開業の陰で縮む北の足 不採算路線
26日に開業する北海道新幹線(新青森−新函館北斗)の陰で、経営難が続くJR北海道は同日のダイヤ改正で採算の悪いローカル線の普通列車を大幅に減らす。特に札幌を起点とする札沼線は、終点の新十津川(北海道新十津川町)を発着する列車が午前9時台の1日1往復だけになる。熊田義信・同町長は「かくなる上は全国一早い最終列車でアピールする」と複雑そうだ。
JR北は昨年11月、旧国鉄製ディーゼル車の更新が資金不足で難しいとして根室、石北など8線の普通列車計79本を削減すると発表した。安全投資の必要性を訴え、管理費を含めると全線区が赤字というデータも公表して理解を求めた。
札沼線もその一つ。北海道医療大学−新十津川間は100円の収益を上げるために2162円かかり、廃止検討中の留萌線・留萌−増毛間に次ぎ管内2位の不採算区間だ。
今回のダイヤ改正で朝、昼、夜に普通列車各1本が折り返していた浦臼−新十津川間は午前の1往復だけになる。新十津川に着いた列車が12分後に終列車として折り返す。地元首長らが再考を求めたが、かなわなかった。
新十津川駅は数年前から廃止がうわさされ旅好きの訪問が増えた。駅前の空知中央病院の保育所では、2011年に鉄道ファンを見送ったことをきっかけに、園児が毎日、朝の折り返し列車を見送る。それが評判になり、遠方から園児を訪ねてくる観光客もいる。
町も活性化戦略に札沼線の活用を盛り込もうとしたが、練り直しとなった。同病院の石井勝淑事務課長は「子供たちが見送る列車が残るのは良かった」。
一方、東海道新幹線を抱え高収益を誇るJR東海は今回のダイヤ改正で、台風被害により不通だった三重県の名松線の一部区間(家城−伊勢奥津)を6年半ぶりに復旧させる。
不通区間は年4000万円の収益に対し約8億円の維持管理費がかかり、現在の札沼線とほぼ同じ収支構造だった。JR東海は被災直後の09年に廃止方針を示したが、地元自治体が復旧関連費用の負担を決めたため方向転換した。復旧後の1日の運行本数は7往復半で、観光客誘致を模索する動きも出ている。
国鉄の分割・民営化でJR各社が引き継いだ路線のうち、JR北は約25%が廃線となったが、JR東海にはない。熊田町長は「北海道以外は鉄道が地方創生に結びついているように見える」とぼやいた。【本多健】