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 たくさんの人に高齢者の夢や可能性を感じてもらいたい――。そんな思いから壮大な計画が埼玉県で動き出した。「高齢者1万人の演劇」。指揮をとるのは、世界的な演出家・蜷川幸雄さん(80)。高齢者演劇集団「さいたまゴールド・シアター」を率いてきた経験を生かした挑戦だ。4月から65歳以上の出演者を公募し、12月に上演する。

 同シアターは2006年、蜷川さんが芸術監督を務める彩の国さいたま芸術劇場を拠点に、オーディションに合格した平均年齢66・5歳の48人で結成。今年10周年を迎える。「プロを目指す」をかけ声に、厳しい稽古と上演を重ね、演劇表現を磨いてきた。一昨年はパリや香港でも公演し、高い評価を得た。

 「1万人」企画には65歳以上ならだれでも応募できる。書類審査を経て基礎訓練や稽古を始め、12月の本番に臨む。東京五輪・パラリンピックがある20年の公演も視野に入れる。

 脚本を書く劇作・演出家のノゾエ征爾さん(40)は「高齢者のとてつもないエネルギーが作品の根っこ。出演者を家族も見たことのないような良い表情にさせてみたいですね」と話す。

 蜷川さんは「演劇集団を『ゴールド』と名付けたのは『高齢者』や『シニア』という言い方が嫌だったから。僕のような年齢の人が1万人集まるかと思うと恐ろしくなりますが、みんなが少しでも輝けるよう頑張ります」と言う。

 問い合わせは同劇場(048・858・5505)。(増田愛子)