東京都の新生児数はだいたい10万人前後で推移している.5歳児までで50万人.50万人の両親はざっくり100万.東京全体でみても保育園問題で得られる票は最大100万.しかしながら20代と30代の投票率はそれぞれ33%と42%.ざっくり50万人もない.それじゃ政治家は本気で動かない
— おまきざるの憂鬱 (@capuchinyou2) March 15, 2016
Twitterでこうつぶやきました.「保育園落ちた 日本死ね!!!」が政治問題に発展し,保育支給与を月額1万円()くらい上げるみたいですね.政治家は本気でこの問題に取り組む気がなさそうにしか見えません.このことを反映したつぶやきでした.
しかしながら,投げっぱなしジャーマンはいけません.たまたま偶然見つけた杉並区の年代別の投票結果を眺めたら,もうちょっと投票が増えたら少しは動くかもしれないと思い,このエントリーを書いた次第です.
はじめに
子育て世代が投票すれば意中の政治家を当選させられるのでしょうか?
この1点が気になり,「保育園落ちた 日本死ね!!!」が国会デビューして以降,ネットをあちこち回っています.
その結果,杉並区の年代別投票率のデータを入手できました.
杉並区は都内でも待機児童が少なくありません.
その杉並区で子育て世代が議員を当選させるにはどれくらいの投票率が必要なのかについて,考えてみました.
なお,投票行動については日頃のニュースで得られる知識しかありません.質問等には一切お応えできませんのでご了承ください.
資料
今回用いる資料はどれもネットで入手可能なものです.
<資料1>H22年とH25年参議院選挙における杉並区の年代別投票数と投票率
出典:http://www.horibe-yasushi.com/2013/20130803.html
ここから,平成25年の投票者数と投票率を用いました.
<資料2>杉並区の人口
杉並区HPの統計データから,2-4 年齢(各歳)、男女別人口 (Excel 28.5K)を用いました.これはH25年1月1日現在の最新データです.
<資料3>待機児童数と保育園定員
待機児童数と保育園定員については厚生労働省の保育所関連状況取りまとめ(平成26年4月1日)http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_18/pdf/ref3.pdfの資料7を用いました.無認可保育園は含まれていないかもしれません.
<資料4>H25年参議院選挙の投票結果
杉並区分です.
出典:http://www.tokyo-hayasaka.com/images/sangiin_senkyokekka.pdf
本来,衆議院小選挙区の選挙のほうがわかりやすいのですが,年代別投票率のデータが杉並区における参議院議員選挙のものしか得られませんでした.なお,参議院選挙の場合,杉並区の有権者単独の票では誰も当選させられません.
保育園当事者は0〜5歳児の4人に1人
杉並区の0〜5歳児の人数は男女合計で2万2,666人でした.
そのうち,保育園定員は5,531人,待機児童数は285人,合計5,816人です.これは,0〜5歳児の25.7%です.
保育園定員と待機児童の合計数をここでは「子どもの保育を親が必要としている児童数」という意味で,「要保育児童数」と呼ぶことにします.要保育児童数は杉並区の場合,0〜5歳児の4人に1人ということになります.
待機児童の親御さんの有権者率はわずか0.12%
0〜5歳児それぞれのお子さんにご両親がいらっしゃると仮定すると(ご兄弟がいたりシングルマザー/シングルファーザーもいらっしゃると思いますが),その数は5,816人×2=1万1,632人.
1万1,632人すべて有権者と仮定すれば,有権者の全体数が46万275人なので,杉並区の有権者のうち2.53%が幼保育児童の親御さんということになります.待機児童285人の親御さん570人は,杉並区有権者全体のわずか0.12%です.
下の増田(はてな匿名ダイアリー=はてなアノニマスダイアリー=増田)は表現が非常に荒いのですが,保育園入園を希望する親御さん全員が投票しただけでは何にもならないという言葉は説得力があります.
この手の話題になると選挙行けとかしたり顔で言い出す頭でっかちのバカがいるけど、夫婦の2票で何か変わるのか?何も変わりゃしねえよ!
20代および30代の投票率は?
では,20代・30代を0〜5歳児の子育てを担っているもしくは将来担う可能性がある世代と仮定して(いや,うちは40代で保育園通ってましたけどね・・・),彼らの投票率を見てみましょう.
H25年参議院選挙時点での20〜30代の有権者数は17万1,093人.投票数は7万1,675票.投票率は41.9%でした.50%も投票していないのがこの世代の現実です.
一方,40代以上の投票数は18万1,777,投票率は62.9%でした.これでは20〜30代に勝ち目はなさそうに見えます.
しかしながら,20〜30代の投票率が低いとはいえ,投票数は7万1,675です.7万票もあるのです.7万票あれば何かができるかもしれません.たとえば,杉並選挙区(東京第8区)で参議院議員当選に見込めるのは5万票です.
20〜30代のうちの5万人というのはこの年代の有権者数18万3,703人の27.2%に過ぎません.つまり,20代・30代の有権者の3割が一致して意中の候補者に投票すれば,その候補者を参議院に送り込む可能性がある・・・のでしょうか?いや,きっと無理.
