既にアニメの放送が終わってから 2ヶ月が経とうとしており、旬を逃した感がありますが、表題の件について語ってみようと思います。
原作ゲームでは総選挙で 1位を取ったこともあるトップクラスの人気を持つ彼女ですが、アニメ版の彼女はそりゃもう酷い叩かれ様でした。
2ch で叩きが始まり、それを好機とばかりにシンデレラガールズを快く思っていない人に便乗され、さらには大手まとめブログに叩き記事が乗り、そして今まで彼女に対して悪印象を持っていなかった人間までもがまとめブログに影響されて叩き始める...という流れで間違っていない筈です。
そもそもとして、なぜ彼女は視聴者に叩かれたのでしょうか?
彼女を叩いていた大人達に言及する前に、その部分ははっきりさせておく必要があると思います。
・CP 解散の危機、その真っ只中に TP へ ※
アニメ2期の中盤、シンデレラプロジェクト(以下CP)が秋の定例ライブで成果を出さなければ冬ライブを待たずに解散と美城常務に通告されている中、美城常務は CPメンバーである彼女を自分の企画したユニット「トライアドプリムス(以下TP)」へと誘います。
彼女はその誘いを一度は断るのですが、美城常務は「CP と TP の活動を並列して行っても良いから TP へ来い。まずは TPメンバーと一度軽いレッスンをしてから結論を出せ」と言い、彼女は結果的に CP と TP の活動を並列して行うことになります。
しかし、TP も CP と同じく秋の定例ライブに出演予定があり、スケジュールの都合上両方のユニットメンバーとしてライブに出演する事は困難である事が判明します。
『CPメンバーとして出演出来なければその分ライブのクオリティが下がり CP が本当に解散させられてしまうのでは無いか、だが TP メンバーと一度レッスンした時に見えた新しい境地にも魅力を感じており、自分の可能性を試してみたい』といった葛藤が彼女を襲います。
結果的に CP と TP で並列に活動を行う事を決意した彼女に対し、CP のメンバーである本田未央は一時は激昂するものの、「凛の気持ちを確かめたい」との考えから、ソロ活動を開始します。
結果、凛の気持ちが理解できた未央は彼女の TP での活動を応援する様になります。
そして彼女はライブに TPメンバーとして参加する事になり、無事 CP も秋の定例ライブをクリアして冬ライブまでの延命期間を得ることになります。
※島村卯月の反応に関しては卯月自身の物語とも関わる為省きます
と、まあ上記の内容がアニメ 2期の彼女に関する主なストーリーではあるのですが、彼女に対する叩きが目立ち出したのはこのあたりでしょう。
・叩きが始まった主な理由
- 凛が TP で活動を行う事によって下手をすれば CP が解散の憂き目に合う可能性があったにも関わらず、彼女が TP 入りを決意したのを見て、「自分の欲望を優先して仲間を裏切った」と感じた視聴者が居た
- にも関わらず、「CP の活動は大事だと思っている」と発言したことにより、上記の視聴者は「いくらなんでもそれは都合が良すぎるだろう」と感じた
- 凛の TP 入りを切っ掛けに本田未央がソロ活動を開始、卯月のもともと不安定だった精神が悪い方向へと決壊した。そして、その状況に対して彼女が放った「私のせい?」という言葉を「自分で自分を追求することにより、周りから『違うよ』と言って欲しいんだろ?こいつは最低の女だ」と解釈した視聴者が居た
さて、上記が彼女に対する主な叩きの理由・内容となるのですが、それに対して言及する前に 1つだけ重要だと思える要素があるのでまずはそこから始めたいと思います。
まず、このアニメを見ている視聴者は
- アイドルマスターが好きで、展開を追いかけ続けている人物
- 極度の拝金主義である原作ゲームをプレイした事がある、あるいは継続していて少なからず好感を持っている人物
