日銀:金融政策を維持、7対2-MRF適用除外、情勢判断弱めに (1)
2016/03/15 13:44 JST
(ブルームバーグ):日本銀行は15日の金融政策決定会合で、政策方針の現状維持を7対2の賛成多数で決めた。当面、1月末の前回会合で導入を決定したマイナス金利の効果を見極める構えだ。マイナス金利について、証券売買の決済口座に使われるMRF(マネー・リザーブ・ファンド)への適用除外を新たに決めた。
日銀はマネタリーベースが年約80兆円に相当するペースで増えるよう金融市場調節を行う方針や、金融機関の当座預金残高の一部に対するマイナス0.1%の金利を据え置いた。長期国債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も維持した。前回会合でマイナス金利の導入に反対した木内登英、佐藤健裕の両審議委員が引き続きマイナス金利について反対票を投じた。前回反対した石田浩二、白井さゆり委員は賛成に転じた。
MRFは安全性の高い債券を中心として運用される投資信託で、日銀は「証券取引における決済機能」を考慮して、金融機関の受託分をマイナス金利適用から除外した。景気判断については「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」として、1月29日の前回会合時の「輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている」から弱めに修正した。
2%の物価目標を実現する上で鍵となる予想物価上昇率についても「やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる」と指摘。前回までの「このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる」から判断を下方修正した。
野村証券の桑原真樹シニアエコノミストは「今日の注目点は景気判断」とした上で、「久々に下方修正というこことでいいと思う。全体としても若干弱めの判断だ」と指摘。「日銀が景気判断下方修正したということは、将来の追加緩和の可能性が高まったと言えるだろう」としている。
年央までに追加緩和ブルームバーグが8-10日にエコノミスト40人を対象に実施した調査で、追加緩和を予想したのは5人(13%)にとどまっていた。金融市場は落ち着きを取り戻しつつあるものの、世界経済の減速懸念は払しょくされておらず、原油安に円高も加わり、期待インフレも低迷している。2%物価の早期達成はさらに先送りされ、日銀は年央までに追加緩和に踏み切るとの見方が強い。
マイナス金利の導入後、幅広く金利が低下し、さまざまな分野に影響が及んでいる。ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは13日付のリポートで、期待インフレ指標はマイナス金利導入後、消費者、市場参加者、市場関連など「広範囲にわたり急落している」と指摘。家計の景況感も悪化しており、マイナス金利は「金融機関のみならず家計からもネガティブに受け止められている」という。
4月会合で物価見通し下方修正へ日銀は、次回4月27、28日の決定会合で経済・物価情勢の展望(展望リポート)をまとめ、新たな物価見通しを公表する。1月の展望リポートでは2016年度の生鮮食品を除く消費者物価指数の見通し(委員の中央値)が前年比1.4%上昇から0.8%上昇に下方修正され、2%達成時期は「2016年度後半ごろ」から「17年度前半ごろ」に先送りされた。4月展望リポートではさらなる下方修正を迫られるとの見方が強い。
ブルームバーグ調査では、4月の追加緩和予想は11人(28%)、6月が8人(20%)、7月が11人(28%)となっている。
クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは調査への回答で、「為替が円高基調で推移しており、足元で原油価格はやや上昇しているが、消費者物価見通しの再度の下方修正は不可避だ」と指摘。物価目標の達成時期は「先延ばしされる可能性が高い」として、4月会合でマイナス金利を拡大すると予想する。
市場が無理と言うほど大胆にクレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは「市場の不安感が完全に払しょくされたとは言い難く、実務的な観点からも、日銀が実際にマイナス金利拡大に動けるのは6月以降」として、6月会合での追加緩和を想定とていると回答した。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは調査に対し、「マイナス金利の導入効果を精査するためにも日銀はしばらく様子見を続ける」と指摘。エネルギーを除く消費者物価の変調が顕著となるであろう7月の追加緩和を予想する。
JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは調査に対し、「4月の企業による価格改訂がまだはっきりしていないため、4月は基本的なシナリオを維持するのではないか」として、次々回の展望リポートが公表される7月の追加緩和を見込む。手段としては、「これまでの黒田日銀の言葉を信じて、すべての面で緩和強化」を予想。「市場が無理と言えば言うほど、大胆さを示してくるのではないか」としている。
木内氏は引き続きテーパリング提案木内氏は引き続き、「マネタリーベースおよび長期国債保有残高が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節及び資産買い入れを行う」などの議案を提出したが、反対多数で否決。「資産買い入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続する」との議案も提出したが、1対8で否決された。
白井委員は3月末が任期を迎えるため通常の決定会合はこれが最後。後任として、桜井真サクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表(70)を起用する人事案を政府は国会に提示している。桜井氏は積極緩和派の山本幸三衆院議員(自民)や浜田宏一内閣官房参与などと近い。石田委員は6月末に任期を迎える。
黒田東彦総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。決定会合の「主な意見」は24日、「議事要旨」は5月9日に公表される。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡徹 tfujioka1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:谷合謙三 ktaniai@bloomberg.net; Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 上野英治郎
更新日時: 2016/03/15 13:44 JST