同一労働同一賃金実現へ検討会が初会合
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同一労働同一賃金の実現に向けた有識者による政府の検討会の初会合が開かれ、仕事の内容などで賃金や待遇に差を設けてもよい事例を具体的に示すガイドラインや、導入に必要な法制度などについて検討していくことを確認しました。
同じ仕事に対しては同じ賃金を支払う同一労働同一賃金の導入を目指す安倍総理大臣の指示を受けて、7人の有識者による検討会の初会合が、23日、厚生労働省で開かれました。
この中で、塩崎厚生労働大臣は「女性や高齢者、難病や障害のある方が納得できる働き方を通じて、経済社会の活力が最大限発揮できるようにすることが何よりも重要だ。わが国で同一労働同一賃金を実現するにあたって、真に実効性のある政策を打ち出していきたい」と述べました。
また、加藤一億総活躍担当大臣は「同一労働同一賃金を導入しているヨーロッパで、法律が実際にどのように運用されているのか実態把握を行っていくことが非常に重要だ」と述べました。
会合では、厚生労働省が、日本ではこの30年間、パート労働者の賃金は正社員の50%台と横ばいで、格差が縮まっていない現状を報告しました。また、非正規労働者の賃金が低い理由として、正社員が勤続年数に応じて賃金が上がるのに対して、パートや契約社員などではほとんど上がらず、ボーナスも出ないか低い水準にとどまっていることを挙げています。そのうえで、こうした賃金の格差が少子化や貧困の問題につながっているとして、非正規労働者の待遇を改善するため、ヨーロッパの制度を参考に同一労働同一賃金の実現に向けて議論を進めていくことになりました。
そして、同一労働同一賃金を導入するためのガイドラインを作成することにし、今後、仕事の責任の大きさや経歴などで賃金や待遇に差をつけることがありうるケースと、非正規労働者には通勤手当を支給しないといった認められないケースを具体的に示す方針です。
政府は、検討会での議論を踏まえ、ことし5月にも取りまとめる一億総活躍社会の実現に向けた工程表「ニッポン一億総活躍プラン」で同一労働同一賃金の具体化に向けた方向性を打ち出すことにしています。
この中で、塩崎厚生労働大臣は「女性や高齢者、難病や障害のある方が納得できる働き方を通じて、経済社会の活力が最大限発揮できるようにすることが何よりも重要だ。わが国で同一労働同一賃金を実現するにあたって、真に実効性のある政策を打ち出していきたい」と述べました。
また、加藤一億総活躍担当大臣は「同一労働同一賃金を導入しているヨーロッパで、法律が実際にどのように運用されているのか実態把握を行っていくことが非常に重要だ」と述べました。
会合では、厚生労働省が、日本ではこの30年間、パート労働者の賃金は正社員の50%台と横ばいで、格差が縮まっていない現状を報告しました。また、非正規労働者の賃金が低い理由として、正社員が勤続年数に応じて賃金が上がるのに対して、パートや契約社員などではほとんど上がらず、ボーナスも出ないか低い水準にとどまっていることを挙げています。そのうえで、こうした賃金の格差が少子化や貧困の問題につながっているとして、非正規労働者の待遇を改善するため、ヨーロッパの制度を参考に同一労働同一賃金の実現に向けて議論を進めていくことになりました。
そして、同一労働同一賃金を導入するためのガイドラインを作成することにし、今後、仕事の責任の大きさや経歴などで賃金や待遇に差をつけることがありうるケースと、非正規労働者には通勤手当を支給しないといった認められないケースを具体的に示す方針です。
政府は、検討会での議論を踏まえ、ことし5月にも取りまとめる一億総活躍社会の実現に向けた工程表「ニッポン一億総活躍プラン」で同一労働同一賃金の具体化に向けた方向性を打ち出すことにしています。
非正規労働者 日本では賃金に大きな差
総務省の労働力調査によりますと、国内の非正規労働者は、去年1年間の平均で1980万人で、労働者全体の37.5%を占めています。これは、20年前のおよそ2倍で、増加傾向が続いています。
一方、厚生労働省などによりますと、残業代などを除く去年の月給は、平均で、正社員が32万1100円だったのに対し、非正規労働者は20万5100円で、大きな差がありました。
また、正社員などフルタイムと、非正規労働者の多くが含まれるパートタイムの賃金水準を海外と比較すると、フルタイムを100とした場合、日本ではパートタイムが56.8だったのに対し、フランスは89.1、ドイツは79.3でした。このように、日本では、同一労働同一賃金が浸透しているヨーロッパの主要国と比べ、正社員と非正規労働者の間の格差が大きくなっています。
こうしたなか、日本でも、非正規労働者のうち、パートタイムや有期雇用の労働者について、仕事の内容や責任の程度などを考慮しつつ不合理に賃金に格差をつけることを禁止する法律が、平成25年以降、順次施行されましたが、派遣労働者は対象となっていません。一方、フランスなどヨーロッパ諸国では、すべての非正規労働者に対し、客観的な理由がないかぎり不利益な取り扱いをしてはならないとする規定が設けられていますが、勤続年数や資格などを理由に例外として待遇に差をつけることも認められています。
一方、厚生労働省などによりますと、残業代などを除く去年の月給は、平均で、正社員が32万1100円だったのに対し、非正規労働者は20万5100円で、大きな差がありました。
