国内のテロ対策 サミット控え水際対策など徹底へ

ベルギーで起きた連続テロ事件では、不特定多数の人が集まる場所でテロを防ぐことの難しさが改めて浮き彫りになり、警察庁は、ことし5月の「伊勢志摩サミット」などを控え、水際対策の徹底や情報収集の強化をさらに進めることにしています。
日本では、ことし、5月に主要国首脳会議「伊勢志摩サミット」が三重県で開かれるほか、来月10日と11日の広島市での外相会合をスタートに、関係閣僚会合が全国10か所で開催されます。
過激派組織IS=イスラミックステートが日本をテロの標的として名指しするなか、警察庁は国内でのテロを防ぐため、空港などの重要施設や、大勢の人が集まり、比較的警備が緩やかな「ソフトターゲット」の警戒や警備を強化するよう全国の警察に指示しています。
今回、ベルギーで起きた連続テロ事件でも、金属探知機などの検査が行われる手前の空港の出国ロビーや、「ソフトターゲット」の地下鉄の駅が狙われ、不特定多数の人が集まる場所でテロを防ぐことの難しさが改めて浮き彫りになりました。
日本では、成田空港で、去年3月、空港に入る入り口からカメラで不審者を追跡する最新のシステムが導入されるなど対策が進んでいますが、限界があるうえ、駅などですべての人を対象にした手荷物検査を行うのは現実的ではありません。
このため警察庁は、サミットに向けて、警備態勢の強化だけでなく、入国管理局などと連携した水際対策の徹底や、テロの動きを事前に察知する情報収集の強化をさらに進めることにしています。また、「ソフトターゲット」の管理者など民間の事業者との連携が欠かせないとして、不審な人や物を見つけた時に速やかに連絡したり、自主警備を強化したりするよう要請しています。

成田空港 警戒強化

ベルギーの国際空港と地下鉄で起きた連続テロ事件を受けて、成田空港では、警察がパトロールの回数を増やすなどして警戒を強化しています。
千葉県警察本部の成田国際空港警備隊は、これまでもターミナル内のパトロールや、においで爆発物を捜し出す爆発物探知犬による探索などを実施していますが、ベルギーでの連続テロ事件を受けて、さらにパトロールの回数を増やし、警戒を強化しました。また、成田国際空港警察署は、航空会社などとより連携を密にするよう署員に指示を出し、パトロール中の警察官は空港で働く人たちに「不審な物を見つけたときはすぐに警察に連絡してください」と呼びかけていました。
一方、成田空港会社は22日、空港の3つのターミナルで、不審物がないかどうか、民間の警備会社に一斉の確認を依頼し、警備の強化も要請したということです。
成田空港会社は、去年、不審物や忘れ物を専用のシートで拭き取りシートの粒子を調べて爆発物かどうかを調べる特殊な検査装置を導入し、こうした装置も活用することにしています。
成田空港会社保安警備部の宇野茂次長は「空港が狙われたテロを重い事実として受け止めています。空港で働く人たちが一丸となって、安全な空港を目指すための取り組みを改めて進めていきたい」と話していました。

警察がテロ対策訓練

ベルギーの連続テロ事件など世界各地でテロが相次ぐなか、ことし5月に開かれる伊勢志摩サミットに向け、警察のテロ対策訓練が23日、和歌山市で行われました。
和歌山市にある県警察学校で行われた訓練には、伊勢志摩サミットで会場や周辺の警備に派遣される可能性がある和歌山県警察本部と近畿管区警察局の機動隊員およそ90人が参加しました。機動隊員たちは楯の構え方や警備隊形の作り方など基本動作を確認したあと、テロリストが仕掛けた爆発物を撤去する訓練や、デモが行われることを想定し混乱を防ぐ訓練を行いました。訓練は、サミットの開催を控えているうえ、ベルギーの連続テロ事件など世界各地でテロが相次ぐなかで行われたこともあって、機動隊員たちは緊張感を持ってそれぞれの任務や手順を確認していました。
訓練のあと和歌山県警察本部の直江利克本部長は「フランスでの同時多発テロやベルギーで起きた連続爆破テロなど国際的な情勢は大変厳しい。部隊一丸となって研鑽を重ねてほしい」と訓示しました。訓練の指揮に当たった近畿管区機動隊の芝崎展也中隊長は「ベルギーでもテロがあるなどあらゆる事態への対応が必要です。強い部隊を作るため訓練に励んでいきます」と話していました。

専門家「民間との協力関係が必要」

ベルギーの国際空港と地下鉄で起きた連続テロ事件では、過激派組織IS=イスラミックステートが犯行を認める声明を出しています。
これについて、テロ対策に詳しい日本大学の河本志朗教授は「テロは複数犯で実行され、ヨーロッパ出身のISの支持者も関与した可能性が高い。ISの支持者がヨーロッパに多く存在するのは明らかで、今後も大きな脅威になる」と指摘しました。
また、ことし5月に日本で「伊勢志摩サミット」が開かれることについて、河本教授は、ISが敵と見なしている欧米の首脳が集まるため、世界から注目を集めるという点で、日本がテロの格好の標的になりうるという認識を示しました。
そして、国際空港と市内中心部の地下鉄の駅がテロの標的になり、大勢の死傷者が出たことに触れ、「ISは、公共の場所でのテロが効果的に大勢の市民を殺害できるとよく認識したと考えられる。『伊勢志摩サミット』でも、会場だけでなく、空港や駅などがテロの標的として狙われるリスクが高まった」と述べました。そのうえで、「大勢の人が出入りする駅や空港などの警備には限界があるため、警察は、こうした場所の施設の管理者や利用者に不審者や不審物があったら通報してもらうなど、協力関係を築くことが必要だ」と述べ、サミットに向けて、警察が民間の施設の管理者や利用者との協力関係を築く必要性を強調していました。