増える不明…「事故、いつ起きても…」
15年 拾得336件、遺失119件
昨年、全国の都道府県警に届けられた小型無人機「ドローン」の拾得件数は、計336件に上ることが毎日新聞のまとめで分かった。集計しているのは32警察本部だけで実際はさらに多いとみられる。一方、「飛行中に見失った」などとする遺失物届は119件にとどまる。拾得・遺失とも2014年の統計がある12府県のほとんどで増加。人に当たって負傷した事例は確認されていないが、専門家は「事故はいつ起きても不思議ではない」と指摘する。【川辺和将、安元久美子】
統計の有無や方法には、警察本部によってばらつきがある。国土交通省は昨年11月、歩行者や航空機の安全を確保するためのルール策定に向け、より詳細な情報提供を警察庁に依頼。これを受けて警察庁は、今年から遺失・拾得件数を調べるよう全都道府県警に求めた。
拾得では静岡県が27件と最多で、愛知県26件、長野県25件、兵庫県23件と続く。北海道は前年比19件増、長野県は同18件増だった。遺失件数は多い順に長野県17件、愛知県11件、静岡県10件。長野県は前年比11件増、北海道は同6件増だった。
河川敷や田畑で拾われたケースが多いが、住宅や企業の敷地に落ちていたものもあった。京都府では小学校の玄関先、大分県では認定こども園の中庭、山口県では幼稚園の屋根上でも見つかっている。
安全な操作法についての講習会を開いている「日本ドローン空撮協会」(福岡県鞍手町)の星山民枝代表理事は「拾得に比べ遺失物届が少ないのは、『大変なことをした』と届けをためらうからではないか。山林に落ちると見つかりづらいので、実際に落下した数はもっと多いはず」とみる。
星山さんによると、昨年4月の首相官邸屋上落下事件で、ドローンが広く知られるようになり、使用者が急増。同協会が把握している落下原因は、使用者の技術不足▽電波障害▽鳥による襲撃▽上空の突風−−など多岐にわたる。自動飛行でもトラブルが起きると手動で操縦するしかなく、星山さんは「簡単に飛ばせるという宣伝文句を信じてはいけない。高所から落下したドローンが人に当たれば、大けがではすまないだろう」と注意を促している。
産業活用と規制、並行
「空の産業革命」とも称されるドローン。政府や産業界は活用の拡大を目指す一方、首相官邸に落下した事件をきっかけに法令の整備を始めた。
昨年12月には、基本的な飛行ルールを定めた改正航空法が施行され、飛行は目視できる範囲に限り、夜間は禁止となった。
高さ150メートル以上の空域や、人口密度が1平方キロあたり4000人以上の「人口集中地区」上空も原則禁止だ。人口集中地区には、東京23区や地方の主な都市が該当する。
これらの禁止空域でも、国土交通省が機体の性能や安全対策を審査し、許可が出れば飛行できる。国交省は全国からの申請に基づき、3月9日までに2050件を許可した。
安倍晋三首相は昨年、「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を目指す」と述べ、政府が官民協議会で活用や規制の議論を進めている。特に重さ数十キロの産業用の大型機は事故時の影響が大きいため、機体の性能や操縦者の技量を担保する追加の規制を検討している。【内橋寿明】
◇都道府県別のドローン遺失・拾得件数◇
遺失 拾得
北海道 6 19
青 森 − −
岩 手 − −
宮 城 − −
秋 田 3 3
山 形 − −
福 島 6 13
茨 城 7 19
栃 木 − 17
群 馬 − −
埼 玉 − −
千 葉 − 9
東 京 − −
神奈川 − −
新 潟 − 10
富 山 4 8
石 川 − 4
福 井 − −
山 梨 1 12
長 野 17 25
岐 阜 − −
静 岡 10 27
愛 知 11 26
三 重 − −
滋 賀 3 4
京 都 8 13
大 阪 8 11
兵 庫 0 23
奈 良 4 10
和歌山 0 1
鳥 取 3 6
島 根 3 5
岡 山 − 11
広 島 − −
山 口 1 5
徳 島 − −
香 川 − 7
愛 媛 1 2
高 知 − −
福 岡 4 19
佐 賀 0 1
長 崎 1 3
熊 本 − −
大 分 1 1
宮 崎 5 6
鹿児島 6 8
沖 縄 6 8
…………………
合 計 119 336
※「−」は統計なし