今日も前記事に引き続き、『憲法の条件』から感じた部分を拾ってみます。
著者である木村草太氏は、安保法案は違憲であり、反対である、という主張をされているというイメージでした。確かに個別具体的なことでは、その通りなのですが、より根本的な部分では、氏独自の意見をお持ちでした。単に、安保法案の賛成・反対というのではなく、より高い次元での議論を望んでいるように思われます。
(大澤)
木村さんが、奥平康弘さんとの共著『未完の憲法』の中でおっしゃっていたことを思い出します。憲法は、もちろん第一義的には、個人の権利や義務を定める私法ではなく、公法、つまり個人と国家の関係を規定している法律ですが、それだけだと、とても内向きなものに感じられます。しかし、木村さんは、自分達の国の公法、つまり憲法にはほかに二つの側面がある、と指摘していますね。その一つが日本人が共有する歴史物語としての性質、そして残りの一つが、諸外国に向けた外交宣言としての性質です。憲法は、日本が、国際秩序の中でどう行動するつもりなのか、国際秩序にどう貢献するつもりなのかと示す宣言です。(中略)
(木村)
そのとおりです。今回の一件(管理者注:安保法案のことを指す)に関して、どうしてこの政権は自国の利益ではなく、どうすれば世界がよくなるかという見方、つまり国際的な公共価値という視点がもてないのだろうと残念に思います。(p163)
(木村)
いまのお話は、集団的自衛権賛成派と反対派の両方にいえることだと思います。集団的自衛権に関して、メディアの中でいちばん優勢だったのは、結局、アメリカに見捨てられていいのかという賛成派による議論と、戦争に巻き込まれていいのかという反対派による議論でした。
賛成派は、アメリカに見捨てられたら日本はやっていけないから、アメリカの五十一番目の州として認めてもらうために、集団的自衛権をもとうという。それに対して反対派は、集団的自衛権を認めたら戦争に巻き込まれるからだめだという。激しく対立しているようでいて、いずれの議論も利己的である点は同じです。どちらも国際公共価値には目を向けていないわけです。(p171)
国際公共価値という視点には新鮮な驚きを感じた。ともすれば「賛成か反対か」だけに目を奪われていた自分が情けない。いつまでもアメリカに、おんぶにだっこされているわけにもいかない。アメリカもそのつもりはないだろう。そうであるならば、日本のこれからを本当に考えていかなくてはならないと思う。賛成・反対の議論から、国際公共価値を含めた議論へレベルアップする必要を感じる。
とは言っても何をどうすればいいのか、皆目見当がつかない。地道に歩んでいくことしか思いつかない。ああ❗ 情けない(>_<)
憲法の条件―戦後70年から考える (NHK出版新書 452)
- 作者: 大澤真幸,木村草太
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/01/08
- メディア: 新書
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