至るまでとてもバランスの取れた難易度にも関わらず、いざこのボスと戦うと「ボスと雑魚敵がごり押し、隙を潰す」といった具合で、バランスや駆け引きもあったものでない。
上記のものに限らず、『Souls』シリーズの各ボスは、(他の作品に比べれば優れた物が多いものの)広範囲+高威力の技でプレイヤーを潰しにくるキリングマシーンを、決まった解法と強化した装備で迎え撃つという、出来の悪いアクションゲームになりがちだった。
(ビジュアル、戦術面共に、本作のボスはプレイヤーを楽しませてくれる。)
本作ではこの「ボス戦」に大きな見直しが入った。まず、ボス戦それぞれの戦略は大きく特徴づけられ、プレイヤーが適切な処置を取れば確実に攻略できるようになっている。
例えば、序盤の「灰の審判者グンダ」は敏捷さと鈍重さを兼ね備えるが、実は蛇による攻撃が直線上なので横に回避できるし、「呪腹の大樹」はその長い枝による攻撃から、横回避は悪手となるが、逆に距離を取れば問題ないといった具合だ。
更に、各ボス毎の性格や個性が豊かになったことで、今までダレがちだったボス戦も常に緊張感を持って戦うことが出来る。
例えば、『Bloodborne』のボスは大抵「獣」の類であり、似たようなビジュアルでパッとしない印象だったが、本作では「騎士」から「獣」、「聖職者」、その他にもプレイヤーを驚かせるような敵が満載だ。
以上から、本作では「道中」のみならず「ボス戦」まで、プレイヤーにストレスをかけることなく攻略を楽しむことが出来るようになっている。
全体的に高い水準を維持した本作だが、強いて課題点を上げるとするなら、途中から雑魚敵がかなり強化されるために盾が今ひとつ通用しない、バラエティが少なくなる程度だろうか。
元々、私はとりわけこのシリーズのファンというわけでなく、特に『Darksouls』と『Bloodborne』に関しては手放しで評価しているわけでない。
しかし、本作のこの完成されたクオリティはどうしたことだろうか。メカニクス、マルチプレー、世界観、レベルデザイン、物語、キレのいいアクション、奥深いRPG、多様な戦術、どこをとっても、他のゲームが本気で追求してようやく実現する水準を、本作は全て併せ持っている。
100点中100点満点。恥じることなく、そう人に言わせる確かな実力を、この2016年に帰還した王は持っていた。
(玉座を目指せ。物語もまた本作の醍醐味だ。因みに私のキャラは、傭兵シリーズ+カーサスの曲剣で13世紀頃のマムルークを意識したビジュアル。)