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高校生の政治活動 半数の教育委員会が悩み
1月21日 20時29分

選挙権年齢が18歳以上になるのに伴い、新たに認められた高校生の政治活動にどう対応するかについて、およそ半数の都道府県の教育委員会が悩みや懸念を抱いていることがNHKのアンケート調査で分かりました。専門家は「高校生の自主的な意思を尊重することが重要だ」と指摘しています。
夏の参議院選挙から選挙権年齢が18歳以上になるのに伴い、文部科学省は46年ぶりに方針を見直し、これまで制限または禁止するとしていた高校生の政治活動を学校外では学業に支障のない範囲で認めることにしました。こうした活動や高校生へのいわゆる主権者教育について、NHKは先月下旬から今月にかけて、全国47のすべての都道府県の教育委員会を対象にアンケート調査を行いました。
このなかで、「選挙権年齢の引き下げに関連し、指導上悩んだり懸念したりしていることは何か」と複数回答で尋ねたところ、「18歳以上とそうでない生徒が混在している中での指導」を挙げた教育委員会が53%と最も多くなりました。続いて、「学校外での生徒の『政治活動』への指導や、学業への支障の有無の考え方」が49%、「学校内で禁じる『政治活動』の範囲についての判断」が32%、「政治的中立性を意識しすぎることによる教員の萎縮や授業の硬直化」が32%などとなっています。
新たに認められた高校生の政治活動にどう対応するかについて、およそ半数の教育委員会が悩みや懸念を抱いていることが分かりました。その理由について担当者は、「ケースバイケースでの判断が求められる場合が多く、一律に考えるのが難しい」とか「基準が不明確だ」といった意見を寄せています。

専門家「現場が萎縮しないよう文句は自制すべき」

今回のアンケート結果について、政治教育や高校生の政治活動に詳しい早稲田大学の田中愛治教授は「新しい形が導入される中で高校の先生たちがかなり神経質になっている印象だ。学校外の政治活動は高校生の自主的な意思を尊重して任せるべきだ。授業では安全保障や憲法改正のテーマでも、1つの意見に偏らずに本来どういう考え方があり、今どういう考え方が出ているか議論することはできる。最も大事なことは政党の立場だけではなく、国民の意見をどのようにして国の政策に反映するかその仕組みを学ぶことで、それこそが政治教育だ」と話しています。
そのうえで「教育現場が萎縮する背景には周囲の雑音が大きいこともある。政治家などが『教室で政治の議論をした』『自分の政党以外の政党の話が出た』というだけで、高校や教育委員会に文句を言うのは早計で自制すべきだ。『政治の話は怖いから触らないほうがいい』と萎縮してしまうと本来の趣旨に反してしまう。高校の先生たちがバランスをとって創意工夫できるよう、周囲も温かく見守り教育を育むことが大事だ」と指摘しています。

茨城県「高校生の政治活動に懸念」

茨城県教育委員会はアンケートで高校生の政治活動に悩みや懸念を感じていると回答しました。先月10日、県選挙管理委員会と協力して茨城県内の高校の教員など300人を集めた主権者教育の研修会を開きました。
この研修会の前に、教育委員会が教員たちに主権者教育を進めるうえで疑問に感じることを募ったところ、90件の質問が寄せられ、このうち50件が高校生の政治活動に関する内容だったということです。「認められる政治的活動と認められないものの具体的な判断基準を教えてほしい」とか「生徒が行う政治的活動で公職選挙法に違反・抵触する事例を具体的に教えてほしい」などという質問が寄せられたということです。
これに対して、教育委員会側は「具体的にどのような活動が制限されるのかは、今後、法令違反や罰則等をまとめ、学校に示していく」と答えるのにとどまり、明確な返答ができなかったということです。茨城県教育庁学校教育部高校教育課の武石仁課長補佐は「現時点では現場は具体的な事例が示されず不安になっていると思う。最も懸念しているのは、学校が政治的中立性を気にしすぎて、教育に消極的になってしまうことなので、事例を蓄積して示すなど支援をしていきたい」と話しています。

山口県は独自に手引き作成

山口県教育委員会は先月、教員向けの主権者教育の手引きを独自に作って県内のすべての県立高校に配りました。手引きでは、主権者教育の授業の実践例が紹介されているほか、県内の教員から募った質問とそれに対する答えが記載されていて、例えば、「18歳の生徒から『来週の選挙で誰に投票するつもりか、学校内で表明してもいいか』と聞かれたら、どのようなことに注意して答えればいいのか」という質問には、「直ちに禁止されるわけではないが選挙運動とみなされることも考えられ、学校内での選挙運動や政治活動は制限または禁止する必要がある」と答えが書かれています。
高校の教育現場では活用に向けた検討が始まっていて今月15日、岩国市の岩国工業高校では、公民の担当や学年主任など9人の教員が集まって授業の中で手引きをどう使っていくのか検討会を開きました。この中で、原井進校長が手引きの中に高校生の政治活動についての質問と回答が示されていることを紹介して、今後、判断に迷うことがあったら相談して進めていくよう呼びかけました。また、教員の1人からは「国の副教材や県の資料などは政治的中立性が強調されて『べからず集』のような印象を受け、教員は萎縮してしまう」という意見も出されていました。原井校長は「県が作成した手引きで判断に悩む事例を網羅できているわけではないが、取り組みを進めていく中で具体例を積み重ねていくしかない」と話していました。

松山の高校では模擬選挙

松山市の高校では、21日、生徒たちが模擬選挙を体験しました。愛媛県立松山東高校の授業の中で模擬投票が行われ、1年生27人が出席しました。模擬選挙は市議会議員選挙を想定して行われ生徒たちは一人一人投票をしたあと、それぞれ候補者を選んだ理由などについて話し合って、立場や重視する政策によって多様な考え方があることを学びました。生徒の一人は、「18歳になったときに自覚をもって正しい判断ができるようになりたいと思っています。いい経験になりました」と話していました。
松山東高校の渡邊弘安教諭は、「授業を通じて、生徒たちが選挙や政治のことを身近なものとして感じられたと思う。また、同じ教室に選挙権を持っている生徒と持っていない生徒が混ざることになる点については、扱いが難しいというか、正直、違和感を感じる。政治的な中立性が求められるからといってわれわれが自分の意見を言わないと、選挙の意義が生徒に伝わりにくいと思うし、主権者とは何かということについて、これまで以上に考える必要があると感じます」と話していました。

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