イタリア半島の南西にあり、地中海のほぼ中央に浮かぶシチリア島。四国の約1.5倍という広い土地は多くの農作物を育み、また周囲を海に囲まれているため魚介類も豊富なので、この島では自然の恵みをふんだんに味わうことができます。また地中海の中心という立地条件から、シチリア島は政治的要地として多くの国から度重なる侵略を受けたという歴史を持ちます。そのためこの島には独特かつ多彩な文化が生まれました。島のあちこちに残る美しい建築物や街並みは今でも多くの人の目を楽しませています。
そんな魅力溢れるシチリア島の観光地の中から、今回はパレルモのカテドラル、アグリジェントの神殿の谷、シラクーサとパンタリカの岩壁基地遺跡をご紹介します。
あらゆる文化が交差する港街 パレルモ
シチリア島最大の都市がパレルモです。人口は約66万人で、これはイタリアでは5番目の規模。ギリシャ語で「すべてが港」という意味を持つ「パノルムス」の語源の通り、貿易の重要な拠点として栄えたパレルモは、長い歴史の中で東ローマ帝国やシチリア王国など様々な国の支配を受けました。そのためこの街には多彩な様式をもつ建築物が多く残されています。中でもおすすめなのが、この街最大の教会であるパレルモ大聖堂(カテドラル)です。現代に至るまで度重なる改修が行われ、外観はエキゾチックで華やかなイスラム様式、内部は過剰な装飾を省いた新古典様式の影響が見られます。様々な文化が交差した、まさにパレルモを代表する建築物となっています。
繁栄の足跡が今も残る アグリジェント「神殿の谷」
紀元前3世紀に古代ローマ軍に敗れるまで繁栄を極めた古代ギリシャ。最盛期には、人口過密などの理由により多くのギリシャ人がヨーロッパ各地に移住していきました。シチリア島も彼らが移り住んだ場所のひとつ。そして島の南部にある都市アグリジェントには、ギリシャ人がつくりあげた神殿群が今も遺されているのです。「神殿の谷」と呼ばれるそこにはジェノーネ・ラチニア神殿やヘラクレス神殿などといった20ほどの神殿遺跡群がありますが、中でも最も保存状態が良いのがコンコルディア神殿です。雄大なその姿は当時の繁栄の面影を十分に感じさせてくれます。また、この神殿の谷は「アグリジェントの考古学地域」として世界遺産にも登録されています。
古代ギリシャが目の前に蘇る シラクーサとパンタリカの岩壁墓地遺跡
シチリア島東部にあるシラクーサもまた、古代ギリシャの植民都市として繁栄した街。その勢力はギリシャ・アテネに並ぶほどであったと言われており、数学者アルキメデスが生まれた街として大変有名です。欧州最大級の規模を誇り現在も使用されているギリシャ劇場や荘厳なバロック様式が美しい大聖堂など、当時の繁栄を思わせる古代文明の遺構が数多く遺されているほか、シラクーサから西へ50kmほどの距離にあるパンタリカには岩壁に5000もの穴を穿ちつくられた紀元前13~7世紀の墓地があります。これらは「シラクーサとパンタリカの岩壁墓地遺跡」として世界遺産に登録されており、多くの人が数千年前に花開いた地中海文明に触れる旅を楽しんでいます。
数千年前に思いを馳せるシチリア島の旅
シチリア島は大きな島なので、今回紹介した3つの場所以外にもたくさんの見所があります。特にシチリア島東南部にあるカターニアやノートなどの8つの街は「ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々」として世界遺産に登録されており、それぞれに違った個性と魅力があります。また、シチリア島東部に位置する街タオルミーナも多くの人が訪れる人気の高い観光地です。青く美しい海と周囲の自然が織りなす風景が美しく、映画「グラン・ブルー」のロケ地にも選ばれたほどです。
いたるところに地中海の美しい自然と、はるか数千年前の古代文明の足跡が残るシチリア島。その街の歴史を感じながら、気ままに探索を楽しんでみてはいかがでしょうか。