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福島の沿岸部、震災5年も看護師不足続く-県病院協が厚労省に要望書

医療介護CBニュース 3月8日(火)14時15分配信

 東日本大震災の発生からまもなく5年。厚生労働省は震災後、診療報酬の施設基準などを緩和する特例措置を講じているが、東京電力福島第一原発事故の影響が残る福島県の沿岸部では今もなお、医療スタッフの不足が深刻だ。県病院協会はこのほど、特例措置の延期を求める要望書を同省に提出。同協会によると、若手の看護職員が不足し、夜勤のシフトにも影響が出ているという。【敦賀陽平】

 県によると、県内の病院で働く看護職員の数は1月1日現在、休業中の病院の分を除くと1万4482人。震災後の12年2月1日以降、その数は増加傾向にあり、全体では震災前の水準を上回る。

 しかし、福島第一原発に近い相双地区(相馬・双葉)では、依然として厳しい状況が続く。同地区の病院に勤務する看護職員の数は660人。このうち相馬エリアは619人で、震災前の11年3月1日と比べて137人少ない。また、休業中の6病院のうち5病院は、双葉エリアに集中している。

 県医療人材対策室の担当者は、「看護職員の数は増えている」としながらも、「看護部長の集まりなどでも、夜勤の職員不足の話をよく聞く」と明かす。県病院協会によると、原発事故の影響で、沿岸部では子育て世代の看護職員が離職し、夜勤の負担が50-60歳代の看護職員にも重くのしかかっているという。

 診療報酬の特例措置は、医療法上の許可病床数を超える数の患者を入院させたり、診療報酬上の看護職員の配置基準を満たせなかったりした場合でも、報酬が減額となる現行のルールを適用しないなど、被災地の医療経営の実情に配慮したもので、厚労省によると、昨年7月現在、岩手、宮城、福島の被災3県にある21の医療機関が利用している。

 特例措置を継続するかどうかは、半年ごとに中央社会保険医療協議会(中医協)で審議することになっており、これまで8回、期限が延期されてきた。県病院協会ではその都度、要望書を提出しているが、今回、精神病棟の夜勤要件の緩和を新たに求めた。

 診療報酬上のルールでは、精神病棟の夜勤の看護職員の数は、病棟ごとに「2人以上」と定められているが、病棟が複数ある場合、この基準を緩めるよう要望している。県沿岸部で開業を続ける唯一の精神科病院、「雲雀ヶ丘病院」(南相馬市)の熊倉徹雄院長は「看護師の数が足りない。診療報酬の基準を緩和してほしい」と話す。

 現行の特例措置は今月末に期限を迎える。厚労省は9日の中医協総会で対応を協議するとしている

最終更新:3月8日(火)14時15分

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