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「ゲス」をいじめないで

■ゲスの極み乙女の素晴らしさ

最近ベッキー絡みのスキャンダルで、「ゲスの極み乙女」という一風変わったバンドを知った。僕は若い時から新しいモノ好きのロックファンなので(最近ではでデビッド・ボウイ追悼記事をBLOGOSに書いたほど壁を壊すために変われ~デビッド・ボウイの規範)、ベッキーとか不倫とかきっかけは何でもいいのでとりあえずは聞くようにしている。

で、「ゲス極」(ファンはこう略すらしい)はかなりかっこいい。音的にはメロディアスなピクシーズみたいな感じだが(ピクシーズ自体超マニアックなアメリカのバンドなのでスルーして下さい)、何よりも、ベッキーの不倫相手らしい川谷絵音というひとが創る作品世界(詞と曲)と、昔のフリッパーズギター小山田圭吾調の甘い絵音氏の声と、バックの3人(ドラムス・ベース・キーボード)が塊のように織りなすサウンド(ツェッペリンがドアーズを演奏したような感じ)がまさに2016年しており(ポップ音楽50年の歴史の最先端にいるということ)、わくわくする。

オルタナロックと一言でくくるのももったいないが、聞き慣れていない人には「なんじゃこれ?」の世界だろう。が、偏見なく聞いてみると、この音の塊を好きになるか嫌いになるかはさておき、ここには「何か」があることはわかるだろう。

その「何か」は簡単に「魂」と言い換えてもいいと思う。宗教的な意味ではなく、「こころ」や「たましい」や「生きざま」そのものがここには注入されている。

つまりはこれは、典型的「アート」だということだ。

現代らしく、バンド名やジャッケト等は「大人」の手が入っているかもしれないが、アートスピリットが偶然にも商業化ベースに乗ることができている。。

が、そもそものコアである「音そのもの」は、現代日本社会がそこに織り込まれてしまった、グローバリゼーションや監視社会や階層社会が構築している居心地の悪さに対して、現代の若者らしく、まさにその社会のど真ん中で生活をせざるをえない暗い感触を題材として、作品としてほぼ完成化させている。

不倫の事実はどうでもいいが、ベッキーが好きになるのも十分うなづける。僕は好きになった。

■いじめかアートか狂気か

そんなゲス極の絵音氏だが、今日Yahoo!ニュースを見ていると、正妻やベッキー以外にも彼女はいるらしく、どんどんスキャンダルネタが噴出している。

絵音氏が実際どういう人物かはさておき、これだけの作品をつくる人は、そりゃ当然「ゲス」に決まっている。ゲスだからこそ、社会規範から少しズレそこに居心地の悪さを抱え同時にそんな自分も責めながらもそうした感触全体を言葉と音にして作品にしていく。それを、なんの因果か知らないが「つながってしまった」他のバンドメンバーたたちがさらにかたちにしていく。

ロックとは、あるいはアートとは、もっと哲学的に言うと「表象」とはそんなものだ。何かが表現されるとき、世間の常識に必ず触れてしまう。

その表現が、心底「生きづらい」ところからひねり出される場合、その生きづらさを生み出す社会と人間関係と社会内マジョリティの規範に必ず触れる。そこで生じるコンフリクトこそが「作品」のコアになる。

あるいは作品化できない場合は、その摩擦が「いじめ」という歪んだコミュニケーションとして現象化される場合もある。あるいはコミュニケーションではなく内在化される場合、「狂気」として現れる場合もある。作品化できればその狂気は狂気ではなく「アート」となる。

■ボーダーな人々が世界を変える

そういえば僕の事務所(officeドーナツトーク)の「元ひきこもり」スタッフ(41才男性)が、この前、1日の仕事の振り返りでめちゃくちゃ怒っていて、詳しく聞いていくと、どうやら「いじめ」までとはいかないにしろ、ある種の「空気的からかい」(現実に暴力等はないが、わかる人にはわかる隠語も使用した距離のとり方)を目撃したらしく、その場のあり方そのものがつらくなったのだそうだ。

だから僕に思わずそれを訴えた。幸いにそれ以上は拡大しなかったが、この場合などは、被害当事者は普通の若者であり、アーティストでもなんでもない。だから作品化して訴えることもできず人によってはいじめられるしひきこもる。

そんな人のために、僕のような子ども若者支援者がいる。

対して、絵音氏には幸いにも才能がある。その才能がある人に対しては、社会はスキャンダルとかなんとか、規範からの逸脱に対して攻める。たとえば、これまでたくさんのアーティストがたくさんの作品を生み出しながら逸脱行動を重ねた。太宰治にゴッホにヘンリー・ミラーにジョン・レノンにジム・モリソンにジャニス・ジョップリンにイアン・カーティスと、書き出したらきりがない。

それらは、「専門家」からみると、DV野郎なボーダーラインな人格障害かもしれない。彼ら彼女らは「専門家」からみると、常に社会と摩擦を起こす人々で、彼ら彼女らの家族からすると、いつも自分たちに迷惑をかける超問題人だ。

が、そんな彼らが「世界を変える」。

スティーブ・ジョブズ、あるいはアップルの歴史的CMの言葉で言うと、「シンク・ディファレント」できる人々は、何かが逸脱している。

その逸脱は周辺の人々に迷惑をかけるが、大きな時間軸では世界の人々を救っている。

■社会が「狭い」

ポイントは、「ゲス」的あり方が一方的に封じ込められる社会に我々の社会がなりそうだということだ。

あるいは、「シンク・ディファレント」の意味が喪失手前に差し掛かっているかもしれない、ということだ。

ゲスであり狂気であり境界でありディファレントな人々こそが世界を変える。そうした人々は、超保守的世界(たとえば日本の学校)ではいじめられるかもしれないが、超保守的世界以外では人々を惹きつける。よくわからないが絵音氏にベッキーも惹きつけられたし、僕もメロメロだ。

いまは、そのような「ディファレント」を許す領域が極端に狭くなっている。これが階層社会ということなのか超監視社会ということなのか戦争前夜ということなのか新しいファシズムということなのかはわからない(たぶん全部)。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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