文・朱郷慶彦
あなたはがんについてどれほど知っているか?
中咽頭がんのステージⅣAと宣告されてから、今年の年末年始(2015年の年末から翌16年の年始にかけて)は、がんの治療法について必死に勉強した。
そして、私があまりにもがんについて何も知らないという事実に愕然となった。
がん。
なんと迫力のある言葉であろうか。たった一語で、これほど胸に差し迫って来る言葉というのは、なかなかないものだ。
職業が作家である関係上、私は人の胸に訴えかけるテーマというものには常に敏感である。
小説というのは、理屈ではない。理屈で納得してもらっても、読者は心を動かしてくれない。心を動かすためには、人の感情に訴えなくてはならないわけだ。
「あなたは、がんだ」
これほどインパクトのある言葉が他にあるだろうか。
重要な言葉というだけなら、他にもいくらでもあるだろう。
平和。
大切な言葉である。ぜひ人に訴えかけたいテーマでもある。
しかし、
「あなたは平和だ」
そう言われても、インパクトはほとんど感じられない。バカにされたようで、腹が立つくらいだ。
たった一つの譬えで、これほど「がん」という言葉の持つ威力を語りつくしてしまうのが、作家の作家たる所以なのである。私の小説が一向に売れない理由もお分かりであろう。
しかし、ここで問題なのは、私の小説の売れ行きではなく、がんである。(もちろん、こんな文章など今すぐ放り出して、私の小説を買いに走ってくれても構わない)
現在、日本人の三人に一人はがんで死ぬという。二人に一人は、生涯に一度はがんにかかる時代でもある。
はっきり言って、紅白歌合戦を見ている人より、がんにかかる人の方が多いのである。
それなのに、あなたはがんについてどれだけの知識をお持ちであろうか?
・早期発見すれば治るようになってきているらしい
・抗がん剤治療は髪の毛が抜ける
・最近は色々な治療法もあるらしい
この程度知識ではないだろうか。
嘆かわしい。
昨年末の紅白歌合戦のトリと総合司会者の名前を知っているあなたが、がんについてこの程度の知識しかないとは!
ちなみに、あなたは「癌」と「がん」の違いはご存じであろうか。え、同じではないか、ですと?
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