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イオン、V字回復にも厳しい声が上がる理由

東洋経済オンライン 1月15日(金)6時5分配信

 国内流通首位・イオンの業績回復トレンドが鮮明になってきた。1月8日発表した2015年度第3四半期(2015年3~11月期)の連結決算は、売上高が前期比18.9%増の6兆0360億円と過去最高、営業利益は同63.8%増の808億円と4期ぶりの増益となった。

【グラフ】既存店売上高の推移はこうなっている

 買収効果もあり食品スーパー(SM)やドラッグストア事業が大きく伸びたほか、金融、不動産事業も堅調だった。一方、主力の総合スーパー(GMS)事業は営業赤字が膨らみ、不振からの脱出へ模索が続いている。

 若生信弥・執行役財務担当は「もっとも貢献したのは、上期同様に食品スーパー・ディスカウント事業。(買収などで2015年3月に新しく誕生した)ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの新規連結効果に加え、(GMSから食品スーパーへ転換している)ダイエーやマックスバリュなど食品スーパー各社の増益が大きい」と話した。

■ 子会社のダイエーは黒字化に手ごたえ

 イオンが2015年1月に完全子会社化したダイエーは、事業領域を「食」に集中し、生鮮・デリカを強化したことが奏功。食品売り場が堅調に推移し始めており、「早期の黒字化を目指す」(若生氏)と手ごたえを感じているという。こうした効果で、SM・DS事業の売上高は26.9%増の229億円、営業利益は74億円(前期は143億円の赤字)と伸長した。

 ただ、最大の課題となっているGMS事業は売上高が4.4%増の2兆0592億円と1ケタ台の伸びにとどまり、営業赤字額は258億円と、前期152億円の赤字から膨らんだ。若生氏は「消費増税駆け込みの反動減に加え、11月の暖冬で衣料・住居関連の不振から販促費の追加投入があった。活性化投資の集中期でもあり、利益を押し下げた」と分析する。

 一方、既存店売上高は確実に改善していることを強調。積極的な改装など活性化による効果もあり、7~10月は4カ月連続で前年を上回り、11月の暖冬影響を除けば、12月以降も回復傾向にあるという。

 イオンがGMS改革で行っているのは“脱総合化”だ。地域の客層や競合状況に応じて店舗の改装を実施しており、「イオンスタイルストア」という店舗名で次々にオープンしている。たとえば、2015年12月にオープンした「イオンスタイル御嶽山駅前」(東京都大田区)は、所得水準が比較的高い世帯が多く住む地域特性を踏まえ、これまでの画一的な品ぞろえを改めて地域のニーズが高い高級食材やワインを多くそろえるなど工夫。衣料品売り場を大きく減らす一方、食品売り場中心の店舗に変えた。

 全国に約350店を展開する、イオン傘下のイオンリテールではこうした業態転換を2014年から進めている。これまで本社が握っていた仕入れ権限を各店舗に委譲し、本部主導の画一的な品ぞろえではなく、地域密着による店舗づくりで地元スーパーなどに対抗していく考えだ。

 GMS改革を担当するイオンリテールの岡崎双一社長は「店舗改装はかなり精度が高くなっている。来期の改装計画は加速する形でやっていく」と鼻息が荒い。改装店舗の売上高は改装前より1割程度高くなっているケースもあり、客からの評価も上々だ。

 ただ、市場関係者の反応は厳しい。多くのアナリスト予想に届かず、GMSを主因に想定を下回る決算となった。決算発表後の翌週明けの株価は大幅続落した。大手国内証券アナリストは「GMS改革の方向性は正しいが、道半ばだ。GMS事業は赤字が膨らんでおり、固定費もまだ高い」と指摘する。そのうえで、「西友は米ウォルマート傘下になったことで、一気にリストラをやって今では大きく改善した。イオンもそれだけの規模感とスピードが必要だ」と話す。

 イオンは3~11月期の連結決算が大きく改善しているが、グループ再編に伴う新規連結子会社の寄与分が200億円以上と大きかったほか、前期の営業利益が低水準だった。ハードルが低くなっていたため、大幅な増収増益に見えている面も否めない。

■ 苦戦のGMSは、閉店ではなく改装で対応

 イオンスタイルへの業態転換もこれからが本番で真価を問われる。改装後の店舗は、店員を多く配置し、これまでのセルフサービスではなく、接客を強化しながら購買意欲を高めていくスタイルだ。その中で現在は人材不足が露呈しており、岡崎氏も「本当はもっと商品を並べたいが、人材不足や採用難がある。新店舗では昔のセルフとは違うやり方をしようとしているので、かなりの人手がかかる」と漏らす。

 GMSをめぐっては、大幅赤字が続くセブン&アイグループのイトーヨーカ堂が40店の大量閉鎖を2015年秋に発表。2016年に入って戸井和久社長が突如辞任し、前任の亀井淳顧問が社長に返り咲く異例の人事異動も出た。2016年9月にファミリーマートとの経営統合を予定する、愛知県地盤のユニーグループ・ホールディングスも数十店規模のGMS閉鎖を検討するなど、動きが激しい。

 他方、イオンは現在、GMSの閉鎖を検討していない。岡崎氏は「私どものGMS改革は、閉店よりも大変なことをやっている。第3四半期は芳しくなかったが、今戻っているので改革は間違っていないと思っている」と力を込める。はたしてイオンはGMSで真の復活を遂げることができるか。注目が集まっている。

冨岡 耕

最終更新:1月15日(金)11時15分

東洋経済オンライン

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