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テクノロジーで成功する企業の秘訣はスーパーマリオにあった

by CHANGE-MAKERS2016.03.14

テクノロジーとスタートアップの世界で成功と失敗をわけるカギになるのはなんだと思いますか?魅力的なサービスはもちろん大切ですが、成否をわける一番のカギとなるのは「注目」です。投資家に興味をもってもらい、報道機関の関心を繋ぎとめ、求職者の注意を引き、ユーザーの関心を集める。

注目を集めることができなければどんなに素晴らしいサービスをもっていても、成功することができません。では、注目を集める秘訣はどこにあるのでしょうか?その秘訣は世界中で愛されるスーパーマリオにありました。

シリコン・バレーのベンチャーキャピタリストで、“注目の集め方の達人”として全米で話題の人物、ベン・パーの著書『アテンション』を参考に、「注目」を集めるための秘訣についてご紹介します。

注目とは焚き火である


本書によれば、注目には3種類あるといいます。3つの焚き火という比喩を使って、注目のメカニズムを解説しています。

まず始めに、点火しやすい小さな落ち葉などに火をつけて、次に少し大きな薪に移り、最後は焚き火になる。つまり最初は注目に点火する何かが必要で、そこから徐々に燃やし続けるのです。詳しく言うと次の三段階です。

  • その1 点火 
まずは「即時の注目」を得ることです。これは人間が無意識に反応する本能に基づく注目です。目新しいものに目を向ける、赤い色に反応する、動くものを目で追うなどの反応で、「即時の注目」の記憶は少し時間がたつと忘れられてしまいます。

  • その2 藁火(わらび)
ここでは「短期の注目」の獲得をめざします。「短期の注目」は、特定の出来事や刺激に対する、短い時間の集中です。僕たちがYou Tube動画や本、映画などに数分から数時間集中するようなことが「短期の注目」です。この段階はデリケートで、少し風がふくだけで火が消えてしまうように、何か気を散らすものが一つあるだけで、集中が途切れてしまうこともあります。

  • その3 焚き火
最後の段階では「長期の注目」の獲得をめざします。「長期の注目」は商品やサービス、メッセージなどに対する長期的な興味です。長期の注目を獲得すると実際に好きなミュージシャンのCDを買う、コンサートに行くなどの具体的なアクションを起こします。「長期の注目」は人々の興味を途切れなく、深くつなぎとめておきます。

マリオが注目を集めるのは偶然ではなかった


では、注目の三段階をスーパーマリオにあてはめて見ていきましょう。スーパーマリオの生みの親である宮本茂氏によれば、マリオはそもそも当時のハードウェアの限界から生まれたそうです。わずか256ピクセルでマリオを描かなければならなかったためより人間らしく見えるポイントに絞ってデザインをしました。

はっきりとした印象をあたえる大きな鼻と、その鼻の境界線をしめすヒゲをつけ、髪を細かく描くことができなかったので赤い帽子をかぶせて、さらに目立たたせるために赤いオーバーオールを着せました。

こうして生まれたマリオのユニークな外見によって第一段階の「即時の注目」を集めることに成功しました。

次の「短期の注目」で大切なのは集中と目新しさです。プレイヤーが集中できないゲームは遊ぶ価値がありません。典型的なマリオのゲームは、フラッグのあるゴールまでたどり着くとか、クッパの小分を倒すといった直近のタスクに集中させて、達成するたびにすぐに報酬が与えられます。

ちょうど集中して遊べる数分の長さのステージを与えて、クリアしたらその次という形で、気づけば数時間プレイをしているように出来ています。この絶妙に飽きさせないステージの設計が藁火を大きくして「短期の注目」を獲得します。

そして、飽きさせないプレイのしやすさだけがスーパーマリオへの愛着を生んでいるのではありません。宮本氏は次のように語っています。

「マリオの人気が高まった一つの要素として、われわれが彼をスーパーヒーローにしなかったということがあります。どちらかというとマリオは普通の人です。キャラクターデザインを見てもわかるように、どこにでもいそうな男で、年齢もわからない。かえってそれがみんなの心を掴んだのでしょう」

マリオのゲーム・シリーズが親しみやすいのは、短期の注目を得るための設定が違うだけで、「長期の注目」を得るためのおなじみのキャラクターが変わらないからです。これにより焚き火を燃やし続けることができます。

スーパーマリオの注目の三段階をまとめると、まず、マリオの独特な風貌で「即時の注目」を得ます。次にプレーの楽しさと新しさに加えて、手に入りやすい報酬が作業記憶を刺激して「短期の注目」を得ます。

そして、親しみのあるキャラクターや慣れ親しんだ形が、マリオをわたしたちの長期記憶にとどめて、「長期の注目」になります。

7つのトリガー


では、この注目の三段階を実際に活用するためにはどうすれば良いのでしょうか。

本書では、その動機付けのツールとして7つのトリガーが紹介されています。詳しくは本書を確認していただきたいのですが、以下のような項目が挙げられています。

1. 自動トリガー
感覚的刺激を与えて注目させるやり方。色やシンボル、音などの人間の視覚、聴覚、触覚等に働きかける。人間が備える本能を用いて注意を促す。

2. フレーミング・トリガー
経験、認識、性質、関心、文化的な背景などのあらゆる文脈が判断基準に与える影響を踏まえて、そのフレームを活用する。

3. 破壊トリガー
目新しいだけでなく、相手の予想を裏切り、破壊することで注目を集める手法。破壊トリガーは、「驚き(サプライズ)」「単純さ(シンプリシィティ)」「重要性(シグニフィカンス)」の3つのSを組み合わせることで効果を発揮する。失敗すると無残な結果になるリスキーな方法。

4. 報酬トリガー
報酬には2種類の報酬がある。対象がなにかを達成した時に金品や物品などを授ける「外的報酬」。もう一つは、達成感といった心の満足を与える「内的報酬」。外的報酬は短期の注目を集めるために有効で、内的報酬は長期における忠誠を育む特徴を持つ。報酬は「欲しているものを見える化してあげる」ことが重要。

5. 評判トリガー
人が何を判断する時に評判に左右されるという脳の特性を利用する。その評判の情報源は「専門家」、「権威者」、「大衆」という3種類に分類される。
また長期において注目をあつめるための評判は「一貫性」、「個性」、「時間」によって構成される。

6. ミステリー・トリガー
まだ解明されていない謎を用いる。謎を用いるには次の4要素が必要。「サスペンス」「感情移入」「予期せぬ展開」「クリフハンガー(がけっぷち感)」

7. 承認トリガー
他者や社会から認められたいという欲求を用いる。マズローの「欲求の五段階説」の「承認欲求」。承認とは「認知」、「評価」、「共感」の3つを満たすもので「返礼の注目」と呼ばれる仕組みを使う。返礼の注目とは、注目されたら、注目しかえすというもの。

このように本書には注目の三段階を実現するための、7つのトリガーが詳しく紹介されています。多くの具体的な事例やテクニックも満載です。

情報が飽和している今の時代、「注目」はお金以上に大きな価値を持っています。これらのテクニックを学び、あなたのビジネスを加速させていきましょう。

アテンション――「注目」で人を動かす7つの新戦略
ベン・パー (著), 小林 弘人 (その他)