参議院の東京選挙区で当選するのに必要な得票は少なくとも60万票(資料は後述).杉並区の20〜30代,いや全杉並区有権者約46万人がみんなそろって一人の議員に投票してもそれだけでは参議院議員一人すら当選させられません(参院選については最後に考察します).
しかし,衆議院選挙は事情が異なります.
杉並区の衆議院議員選挙の場合
国政選挙の場合,杉並区は東京第8区という選挙区になっています.
H26年の衆議院議員選挙では石原伸晃氏が当選しました.当日有権者数46万4,884人,最終投票率が54.61%(出典:東京都第8区 - Wikipedia).石原氏の得票数は11万6,193票でした.これは20〜30代の有権者数(H25年の数値を用います)の67.9%です.ざっくり7割とすれば11万9,765票.
つまり,20〜30代の有権者の7割が一致して意中の候補者に投票すれば,その候補者を衆議院に送り込めるのです.
杉並区の東京都議員選挙の場合
では,20代・30代の有権者の7割の票である11万9,765票があれば,都議選と区議選で何ができるかについて見ておきましょう.
H25年の東京都議会選挙杉並選挙区で当選したのは6名.合計得票数は14万8,327(出典:http://go2senkyo.com/local/senkyo/9858).得票数6位の小松久子氏は18,018票で当選しています.
得票数の低い順に合計していくと,2位〜6位までの合計で11万3,068票です.20〜30代の有権者の7割の票があれば,杉並選挙区では都議6人中5人を当選させられます.
杉並区議員選挙の場合
H27年の杉並区議会選挙で当選したのは48名.合計得票数は15万4,670(出典:杉並区議会議員選挙 | 日本最大の選挙・政治情報サイト).最下位48位の川津理恵子氏は2,024票で当選しています.やはり待機児童の親御さんだけでは区議の一人すら当選させることはできません.
しかしながら,得票数の低い順に合計していくと,8位〜48位までの合計で11万7,266票.20〜30代の有権者の7割の票があれば,杉並選挙区では区議48人中41人を当選させられます.
さらに言えば,要保育児童の親御さん1万1,632人の票だけでも区議5人を当選させられます.
参議院議員東京選挙区
最後に,参議院の東京選挙区まで視野を広げたら話はどうなるでしょう?
<H25年参議院選挙東京選挙区の結果>
出典:http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2013/kaihyou/ye13.htm
東京都の保育サービス利用児童数はH25年4月で22万3,334人,待機児童数は8,117人でした(出典:都内の保育サービスの状況について|東京都).合計すると23万1,451人です.
杉並区での試算と同様にすれば,要保育児童の親御さんの数は46万2,902人.これはH25年参議院議員選挙の有権者数1,077万7,333人のわずか4.3%.やはり要保育児童の当事者だけの票では議員を当選させることはできません.でも,あと20万3,782票が加われば山本太郎氏の得票66万6,684票に並びます.
H25年における東京都の20〜30代の人口は361万8,716人(出典:住民基本台帳による東京都の世帯と人口 平成25年1月 第6表),そのうちの70万人は19.3%です.
したがって,20〜30代の有権者の2割が意中の候補者に票を集中すれば参議院議員を1人送り込めるのです.
まとめ
・杉並区の待機児童の親御さんの票だけでは議員を当選させることはできない.
・杉並区の保育園定員+待機児童の親御さんの票があれば5人の区議を当選させられる.
・杉並区20〜30代の7割の票で区議48人中41人を当選させられる.
・杉並区20〜30代の7割の票で都議6人中5人を当選させられる.
・杉並区20〜30代の7割の票で小選挙区衆議院議員を当選させられる.
・東京都の20〜30代の2割の票があれば参議院議員を1人当選させられる.
繰り返しますが,石原伸晃衆議院議員の得票数は11万6,193票.これは20〜30代の有権者数17万1,093人(H25年の数値を用います)の67.9%です.
H25年参議院選挙時点での20代・30代の投票率は41.9%(有権者数は17万1,093人.投票数は7万1,675).20〜30代の有権者数の投票率があと26ポイント上がれば,何かが変わるかもしれません.
参院選のデータで衆院選や都議選・区議選を語っても意味はないかもしれません.すべては机上の空論です. 20〜30代の投票行動が一致するはずもないでしょうし,そもそも投票すらしないヒトのほうが多いのが現実なのですから.自分の1票を行使するもしないも自由です.
でも,選挙に行かない=投票しないのって,実はけっこうもったいないんじゃない?
この記事を書いて強く思った次第です.
なお,次の参院選の比例代表で投票用紙に「民主党」と書いて無効票が続出するかもしれないと今から心配です.
ではまた!
【補足】なお,杉並区の人口統計はしっかりしていて,子育て世帯数の数値も明らかになっています.H25年だと,3人世帯(夫婦と子ども1人)は3万1,571,4人世帯(夫婦と子ども2人)は2万4,226,5人世帯(夫婦と子ども3人)は4,571,6人世帯(夫婦と子ども4人)は437.これら6万805世帯の夫婦の人数が12万1,610人です.
ただし,夫婦と子の年齢は考慮されていませんので,保育園に現在あるいは将来的に関わる可能性のある有権者とするにはふさわしくないと判断し,このエントリーでは用いませんでした.
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