また、正社員などフルタイムと、非正規労働者の多くが含まれるパートタイムの賃金水準を海外と比較すると、フルタイムを100とした場合、日本ではパートタイムが56.8だったのに対し、フランスは89.1、ドイツは79.3でした。このように、日本では、同一労働同一賃金が浸透しているヨーロッパの主要国と比べ、正社員と非正規労働者の間の格差が大きくなっています。
こうしたなか、日本でも、非正規労働者のうち、パートタイムや有期雇用の労働者について、仕事の内容や責任の程度などを考慮しつつ不合理に賃金に格差をつけることを禁止する法律が、平成25年以降、順次施行されましたが、派遣労働者は対象となっていません。一方、フランスなどヨーロッパ諸国では、すべての非正規労働者に対し、客観的な理由がないかぎり不利益な取り扱いをしてはならないとする規定が設けられていますが、勤続年数や資格などを理由に例外として待遇に差をつけることも認められています。
同一労働同一賃金 その課題は
日本で同一労働同一賃金を導入する場合、多くの課題があるとみられます。
日本の企業の多くは「年功序列」の制度を取っています。そうした企業では「終身雇用」の考えに基づき、勤続年数や経験を考慮して社員の給料を決めるのが一般的で、仕事によって給料が決まる同一労働同一賃金を取り入れるためには人事制度などを見直す必要があります。
また、制度の内容しだいでは、給料が下がる社員も出る可能性があります。さらに、同じ仕事をしていても転勤や残業がある社員と、限定した働き方をしている社員では、賃金や待遇に一定の差をつけることが考えられますが、どの程度の差であれば妥当と言えるのか明確には定まっていません。
企業にとっては、社員が納得できる制度を作らなければ生産性が下がる結果にもなりかねず、導入は簡単ではないという指摘があります。
日本の企業の多くは「年功序列」の制度を取っています。そうした企業では「終身雇用」の考えに基づき、勤続年数や経験を考慮して社員の給料を決めるのが一般的で、仕事によって給料が決まる同一労働同一賃金を取り入れるためには人事制度などを見直す必要があります。
また、制度の内容しだいでは、給料が下がる社員も出る可能性があります。さらに、同じ仕事をしていても転勤や残業がある社員と、限定した働き方をしている社員では、賃金や待遇に一定の差をつけることが考えられますが、どの程度の差であれば妥当と言えるのか明確には定まっていません。
企業にとっては、社員が納得できる制度を作らなければ生産性が下がる結果にもなりかねず、導入は簡単ではないという指摘があります。
仕組みすでに導入 イケアのケース
同一労働同一賃金を目指した仕組みをすでに取り入れている企業もあります。
家具などの販売を手がける「イケア・ジャパン」は、従業員のうち7割がパート社員だった2年前に、勤務時間が短くても正社員として働ける制度を新たに導入しました。福利厚生をはじめ、仕事やポストが同じであれば時給に換算した賃金はフルタイムで働く正社員と同じ水準です。パート社員にあった半年ごとの契約更新をなくして65歳の定年制とし、今では2600人、全員が正社員として働いています。
2年前から短時間勤務の正社員として働いている蓮池健男さんは「平等に評価する制度でモチベーションが上がり、上を目指して頑張ろうという気持ちになった」と話しています。同一労働同一賃金を目指す制度の導入によって人件費の負担は増えますが、会社では、社員の働く意欲を高めるほうが成長につながると考えています。生産性を高めるため、上司による面談を毎月行うなど社員一人一人の能力アップに向けた取り組みにも力を入れています。
イケア・ジャパンの泉川玲香人事本部長は「会社が成長するには人の成長が大切だ。人の成長を促すときに平等な対応ができる制度が整っていることは、10年、20年先を見据えたときに落としてはいけないポイントだ」と話しています。
家具などの販売を手がける「イケア・ジャパン」は、従業員のうち7割がパート社員だった2年前に、勤務時間が短くても正社員として働ける制度を新たに導入しました。福利厚生をはじめ、仕事やポストが同じであれば時給に換算した賃金はフルタイムで働く正社員と同じ水準です。パート社員にあった半年ごとの契約更新をなくして65歳の定年制とし、今では2600人、全員が正社員として働いています。
2年前から短時間勤務の正社員として働いている蓮池健男さんは「平等に評価する制度でモチベーションが上がり、上を目指して頑張ろうという気持ちになった」と話しています。同一労働同一賃金を目指す制度の導入によって人件費の負担は増えますが、会社では、社員の働く意欲を高めるほうが成長につながると考えています。生産性を高めるため、上司による面談を毎月行うなど社員一人一人の能力アップに向けた取り組みにも力を入れています。
イケア・ジャパンの泉川玲香人事本部長は「会社が成長するには人の成長が大切だ。人の成長を促すときに平等な対応ができる制度が整っていることは、10年、20年先を見据えたときに落としてはいけないポイントだ」と話しています。
専門家「体制整備が必要」
雇用問題に詳しい日本総合研究所の山田久調査部長は「日本の場合、非正規労働者の人事評価制度はあまり整備されておらず、仕事の価値をしっかり評価することが必要だ。そのうえで労働時間が長く、緊急対応などを求められる正社員の負担や責任を考慮して、何が公平かバランスを考えるべきだ」と述べ、同一労働同一賃金を導入する場合、人事評価制度などの体制整備が必要だと指摘します。さらに、「正社員の賃金が下がるケースもありうるので、企業は従業員全体のモチベーションを上げて生産性の向上につなげていく努力が必要だ」と話しています。