- アイドルマスターというサブカル界隈ではそれなりに有名なネームバリューに興味を持って見始めた人物
のいずれかに該当する可能性が高いと思われますが、アイドルマスターの歴史の長さを知っている事や原作ゲームに好印象を抱ける程度には遊ぶ資金力が有ることを考えると、恐らくは 20~30 代の男性が多いのではないかと推測する事が可能です。
つまり、前述した叩きを行っている人物もそのくらいの年齢層である事が予想されるのですが、私は非常に残念な大人達だな...とそう思ってしまうのです。
と、いう訳でここからが本題です。
彼女を叩く彼らに何を言いたいのか、長い前置きとなってしまいましたが思い切り言わせて頂きます。
・彼女が TP 入りをするのは不義理では無い
まず、彼女は「自分が夢中になれる何か」を探すためにアイドル活動を始めました。
その彼女が TP に誘われ、実際に一緒にレッスンをしてみて、自分の新しい可能性に気づき、本心で「このメンバーで歌ってみたい」とまで思い至ったという事実は彼女が「夢中になれる何か」の 2つ目(1つ目はニュージェネとしての活動) を見つけた事に他なりません。
また、劇中の彼女は 15歳の高校 1年生であり、一言で言うなら「可能性が無限にある成長途中の人間」です。
皆さんも少し思い出して下さい。自分がそのくらいの年齢であった頃、夢中になれるものを見つけたらまずは本気で挑戦してみようとする活力があった筈です。
それがただの遊びであろうが勉強であろうがスポーツであろうがこの年頃であればそれは自然な行為だった筈なのです。
大人であれば状況や物事の関係性により慎むべき場面も有るでしょうが、青春真っ只中な若者には周りを顧みずにやりたいことに挑戦する権利があります。(実際に「〇〇を習いたい!」といった我儘を両親に伝えた時、よほど無茶なことでないかぎり挑戦はさせてくれたのではないでしょうか?)
そう、彼女の決断はなにも不義理なものではなく、「CP も TP もどっちも同じくらい本気で取り組みたい!」となるのは若者であれば当然だと言えるでしょう。
我々が劇中の登場人物と同レベルの精神年齢であり、且つ、CP のメンバーであるのであれば彼女を追求する事もあるでしょう。しかし現実には神の視点で彼女たちの青春を見ている立場であり、少なくとも心情は理解できる立場にあります。
そんな我々が無我夢中で苦しみ、もがき、それでも前に進もうとしている彼女に対し束になって「お前は仲間の事をこれっぽっちも考えられないクズだ」と言うのが果たして正しい大人の姿勢でしょうか?
プロデューサーの立場で物を考えろとまでは言いませんが、大人は若者の背中を押すべきであり、少なくとも無我夢中で努力する彼女に対して暴言を吐くのは間違っていると断言できます。
・彼女のニュージェネメンバーに対する完璧なケアを求めるのは間違い
我々大人は少なくとも彼女よりは人生経験があり、他人とのコミュニケーションを多く経験しています。また、社会活動を行う上で組織の円滑な運営を行う為の知恵も持っており、同僚と多少の意見が異なることがあろうが、冷静な話し合いや妥協点を探る事が出来ます。
が、彼女はまだ 15年しか生きていません。まだまだこれから友人や家族とぶつかって精神的に成長していくべきであり、能力的にも人間関係における立ち回りを我々と同レベルで行う事は出来ないでしょう。
彼女は実際に島村卯月、本田未央、プロデューサーに本気でぶつかって分かり合おうとしていました。少なくともその人間関係からは逃げ出していません。
まず彼女に我々と同レベルのコミュニケーション能力を求めるのをやめませんか?そして仲間とぶつかり合って分かり合う、その姿勢に対して我々大人はどういうアクションをすべきであるかよく考えるべきです。
以上、非常に長くなってしまいましたが、彼女を叩く大人達への提言をさせて頂きました。
この記事を見た方が全てに納得出来なくとも、もう一度だけ彼女に対する姿勢を考えて頂ければ幸いです。