民主党の経済政策は、率直に言ってちょっと不思議です。例えば先ごろ行われた民主党の代表選挙などを見ていると、よく分かります。
代表に決まった岡田氏は消費増税すべきという持論を持っているようです。そして、対抗馬だった細野氏は円高を是としていました。ついでに言うと枝野幹事長は、金利を上げて景気回復というようなことを言っています。
でも、このような政策を掲げるのは、かなりおかしなことなのです。と言うのも、本来左派政党というのは金融緩和を促進する立場をとるケースが多いからです。むしろ、金融の引き締めを是とするような発言ばかりなんですよね。
金融緩和は雇用につながる
なぜ左派政党が金融緩和に積極的なのでしょうか。
金融緩和というのは、実は、雇用政策でもあるからです。一般的に金融緩和が行われると、失業率は減り求人倍率は増えると考えられています。
例えばアメリカでは、連銀のトップであるFRB の議長が、雇用について追及される姿をよく目にします。そのくらい、金融政策と雇用は関連が深いと思われているわけです。ちなみに連銀のトップという事は、日本では日銀の総裁に当たる人ですよね。
でも日本の左派政党は、金融緩和ではなく、軒並み財政再建にご執心なんですよね。財政再建というのは、金融を引き締めるということです。「雇用が一番」と言いながら、雇用に効果がある金融緩和には反対するんですよね。もう、意味が分かりません。
この点について非常に疑問を持っていましたが、松尾匡という立命館大教授の見解を知り、少しなぞが解けたようにも思います。ちなみにこの方自身はマルクス経済学者を自称しているようですから、かなりリベラルよりの人なのでしょうね。
支持者に媚を売るための金融緩和反対?
朝日新聞のインタビュー記事から、ちょっと引用してみましょう。
「なぜ左派が金融緩和に反対するのか。言ってしまえば、左派は雇用問題が一番深刻な若い世代の支持がだいぶ細っていて、古参の支持者に依存する現実がある。退職して年金生活者になっている支持者は金融緩和による物価上昇を恐れる気持ちが強い。それが一つの理由ではないか」1
要するに、支持者に媚を売るために、金融緩和に反対する姿勢を見せているということです。もっと厳しく言うと、保身のために政策をゆがめていると言い換えても良いでしょう。
確かに金融緩和は、既得権を破壊する部分も大きそうです。例えば、金融緩和を行いインフレになれば、実質的な年金の受給額が小さくなる可能性もあります。そうなると、既得権を持っている年齢の高い層には不利ですよね。
今までの民主党のスタンスは、単なる知識不足からの行動だと思っていました。民主党幹部の話を聞いていると、経済に関しては、かなり頓珍漢な話をしていましたから。
でも、そういう事ばかりでも無いのかもしれません。党の支持者の利益を守るために行動しているとも言えるわけです。
ちなみにこのインタビューは、全体的に納得できることが書かれています。興味があったら、チェックしてみると良いでしょう。
既得権に配慮する人たちをリベラルと呼ぶのか?
でも、この動きって、本来のリベラルと言う意味からはかけ離れていますよね。
デジタル大辞泉によると、リベラルという言葉は、「政治的に穏健な革新をめざす立場をとるさま」という説明があります。これって、現在左派と呼ばれている人たちの態度とまるで受け入れないものということになってしまいます。
リベラルを装うのは、かつてリベラル的なものを是としてきた人たちを欺くための擬態という事でしょうか?だとしたら、そうとう打算的な態度と言わざるを得ないでしょう。
あともう一ついえるのが、このまま行くと、日本ではリベラルな政党はなくなるのではないかという可能性です。現在の高齢者に支えられる形でリベラル政党が存在するなら、10年後とか20年後には支える人がかなり減っているはずですよね。
なんにしても、非常に面白い指摘だと思いました。
民主党は経済政策のブレーンを変えた方がいいんじゃないか
今回紹介したような意見を持っている人を見ると、民主党は経済政策のブレーンを変えた方がいいんじゃないかと感じます。今の民主党の幹部の話を聞いていると、この人たちに政権は任せられないという思いしかしませんから。
今の民主党は、自民党の政策ありきで、それに反対するためにはどうすればいいかという視点でしか行動していないように見えるんですよね。かつての社会党を見ているようです。
このままだと、何も期待できそうにありません。
- 左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授
朝日新聞デジタル 2015年2月16日 [↩]
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