生物の遺伝情報である細胞のDNA配列を自由自在に改変し、病気を治療したり優れた品種を生み出すことができる−。夢物語のような「ゲノム編集」と呼ばれる技術がここ数年、科学研究や製薬の現場で急速に広がっている。従来の遺伝子組み換え技術より格段に精度が高く、生命科学に革命を起こしつつあり、その開発者はノーベル賞も確実といわれる。しかし、生まれてくる子供の能力や容姿をデザインする行為、いわば“人間の改造”につながりかねないことから倫理面でも議論が沸騰。実際に中国ではヒトの受精卵でDNAを改変したとの報告が出ている。中国がついに禁断の領域に踏み切ったことに、科学者たちが国際会議を開いて対応を協議したほか、米ホワイトハウスが懸念を表明するなど、全世界に波紋が広がっている。(前田武)
「現時点では、ヒトの生殖細胞にゲノム編集を加えて病気の予防や治療に使うことは無責任だ」
12月初旬、米ワシントンで開かれた科学者らの国際会議が現状に警鐘を鳴らす声明をまとめた−とのニュースは、関係者の大きな注目を集めた。ゲノム編集をめぐる今回の会議には、生命科学の研究者だけでなく法律や倫理などの専門家も集まった。
議長を務めたカリフォルニア工科大のデービッド・ボルティモア教授は、ゲノム編集について「難しい問題だが、どのように扱っていくか、よい方向性が出せた」とコメント。会議に参加した北海道大の石井哲也教授は「毛の色や身長といった見た目を『改造』する手段としては受け入れられない」と訴えた。
会議が開かれたきっかけは、中国の研究チームが昨年4月に発表した論文だ。血液の病気の原因となる遺伝子を取り除くため、ゲノム編集によってヒト胚(はい)のDNAを改変したとの報告で、結果的には臨床に応用するにはまだ精度が低いとの内容だった。倫理面の問題を回避するため、もともと遺伝子の異常で子供として生まれてくることがない受精卵を使ったとされるが、世界中の科学者に大きな衝撃をもって受け止められた。
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