毎日新聞は1月5日付朝刊社会面で「『心の性の名前』でOK 北九州市立大導入」と見出しをつけた記事を掲載した。その中で、文部科学省が小中高における性同一性障害への対応について昨年4月に出した通知が「通称名使用を想定していない」とした文科省側のコメントは誤りで、通称名使用も想定し、適切な対応を求めているとして、6日付朝刊で訂正した。文科省の担当者が「取材に対し誤った回答をした」という。ニュースサイトの記事は、既に上書き修正されている。
記事で言及されていたのは、文科省・初等中等教育局児童生徒課長が昨年4月30日に各教育委員会などに出した「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」と題する通達。性同一性障害の生徒に対し、個別の事案に応じ、生徒等の心情に配慮した対応を行うことを要請。具体例として、「呼称の工夫」として「校内文書(通知表を含む。)を児童生徒が希望する呼称で記す」「自認する性別として名簿上扱う」ことを挙げている。日本報道検証機構が同課の担当者に確認したところ、通達の上では「児童生徒が希望する呼称」としか言っていないが、この「呼称」は性別に応じた「さん、君」という呼び方だけでなく、氏名(通称名)も想定した解釈をしているという。この点について毎日新聞の当初取材に誤って回答したことを認めた。
記事は、北九州市立大がの学生の要望を受け、通称名使用を認める制度を始めたことを、実際に制度を利用している学生や関係する教授などを取材して報じたもの。
「心の性で名前」OK 北九州市立大が導入 学生証、卒業証書に記載
北九州市立大は性同一性障害(GID)の学生の要望を受け、「心の性」に沿った通称名使用を認める制度を始めた。学籍簿や学生証、卒業証書などでも認められ、全国的にも珍しいという。通称名使用自体は他にも導入する大学が出てきているが、まだ緒についたばかりだ。
…(略)…
北九州市立大の河嶋静代教授(社会福祉学)が全国の500大学に実施したアンケートでは、回答した241校中、通称名使用を学生証で認めているのは12校、卒業証書では2校だけだった。
小中高に関しても文科省は15年4月に出したGID対応に関する通知で、望む性別に応じて「さん、君」などの呼称に配慮するよう求めたが、通称名使用については「通知では想定しており、適切な対応を求めている」(児童生徒課)という。毎日新聞2016年1月5日付朝刊28面(第2社会面) ※ニュースサイトにも同じ記事あり。
毎日新聞2016年1月6日付朝刊26面(第2社会面)
性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について (文部科学省 2015/4/30) ※対応例を記した表のみ抜粋。
文部科学省
- (初稿:2016年1月14日 11:15)