あまちゃんお座敷車両引退 1期生駅長の思い
NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」のロケ地となった第三セクター・三陸鉄道(本社・岩手県宮古市)。その中で重要な舞台となったお座敷車両「さんりくしおかぜ」が31日で引退する。三陸鉄道の1期生で「さんりくしおかぜ」とともに震災を乗り越えてきた宮古駅(同市)の橋上和司駅長(51)が、ラストランへ向けた思いを語ってくれた。【米田堅持】
三陸鉄道草創期を支えた1期生
「さんりくしおかぜ」は、三陸鉄道が開業した1984年4月から走っている車両のひとつで、橋上さんら三陸鉄道1期生とは「同期生」だ。当初は、三陸鉄道の南リアス線を走る一般仕様の車両番号「36−110」だったが、2002年10月に東北新幹線の八戸延伸に合わせて、三陸鉄道初のお座敷車両の車両番号「36−2110」として車内をリニューアルし、愛称は公募で「さんりくしおかぜ」に決まった。大型バス1台で観光客を運べるように定員は48人となった。05年2月に当時は珍しかった「こたつ列車」へと内装を変更して現在の形になり、06年からは冬の名物列車として定着した。
「第三セクターなめるなよ」
11年3月11日の東日本大震災で三陸鉄道は、全線で運転中止を余儀なくされるなど壊滅的な被害を受けた。震災から全線復旧で大きな力となったのは、社員だけでなく保線や通信を担う協力会社や沿線の人たちの力が大きかったという。
さらに、復旧に弾みをつけたのが「あまちゃん」だった。「さんりくしおかぜ」も舞台のひとつとなり、「しおさいのメモリーズ」号として人気者になった。橋上さんが語った「第三セクターなめるなよ」は、そのままセリフとなって全国に流れ、「さんりくしおかぜ」と橋上さんの同期のタッグは全線復旧へのレールをひた走った。
「さんりくはまかぜ」へ
14年4月、新たなお座敷車両「さんりくはまかぜ」が登場した。当初からお座敷車両として製造されており、橋上さんと同期の金野淳一・運行本部長のアイデアが詰まった新型車両だ。30年以上にわたって走り続け、老朽化や設備の古さが目立ってきた「さんりくしおかぜ」の後継として入れ替わることになった。
橋上さんは「震災で鉄道が走ることが当たり前ではないことを思い知らされた時、『さんりくしおかぜ』に救われ、社員は感謝している。最後は三陸鉄道を走っていた『さんりくしおかぜ』のことを語り継いでいきたい」と話し、同期の一足早い「定年」をゆっくりと言葉を選びながら惜しんでいた。